がんの治療は長期間に及ぶ場合も。「がん保険」で備えるには何を基準で選ぶ?

2019年12月にフリーアナウンサーの笠井信輔さんが、「悪性リンパ腫」であることを告白されました。2019年の9月にフリーになられたばかりでのことで、青天の霹靂を超える衝撃と語っておられました。治療は抗がん剤治療を4ヵ月間、行うそうです。

国立がん研究センターのサイトによると、「悪性リンパ腫」は、10万人に10人程度発生するそうです。日本の成人に頻度の高い血液の腫瘍です。これは血液中のリンパ球ががん化するという病気です。

「悪性リンパ腫」の治療法は、化学療法(抗がん剤)と放射線療法が一般的です。血液の病気なので、手術をすることはできません。退院にした後は、通院での治療になるそうです。

一般的な抗がん剤の治療というのは、投与の期間と休む期間の組み合わせでスケジュールを決めます。ですので、治療期間は長期になることが多く、その間、仕事が制限されたり、休業しないといけないということも出てきます。それが、がんという病気なのです。

今回は、「がん治療」と「がん保険」について考えてみたいと思います。


がんは、不治の病ではなく一生付き合う病気

昔のがんの治療法は、入院・手術というのが一般的でした。しかし、医学の進歩などにより、がんでの入院日数はどんどん短くなっています。1998年には平均入院日数が約46日だったのが、2014年には、平均入院日数が約20日になっています(患者調査の概況)。それに替わって通院治療が増えています。

以前は、がんは不治の病で「死」を覚悟する病気のイメージがありました。しかし今では、5年生存率も伸びてきています。がんは不治の病ではなくなり、一生付き合う病気に変わってきています。

がん保険も20年以上前の保険は、入院や手術が中心の保障でしたが、今は一時金や治療給付金が中心に変わっています。がんは治る病気になりました。とはいえ2人に1人はがんにかかると言われている病気でもあります。

そこで「がん保険」は、本当に必要なのか? 必要だとしたら何を基準に選べばよいかを解説しようと思います。その前にがん治療におけるお金について考えていきましょう。

がん保険とは治療費のためではなく、収入減を補塡する役目

がんという病気について、勘違いをしている人が多いです。

まず、がんは「死にいたる病気」ではなくなってきています。部位によって生存率は大きく違いますが、全がんの5年相対生存率は66.1%です(国立がん研究センター、2019年)。つまり、がんは、長く付き合う病気なのです。それにがんの治療には、お金がかかると思っている人がいます。これも間違いです。

がんは、他の病気と同じで治療費の負担は大きくありません。がんの治療費も健康保健がありますから自己負担は3割ですし、高額療養費があるので、一般的な収入の人は、どんなに高額な治療をしても月額9万円前後。ですので、あまり治療費を心配する必要はありません。

だったら、がん保険は必要ないのでは?ということになりますね。

しかし、私はがん保険は必要性が高い保険だと考えています。なぜなら、がん保険は、治療費のためではなく、がん治療によって収入減になった生活費の補塡に役立つからです。

がんに罹患すると収入減に

がんの標準的な治療法は、主に手術・抗がん剤・放射線治療の3つです。抗がん剤治療の場合は、かなり副作用を抑えることができるようになりましたが、辛い副作用があります。たとえば、月曜日に抗がん剤治療を受けた場合、翌々日などに副作用がでることが多いのです。嘔吐・発熱・倦怠感などのさまざまな副作用が出ると仕事に大きな影響が出ます。

そうすると罹患以前と同じように働くというのは難しくなります。残業ができなくなり時短で働いたり、場合によっては、休職や退職を余儀なくされることもあります。つまり収入が大きく減ります。

実際、ライフネット生命の調査によると罹患前と罹患後では収入が約2割、減少したというデータがあります。もし住宅ローンや教育費をかかえている家庭なら、この収入減というのは、生活に大きな影響を与えます。

一時金と治療給付金を中心にがん保険を選ぶ

がん保険において収入減に対応できる保障は、一時金と抗がん剤・放射線治療給付金などです。がん診断一時金は、だいたい100万円が多いです。この診断一時金の100万円は、治療費にも生活費の補塡にも使えます。

何にでも使えるお金はとてもありがたいものです。がんと診断されて落ち込んでいるときに、お金の心配までしなくてもいいので、それだけでも心に余裕が出てきます。

手術は入院になりますが、退院してからは通院治療が中心になります。抗がん剤治療などの副作用で仕事に制限がでるので、収入減に繋がってきます。

役に立つのが、抗がん剤・放射線治療給付金などです。月額10万円、20万円などの給付金が多いと思います(給付金額、給付金回数などは契約や保険会社により異なります)。毎月給付金が出れば生活費の補塡として役に立ちます。がん保険を選ぶときには、「診断一時金」と「治療給付金」を中心に考えるようにしましょう。

がん保険以外の選択肢とは

がんになったときの収入減には、がん保険がとても役に立つます。しかし、がん保険以外にも収入減に対応している保険があります。

それは「就業不能保険」です。この保険は、病気やケガで働けない期間が60日または180日以上続いた場合、毎月給料のように給付金を受け取れることができます。

がん保険のように診断一時金はありませんが、就業不能保険は、がん以外の病気にも対応できるので幅広く使えます。こちらも検討してもいいと思います。

先進医療特約と自由診療保険の必要性

先進医療の重粒子線・陽子線治療では、200~300万円くらいの費用がかかるというテレビCMもあります。

たしかに先進医療を選択した場合には、その費用は全額自己負担になります。しかし、重粒子線・陽子線治療ができる施設は限られていて、実際に治療を受けている数は約3000件ぐらいです。がん患者は毎年100万人が増えていくので、粒子線治療を受けられる人は少数です。そんなわけで結局、ほとんどの人が健康保険内での治療を行っています。先進医療特約の保険料が数百円と安いのは、それだけ利用する人が少ないと言うことでもあるのです。

もし、がんに本気で向き合うというのでしたら、先進医療だけでは対応できないことがあります。その場合には自由診療を選択することも考えられます。自由診療を選択すると、健康保険での治療も全額自己負担になり、月額100万円もの自己負担になることもあります。そうなると現実は自由診療を受けるのはなかなか難しいと思います。しかし、がん保険で自由診療に対応している保険も数少ないのですがあります。がん保険の選択肢として「自由診療」に対応した保険も検討してみてはいかがでしょうか。

私が考える「がん保険」とは、治療費のための保険ではなく、生活費のための保険だと思います。ですから、そのための選び方をするのがいいと思います。また自由診療を考えるのであれば、自由診療に対応した保険もお勧めです。あなたが「こうありたい」という考えに近い保険を選んでください。

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