都心の上空を飛行機が通過!羽田空港の新飛行ルートとは
都内のオフィスビルやマンションの真上を飛行機の大きな機影が横切る、3月からはこんな光景が日常になっていくかもしれません。
2020年3月29日の夏ダイヤより運用が始まる、羽田空港の新飛行ルート。羽田空港を離発着する飛行機が新たな航空路を通ることが決定し、2月には飛行確認も行われました。
航空機の運航に携わるCA(客室乗務員)やパイロットはもちろん、飛行機を利用しない方にとっても関心の高いニュースだと思います。
新ルート導入でいったい何が変わるのでしょうか。
現役パイロットに聞いた内容も含めてメリット、デメリットわかりやすく解説します。
羽田空港の新航空路とは?
従来からの大きな変更点を簡単にまとめると、南風の時の【羽田空港のA、B、C、D4つの滑走路の使い方のバリエーションが大幅に増えること】と言えます。
羽田空港には現在4本の滑走路があり、造られたのが古い順にA→B→C→Dとなっています。
滑走路の簡単な位置関係については図1をご参照ください。
例えば、これまで着陸に使用可能な滑走路はB滑走路とD滑走路だけでした。
そのため、これまでは千葉の房総半島を通り東京湾上空を大きく旋回するように着陸していましたが、A滑走路とC滑走路が着陸に使用できるようになることで、都内の市街地上空を通過し羽田に到着する飛行ルートが増えることになります。
また、従来は着陸のみに使っていたB滑走路が、離陸滑走路としても使えるようになります。
これにより羽田空港の年間の発着回数は、現在の6万回から9万9千回にまで拡大し、1時間あたりの離着陸数も80便から90便に増加。その全てが国際線に割り当てられます。
東京オリンピック・パラリンピックの際の海外の観光客や選手団など、大規模な受け入れに備えることができるといえます。
新航空路はどのようなときに使われる?
市街地の上空を飛行機が四六時中通るの?と不安になる方もいるかもしれません。
しかし、新航空路が運用可能な時間は15時~19時の間だけと限られています。理由としては、その時間帯は国際線の離発着機が最も集中する時間帯だからです。
さらに、風向きも南風の時のみと決まっているため、南風が少なくなる冬場などはこのルートをほとんど使用しないことが想定されます。
新航空路導入のメリット:大幅な増便・定時性の向上
ではこの新しい航空路によってどういった変化がもたらされるでしょうか。
メリットとしては、まず羽田空港の大幅な増便が見込まれます。観光やビジネスなど多くのインバウンド消費により、日本に経済効果がもたらされることが想定できます。
また、国際線だけでなく実は国内線にも大きなメリットがあるのです。それは定時性の向上。
CAの方なら経験があるかもしれませんが、夏場の羽田へのフライトは風向きと滑走路の影響でフライト時間が長くなり、さらに着陸の順番待ちで上空待機することもしばしば。筆者も定時性を守るのに四苦八苦した記憶があります。
新ルートにより滑走路の運用が大きく変わったことによって、これまでの離発着機の混雑が改善されることが期待されています。
次のページ:懸念される騒音対策。どのような対策がとられている?
新航空路導入のデメリット:騒音と落下物の危険性
デメリットとして考えられるのは、騒音と落下物の危険性です。
恵比寿、目黒、大井町、白金高輪といった街が航空路直下となり、最も近いところだと大井町、大井ふ頭の上空300m付近を飛行機が通過していくことになります。
国土交通省もこの問題に関しては対策を講じており、民間航空会社各社の営業便で試験運用を行いデータを集めています。
また、パイロットも騒音対策として、運航上大きな変更点があったようです。
やや専門的な話になってしまうのですが、飛行機は離陸するとすぐにどんどん高度を上げていきます。そのため、低高度で飛ぶ時間は短いのですが、逆に、着陸のときは段階的に高度を下げていきます。そのため、着陸時は低高度で飛ぶ時間が長くなってしまうのです。飛行機が低い高度にいる時間が長ければ長いほど、地上では騒音を感じやすくなりますよね。
その低高度の時間を少しでも短くするために、着陸時の進入高度を従来よりも高い高度で着陸するように運用が変更になったそうです。
また、私は現在日系の航空会社で働いているのですが、整備士や運航乗務員、客室乗務員だけでなくすべての社員が落下物に対しての意識を高め、全社一丸となって落下物ゼロに取り組んでいます。
最後に
飛行機を利用する人も、利用しない人も、安全性は何よりも優先するべきものです。
新ルート導入のメリットは享受しながらも、航空機の運航に従事する立場の方はより一層の安全意識をもって万全の体制で新ルート運用開始を迎えたいものですね。
また、運用開始してからの動きも追っていきたいと思います。