「野球離れ」への新たな取り組み―東京ヴェルディ・バンバータが追求する「スタイル」

東京ヴェルディ・バンバータが今季からU-15チームをスタート【写真:広尾晃】

高校日本代表として「第2回AAAアジア野球大会」に出場した経験を持つ小原監督

 軟式野球チーム・東京バンバータは、昨年、東京ヴェルディ傘下となって東京ヴェルディ・バンバータとなったが、育成カテゴリーとしては、今季から中学生クラスにあたるU-15チームをスタートさせた。

 東京ヴェルディ・バンバータU-15は、硬式、軟式両方で展開されるが、小原慶治硬式監督に考え方を聞いた。

 小原監督は、北海道出身、駒大岩見沢高時代に主将として選抜出場、高校日本代表として「第2回AAAアジア野球大会」に出場。駒澤大学でも主将として東都リーグで活躍。さらにNTT東日本で選手、コーチ。2017年から学童軟式野球チーム・東京バンバータジュニアで監督を務めた。

「ずっと野球をしてきましたが、一時期野球を離れていました。でも、東京バンバータに入って『野球ってやっぱり面白いな』と言うことを再認識したんです」

――硬式、軟式の選手の振り分けはどんな風になりますか?

「体格に恵まれて本人の希望があれば、硬式をやってもらいますが、楽しいけど野球だけじゃなく、他の事にも時間を費やすが野球も上達したい、という子は軟式と言う選択肢もあります」

――巨人の菅野智之投手のように、プロの一線で活躍する投手の中には中学時代軟式だった選手の多いですが?

「菅野投手の場合は、神奈川県相模原市と言う野球の盛んな土地柄で、強い中学硬式野球チームも多かったのに軟式を選んだ、ということなので少し驚きです。うちはこちらから振り分けることは原則ありませんが、本人が硬式をやりたいと言っても、打撃は良いが捕球で硬式は怖いという子どもには軟式に回ってもらうこともあります。指導者は硬式、軟式両方を指導することができます。とにかく自分が好きな野球ができる環境を提供するのが第一ですね」

――硬式、軟式はどういう団体に所属しますか?

「硬式はボーイズリーグに加盟します。軟式は、地域の軟式野球連盟に所属します。成年チームの東京バンバータは“勝つ喜びと野球の楽しさ”を求めてきましたが、U-15も同様です。硬式は3年以内に全国大会のベスト8を目指していきたいと考えております」

東京ヴェルディ・バンバータU-15硬式チームの監督を務める小原慶治氏【写真:広尾晃】

「硬式は“野球中心の生活”、軟式は“生活の一部が野球”」

――球数制限についてはどう考えていますか?

「学童軟式野球・東京バンバータジュニアでは、これまでも独自に球数制限を実施してきました。最近はいろんな少年野球団体が球数制限を導入していますが、我々も定められたルールに沿い、独自に理論を構築しているところです。当初は、周囲の方々からいろんな声もいただきました。2日間の大会でエースを1日目に投げさせて、2日目に別の投手が登板して負けた時には、周囲の方々から『なんでうちの子を投げさせないで負けたんですか』と質問されましたが、『この試合(の勝利)よりあなたのお子さん(の健康)をとったんです』と説明しました。そこからそのような質問は減りました。練習時間も多くて4時間にしています」

――ユニホームは東京ヴェルディ・バンバータと同じデザインですね。

「子どもたちにも好評です。彼らも格好いいユニホームを着ているというプライドを持ってくれてるようです。それもいいことですね。髪型は自由です。逆に坊主にしたいという子は、『監督に相談してくれ』と言います(笑)。親の影響なのか、本人が希望しているのか。坊主頭が似合うというのならそれでもOKですが」

――試合や練習での方針は?

「グラウンドでは、よく少年野球で聞かれる声出しはしません。東京ヴェルディ・バンバータのように『いくぞ!』、『まかしとけ』みたいな普通の会話ができるチームがいいなと思っています。それから、アップ時に整列して走らせるようなこともしません。子どもはそれぞれ体格も歩幅も違うのに、並んで走る意味はありません。個人個人で自主的にアップができるようにするのが良いと思います。僕自身は最も厳しい野球を学んできました。それを知ったうえで、こういう指導をしようと思っています。

 保護者の中には『監督が育ったような指導をしてください』と言う人もいますが『本当にやったら潰れてしまいますよ』といっています(笑)。基本的に、硬式は“野球中心の生活”になりますが、軟式は“生活の一部が野球”と言う感じになるかとイメージしています。家族旅行や他のスポーツで練習を休むのも自由です。硬式野球部は8月から始まる新人戦に1年生で出場するのがデビューになると思います。軟式は、4月から体験練習を始めます。『中学の部活の軟式野球部と、東京ヴェルディ・バンバータU-15軟式野球クラブとどちらを選びますか』と言う感じです」

 近年、中学の軟式野球では、競技人口が激減している。その原因は1つではないが、昔ながらの日本野球のスタイルが大きいとされる。東京ヴェルディ・バンバータの取り組みは「野球離れ」に対する新たな取り組みとしても注目すべきだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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