アイボやPS4、デジカメのノウハウがクルマになった!? SONYが電気自動車を売る日【CASE】

ソニー VISION-S CES2020

ソニーのノウハウ炸裂! カタチになったのはGRスープラのおかげ?

「VISION-S」の誕生に当たっては、aibo(アイボ)などを手掛けたロボティクスビジネス担当役員が深く関わっていた。ソニーはビデオカメラ等で培ったイメージセンサーで世界を席巻しており、その範囲はスマートフォンから自動車用デバイスにも及ぶ。ただ、そのメリットをわかりやすく表現する方法をソニー自身は持ち合わせていなかった。

わずか2年で走れるまでに! ソニーとマグナの二人三脚で完成

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そんなある日、ソニーの担当役員がトヨタのGRスープラも生産する大手サプライヤー「マグナ・インターナショナル(以下:マグナ)」の生産現場を目にする。それが2018年初頭のこと。そこで担当役員は「EVならソニーも新たなモビリティとしては関われるかもしれない」と考えた。VISION-Sの開発はそこからスタートしたのだという。

ちなみにVISION-Sの生産する際に参考にしたマグナ・インターナショナルが生産しているGR スープラはこんなクルマだ。

ソニー VISION-S CES2020

開発にあたっては全体のデザインをソニーが行い、それに基づいてマグナが完成車までを担当する形を採った。マグナにはすでに多くのサプライヤーをまとめ上げるノウハウがあり、わずか2年で「VISION-S」が実走行できるレベルにこぎ着けたのも、そんなマグナの協力があってこそ実現できたのだ。

スマートでかっこいいデザインはソニーのこだわり

ソニー VISION-S CES2020

フォルムやキャビンに与えられたデザインテーマは「オーバル(楕円)」。緩やかにラウンドしたボディは極めて美しい。ボディ周囲にはドアロックを操作するたびに光を走らせるLEDが組み込まれ、そのボディラインを敢えて強調する。ドアの取っ手もロックのON/OFFに連動して自動開閉する仕様となっていて、担当者によればこれらはソニーのデザイナーがこだわり抜いて実現したものだという。

操作も直感的で◎ ! スピーカーにもソニーらしさが

ソニー VISION-S CES2020

そのデザインへのこだわりは車内にも広がっていた。運転席に座るとその前に広がるダッシュボードには3枚の液晶パネルを一体化した超ワイドなパノラマスクリーンが展開される。左右にはサイドミラー表示部分をラウンドさせて包み込むようなデザインを演出。

ソニー VISION-S CES2020

インターフェイスは可能な限りシンプルにし、指先ひとつで表示を自在に切り替えられるフリック操作も採用した。ソニー自慢の音響技術「360 REALITY AUDIO」は、没入感あふれるサウンドを体感できるものともなっていた。

33個のセンサーでライダーなどの新技術も!

ソニー VISION-S CES2020

そして「VISION-S」が果たすべき本来の目的であるセンサーは計33個を搭載する。その内訳はカメラ×13個、レーダー×17個、ソリッドステート型LiDAR×3個。ここで見逃せないのがソリッドステート型LiDARで、これはこの分野にソニーが新規参入したことを示す。ソニーが得意としていたカメラは形状認識や遠方の視認性では高い優位性を持つ一方で、霧や暗闇などで視界不良には弱い。そこで非金属の物体も検出できるLiDARを組み合わせた"センサーフュージョン"の道をソニーは新たに踏み出したのだ。そのためにもよりわかりやすい形で提案できるVISION-Sの開発は欠かせなかったというわけだ。

5Gやレベル4など機能もガチ未来

これらセンサーを組み合わせた自動運転レベルは"運転支援"の「レベル2」。将来的には緊急時も自動車側に操作を委ねる「レベル4」も視野に設計しているとのことだ。さらにVISION-Sは次世代通信網である5Gにも対応させる予定で、ソニーのスマホメーカーとしてのノウハウも活かしていく。

本気で市販化の可能性が見えてきた

ソニー VISION-S CES2020

となれば期待が高まるのが「VISION-S」の販売だ。運転席に座った印象は細部までかなり造り込まれており、このまま市販されても不思議ではないレベルにあった。CES会場での取材に担当者は「あくまでデモ用での開発であって市販予定はない」と答えた。しかし、その後の報道では「(市販については)何とも言えない」との表現に変化してきている。「想像以上の反響だった」(担当者)だけに、市販化への道筋を探っているのかも知れない。

果たしてソニー製EVの実現はあるのか、今後もソニーの動向から目が離せない。

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【筆者・撮影:会田 肇/編集担当:木村 剛大】

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