青木拓磨ら3名の障害者ドライバーによるル・マン挑戦、4年ぶり復活“ガレージ56”で実現へ

 2月28日、WEC世界耐久選手権の2019/2020年シーズン最終戦として開催される第88回ル・マン24時間レースのエントリーリストが公開され、元WGPライダーの青木拓磨が所属するアソシエーションSRT41が、同レースの特別枠“ガレージ56”から出場することが正式にアナウンスされた。

 SRT41は両手両足を失いながらも2016年にル・マン24時間に初参戦し、改造されたモーガン・ニッサンで見事完走を果たしたフランスの実業家フレデリック・ソーセが設立したレーシングチームだ。

 1998年のWGP(現MotoGP)開幕前テストで転倒し下半身不随となった青木は2018年に同チームに加入。以来、車椅子レーサーとして同様の障害をもつドライバーとともにフランスの耐久レースVdeV(ベドゥベ)選手権や、ル・マンの登竜門ともいえるロード・トゥ・ル・マンなどに参戦してきた。

 そんな青木は、かねてより2020年のル・マンに挑戦することを公言してきたが、今回行われたACOフランス西部自動車クラブの公式発表によってそれが確定した形となっている。

 チームとしてだけでなく、環境技術等の新技術を採用した車両に与えられる特別枠“ガレージ56”としても4年ぶりのカムバックを果たすことになるSRT41は、専用改造が行われたオレカ07・ギブソンとELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズなどで活躍するLMP2チーム、グラフの技術支援を伴ってル・マンのグリッドに復帰する予定だ。

 この84号車オレカに乗り込むのは青木と、2004年のバイク事故で腰から下が麻痺状態となったナイジェル・ベイリー、左手を切断しているスヌーシ・ベン・ムッサの3名。同トリオは前述のVdeVシリーズにリジェJS P3・ニッサンで出場したほか、同じクルマで2019年のアルティメットカップ・シリーズにも参戦している。

 ル・マンへの復帰参戦が確定したSRT41は2016年に初めて行った障害をもつドライバーのル・マン挑戦を終えた後、今度は障害者ドライバーのみのラインアップでフランスの耐久レースに出場する準備を進めてきた。

 そのプログラムの初期段階において、ソーセのチームは『Un Volant Pour Tous(すべての人のためのステアリング)』の取り組みの一貫として青木、バイリー、ベン・ムッサをル・マンへ派遣する計画を立てており、その努力の末にたどり着いた2020年6月のル・マンで、24時間レースを完走する2番目のガレージ56チームになろうとしている。

フォーミュラEのサポートレースであるジャガーIペースeトロフィで、日本人ならびに障害者ドライバー初の3位表彰台を獲得した青木拓磨

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