キャシー・ベイツの名演がヤバい作品3選!! X・ドラン最新作『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』にも出演

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』© 2018 THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

フランスが生んだ若き天才グザヴィエ・ドラン監督の最新作にして初の英語作品『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(2020年3月18日公開)で、その存在感をいかんなく発揮している大女優キャシー・ベイツ。ということで、古希を過ぎて(1948年生まれ)その演技力にますます磨きをかけているキャシー大先輩の代表作の中から、見事な演技が堪能できる作品を3本厳選して紹介したい。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』© 2018 THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

沈没から生還した成金ガハハおばさんを好演『タイタニック』

まずは、グザヴィエ監督が『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』を撮るきっかけになったというレオナルド・ディカプリオ主演の不朽の名作『タイタニック』(1997年:ジェームズ・キャメロン監督)から。

『タイタニック』<2枚組> ¥1,905+税 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン ©2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

あの“溺死シーン”があまりにも有名、かつ3時間超もある映画なので、逆に「キャシー出てたっけ?」みたいなレオ様ファンもいるかもしれないが、まるでジブリ作品に出てきそうなエモいキャラクターを好演、しかも序盤からがっつり出まくっていたことを思い出してほしい。

『タイタニック』©2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

キャシーが演じたマーガレット・ブラウンというおばさんは映画のためのキャラクターではなく、実際の生存者のひとりであり、後に“不沈のモリー”と呼ばれた豪傑だ。タイタニック号の一等客室に泊まれるほどの金持ちだが、炭鉱事業で財を成した成金のため貴族階級の連中からは蔑まれていたらしい。映画の中ではその事実を反映している部分もあるが、下世話なジョークを飛ばして場を和ませたり、レオ演じる貧乏青年ジャックに息子のタキシードを貸してあげたりと、いわゆる絶対に生き残って欲しい枠の好人物として描かれている。

そんなモリーがなぜ生存者の中でも特に伝説化しているのかというと、彼女は救命ボート上で率先して指示を出し、他の乗客を救出しようとしたから(※映画では船員に脅され救助できない)。その後、モリーは女性の権利向上のために尽力したそうで、叩き上げの肝っ玉母さん的な存在感がキャシーにばっちりハマッている。

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During this night in 1912 the RMS Titanic would sink to the bottom of the Atlantic Ocean. The Unsinkable Molly Brown, however, would not. Daughter of Irish Catholic immigrants, Margaret Brown and her husband James Joseph Brown had gained enormous wealth after a mining success. As with what “they” called “new money” Margaret made her way into the upper class but used her position as a socialite to achieve great things as a philanthropist, such as providing mining families with food and basic necessities. In 1909 she separated from her husband with who she had two children, and agreed on a settlement which still left her with a substantial amount of money. Brown boarded the Titanic as a first class passenger in Cherbourg after traveling through Egypt with the Astor’s honeymoon party. During the sinking Molly Brown is heroically remembered for helping many fellow passengers into lifeboats before boarding Lifeboat 6 herself. Aboard Lifeboat 6 she repeatedly demanded that they would return their half empty lifeboat to save many others but Quartermaster Robert Hichens refused. Witnesses claim that she even threatened to throw some of the crewmen overboard if they did not return. It’s unknown whether they eventually returned. Once aboard the Carpathia, Brown helped organize a survivors committee which provided essentials for the second and third class passengers. She even spent her time talking to everyone who needed to, as a way of counseling. After the tragedy she remained involved in human rights activism, ran for senate years before women were even allowed to vote, served as a humanitarian in France during World War One and later worked as an actress. ▪ ▪ Margaret Brown died in 1932 from a brain tumor. ▪ ▪ Don’t forget to check out my page for previous Titanic stories! ▪ #mollybrown #margaretbrown #theunsinkablemollybrown #unsinkablemollybrown #titanicsurvivorstories #titanicsurvivors #titanic #theunsinkableship #rmstitanic #jamesjosephbrown #jjbrown #humanitarian #philanthropist #humanrightsactivist #carpathia #rmscarpathia #wwi #onthisdayinhistory #1912

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狂気のストーカーおばさんが怖すぎるサイコ・スリラー『ミザリー』

当時『ミザリー』(1990年)は頻繁に「ヤバいおばさんにハンマーで○?%△□$!!!」みたいな超怖いテレビCMがお茶の間で垂れ流されていたので、本編を観ていなくても「なんか怖いおばさんの映画」という印象を持っているアラフォー世代は多いだろう。まだ「ストーカー」という言葉が一般に浸透していない時代だったが、人気作家の熱狂的なファンが凶行に走る、という物語は観客予備軍に恐怖を与えるのには十分な要素だった。

『ミザリー』 ブルーレイ発売中 ¥1,905+税 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン ©2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

物語は、人気小説「ミザリー」 シリーズの作者ポールが雪山で缶詰になって完結編を書き上げた帰路、運転を誤って事故ってしまうところから始まる。死を覚悟したポールを偶然(?)発見し救ったのは、自称看護婦のアニーだった。

もう説明しなくてもお分かりと思うが、このアニーおばさんが後にハンマーを振るうことになる発狂ババ……もとい熱狂的ファンである。しかも凶行の理由は、ポールが主人公ミザリーを殺してシリーズを終わらせようとしていたから……。今っぽく例えるなら、解散を決めた推しのバンドマンの指をへし折るバンギャみたいな感じだ。違うか。

『ミザリー』©2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

さて本作は、アニーの過去=さらなるドン引きエピソードが徐々に明らかになっていく過程も恐ろしく、両足を骨折しているポールの絶体絶命感と相まって、脂汗が止まらない傑作サイコ・スリラーに仕上がっている。アニーを演じたキャシーはとてもナチュラルな演技を見せてくれるのだが、シリアルキラーをナチュラルに演じられる人がフツーの神経の持ち主とはとても思えず、その後しばらくキャシーを見かけるたびに色んなところがキュッと縮み上がる映画ファンが続出した。

『ミザリー』©2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

キャシーは本作の演技が絶賛され、第63回アカデミー賞で主演女優賞を獲得している。

爆弾魔の疑いをかけられた息子を支える母!『リチャード・ジュエル』

90年代アメリカで実際に起ったFBIによる冤罪未遂事件と、一般市民の人生を破壊したメディアリンチを描いたクリント・イーストウッド監督の最新作『リチャード・ジュエル』(2019年)。キャシーは主人公リチャードを支える母ボビを演じ、第92回アカデミー賞で助演女優賞にノミネートされた。それまで狼狽するばかりだったボビが記者会見を開き、涙ながらも力強く息子の無実を訴えるシーンは本作のクライマックスのひとつだ。

母ひとり子ひとりのジュエル家は、リチャードが仕事中に爆発物を発見したことから、想像もできない事態に巻き込まれていく。家宅捜索に入ったFBIが、冷蔵庫からおかずの入ったタッパーまで押収していく様子を見たボビが「なんでそんなものまで!?」と号泣するシーンは可笑しみが強いが、FBIが日常的に行っていることと考えるとちょっと恐ろしい。

『リチャード・ジュエル』© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

本作の主要登場人物は片手で足りるほどの人数なので、そのぶんキャスティングは慎重に行われたはず。スリラーから歴史ドラマまで、どんなジャンルの作品でも存在感を発揮するキャシーを主人公の母親に起用したのは、リチャード役のポール・ウォルター・ハウザーがまだ知名度が低い俳優だったことと無関係ではないだろう。しかしてその成果は……本作を最後まで観れば明らかになる! 母の愛は強し!!

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』は2020年3月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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