竜の守護神の座は“一騎打ち” 無欲な岡田と貪欲の藤嶋、血行障害克服した対照的な2人

中日・藤嶋健人(左)と岡田俊哉【写真:小西亮】

中日の守護神争いは11年目の岡田と4年目の藤嶋による事実上の“一騎打ち”

 重責を担う。今季のチームを占う上で、最終回の安定は欠かせない。7年連続Bクラスからの脱却を目指す中日のクローザー候補には、11年目の岡田俊哉投手と4年目の藤嶋健人投手の名前が挙がる。ともに血行障害を乗り越えた2人。状態を見極める首脳陣が判断の材料として重要視しているのは、結果ではないという。

 日差しの下では半袖でも汗ばむ沖縄・北谷球場。チームにとってオープン戦開幕となった2月22日の阪神戦で、岡田が9回に登板。被安打1の1回無失点にも「1つ1つのボールの精度を上げていく。ブルペンでおさらいしながら、今年の自分というのを作っていかないといけません」と淡々だった。翌23日のDeNA戦の9回には藤嶋がマウンドへ。2奪三振で3者凡退に仕留め「体の開きが早かった部分はしっかり修正できていた」とうなずいた。

 昨季チームは鈴木博志投手に開幕から守護神を託したが、制球難もあって6月以降は2軍暮らしが長かった。代わって9回に座ったライデル・マルティネス投手は今季、キューバ代表として東京五輪の米大陸予選に参加するためシーズン開幕時には不在なる。そんな台所事情の竜リリーフ陣で、大役を担うのは誰か――。キャンプからオープン戦へと向かう中で、岡田と藤嶋の事実上の“一騎打ち”となっている。

阿波野コーチは結果ではなく「内容で判断」

 ただ、最終回への思いは対照的だ。昨季後半にクローザーを担い、13セーブを挙げた岡田は、9回のマウンドに対して「まだちゃんと理解できていない。それを今年理解できるのかもしれませんが」と頭を掻く。語るより着実な結果で信頼を勝ち取っていくのが左腕のスタイル。「まずは開幕1軍にしっかり入って、チームの戦力になること。それ以上でも以下でもありません。その先に守護神というものがあればいいと思っているくらいです」。あくまで無欲を貫く。

 一方の藤嶋は有言実行タイプ。「狙える立場にいることはありがたいですし、当然やりたい気持ちはあります」。尊敬してやまない元巨人の上原浩治氏のようにマウンドでも気迫を前面に出していく右腕は昨季、21試合連続無失点も記録。「もし9回に投げさせてもらえるなら、上原さんの曲を使わせてもらいたいですね」。憧れの存在の登場曲だった「Sandstorm」を聴きながらマウンドへ。貪欲にその座をうかがっている。

 そんな2人には、奇しくも「苦難」の共通点がある。岡田は17年6月に、藤嶋は19年1月に、手の血行障害を改善させる手術を受けた。「状態はいいですよ。ずっと付き合っていかなきゃいけないものですが、自分の中では治ったと言い聞かせてます!」と岡田の表情は明るい。最低限のケアはするが、あえて気にしないようにしている。それでも気候条件などで万全とはいかない日もあり、2人でよく状態の確認をするという。「今日どう?って感じで」と藤嶋。2人だから分かる感覚でもある。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で不透明感はあるものの、変更がなければ20日の開幕まで3週間を切った。守護神指名に欠かせない条件として、阿波野秀幸投手コーチは「しっかりカウントをとって、ウイニングボールで仕留められるか。自分が意図した展開になっているかが大事」とポイントを語る。ゼロを続けることよりも「内容で判断する」。シーズンを任さられるほどの抑え方ができるか。岡田と藤嶋は、それぞれのやり方で信頼を勝ち取っていく。(小西亮 / Ryo Konishi)

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