第九十回「良い嫌われ方」

アーバンギャルド浜崎容子のバラ色の人生

えっ、もう連載九十回!? と驚きを隠せないでいる浜崎です、どうも皆様。

これもひとえにRooftopの読者の皆様と編集部の皆様が浜崎を見放さないでいてくれるお陰、と自分の文才に感謝しております。

先日、夢に高校時代の親友が登場いたしまして、夢の中でも親友なのですが(リアルもね)、その所為(言い方)ですっかり存在を忘れていた同級生のことを唐突に思い出しました。ごめんね忘れてて。でも人は忘却の生き物ですから。人の心に残り続けるって難しいんですよ。

で、その人をNさんということにして、Nさん多分ですけど私のこと苦手って言うかどっちかって言うと嫌いなんだろうなー、と思いながら日々クラスメイトとして過ごしていたのです。

なぜ私のことを嫌いか? という出来事を箇条書きにすると…。

・直接私に言えばいい先生からの伝言などを他の共通の友達を介して伝える

・家庭科の授業で同じ班になった時にあからさまに無視する

・掃除当番が一緒になった時にあからさまに(以下同文)

・「おはよ〜」と声をかけてもあからさまに(以下同文)

…等々、思い当たる節がいくつも出てくるんですよ。こういう微妙なニュアンスってその場にいる人間じゃないとわからないものだと思うのですが、「お前のこと苦手」っていうちょっとピリッとしたオーラを出された経験がある人って多いんじゃないかなって思います。たとえどんなにいい人でも(あ、自分を擁護してるんじゃなくて、自分は人として立派にクズですので)。

別に無視されるのとかどうでもいいんですけど、最初に書いた「直接私に言えばいい先生からの伝言などを他の共通の友達を介して伝える」、これはけっこう精神的にきついものがあって、「Nさんが浜崎さんに伝えてって言ってたよ〜」が何回か続いた時に私はたまらなくなり、Nさんに直接「あの〜、これ私に直接言えばよくない? 〇〇ちゃんに通す必要ありますかね…?」とビクビクしながら言ったことがあるのですが、闇より深いため息をつかれて「その場に浜崎さんがいなかったから」って吐き捨てるように言われ席を立たれてしまい、あ〜〜Nさんやっぱり私が苦手なんだな〜とそこから割り切るようにしました。

それまでは高校生活を快適に過ごすため、敵(?)をあんまり作らないようにけっこう朗らかなキャラ(つまりバカ=カースト上位の人とも底辺の人とも喋れるいわば橋渡しポジション)でいたつもりなのですが、Nさんだけはどうしてもお互い苦手だな〜というのをなんとなく肌で感じていました。

それをある日、先述した親友に「私、Nさんに嫌われてる気がする」と話した時、普通なら適当に「そんなことないよ〜」とか「気のせいじゃない?」とか言ってくれるかなとほんのり期待したのですが、親友は苦笑いしながら「だって容子はトロいから…」と言われ、ハッとしました。

そう、Nさんはテキパキなんでもさっさとこなす超優等生タイプ。実際、成績もトップでした。一方私は、授業中に先生が噛んだりするとそれをツッコんで教室中の笑いを取り授業をストップさせてしまうようなタイプ。

まさに水と油。まぁ合うわけないですよね。おそらくそういう私の「いらんツッコミ」のせいで授業がサクサク進まないことにイラついていたんだと思います。

「じゃ、次、ここ浜崎さん読んで」「えっ、あっ、すんません、何も聞いてませんでした、って言うか今何の授業でしたっけ?(笑)」→後ろに立ってなさいコースな人間ですからね。しかもクラスメイトみんなでなんとなくお菓子をストックして誰でも自由に食べれる「お菓子BOX」制度を作り出したがゆえに授業が中断することが多くなったので(隠れて授業中にお菓子を食べる人続出)、余計にイラついていたことでしょう。

つまり私がこのことを思い出して何が言いたいのかと言うと、「合わない人とは自分が我慢して頑張って好かれようとしなくていい」ってことなんです。私がNさんとうまくいかないなーって思っていた時は、Nさんの顔色を見てなんとか好かれたい、好かれなくとも普通の関係になりたいと私自身頑張っていた節があったからです。

でもそれも諦めの境地に達した時、あら不思議。全然ストレスなくむしろ前よりもNさんとの仲が改善したっぽくなりました。

「頑張って好かれようとしている態度」にも彼女は不満だったのかもしれない。彼女の願いは「浜崎さん、どうか私のことほっといて」だったんだろうなーと今となっては思います。で、それを理解できた時に関係は良好になったので、相手の気持ちを尊重するってこういうことなのかなーと、なんとなくですが「良い嫌われ方」というのもあるんだなって思った次第であります。

嫌いな人は嫌いで良いし、嫌われてるなと感じたらとことん嫌われてやりましょう。それが相手の望むことだとしたら。

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