読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、あと10年で住宅ローンを完済したいという28歳の共働き夫婦。繰り上げ返済を考えた時、まず何から手をつければいいのでしょうか。FPの前野彩氏がお答えします。
28歳の共働き夫婦です。現在、住宅ローンの残債が2100万円ありますが、できれば繰り上げ返済をして、あと10年で完済したいと考えています。その場合、まず何から着手すればいいのでしょうか。アドバイスよろしくお願いします。
〈相談者プロフィール〉
・男性、28歳、既婚(妻:28歳、公務員、育休中)
・子ども2人:1歳、0歳
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の手取り金額:55万円
(夫:38万円、妻:17万円※育休が終わると25万円)
・年間の手取りボーナス額:120万円
・毎月の世帯の支出目安:約45万円
【支出の内訳】
・住居費:9.2万円(住宅ローン+管理費)
・食費:8万円
・水道光熱費:2万円
・教育費:1万円
・保険料:0.5万円
・通信費:1.5万円
・車両費:なし
・お小遣い:10万円
・医療費:1万円
・日用品:2万円
・交通費:1万円
・交際費:2万円
・その他:5万円(レジャーなど)
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:10万円
・年間ボーナスからの貯蓄額:50万円
・現在の貯蓄総額:300万円
・現在の投資総額:株式150万円、投信50万円
・現在の負債総額:2100万円(住宅ローン:借入額2300万円、返済期間35年、金利変動型0.47%)
前野:残高から推測すると、マイホームを購入されたのは、3年ほど前でしょうか。共働きで、今後も安定した収入が見込めるご家庭ですから、繰り上げ返済を行う余力は十分にありそうです。繰り上げ返済に教育資金と老後資金も含めた家計管理を考えていきましょう。
繰り上げ返済はいつがベスト?
住宅ローンの完済目標は、10年後とのこと。金利が変わらないとして試算すると、今から10年後の残高は1500万円弱です。その頃、お子さんは教育費が少ない小学生ですから、メリハリ家計を意識することで、繰り上げ返済できそうです。
ここで重要なのが、繰り上げ返済のタイミング。
現在、年末の借入残高の1%が所得税から還付される、住宅ローン控除を活用されていることと思います。住宅ローン控除の金額よりも納めた所得税が少ない場合は、一定額までが住民税から減額されますが、お二人は今、あるいは、奥様の仕事復帰後は、住宅ローン控除を全額使えていますか?
全額利用できていないのなら、少しずつの金額でも良いので、早めの繰り上げ返済がおすすめです。一方、住宅ローン控除を全額利用できていて、金利が1%より低いのなら、繰り上げ返済は住宅ローン控除が終わるタイミングが有利です。
なお、ここで注意点が一つ。それは、金利の変化です。変動金利は、半年ごとに金利が見直されますが、実際の返済額の変更は5年ごとです。住宅ローンの引き落とし額だけ見ていると、金利の上昇に気づきにくいため、半年ごとに届くお知らせを確認する習慣を付けましょう。金利が1%よりも上昇するときは、住宅ローン控除の期間が残っていても、繰り上げ返済を優先しましょう。
どうやって貯める?
繰り上げ返済用のお金は、元本が確保される預貯金で貯める方法と、投資信託などの運用で貯める方法があります。確実に貯めたいのなら、「繰り上げ返済用の積立口座」として新たに自動積立定期預金の口座を作って、積み立てましょう。
ただ、ご相談者さんは、現在も投資をされていらっしゃいます。その強みを活かし、国の定めた条件をクリアした投資信託を、年間40万円まで非課税でコツコツ投資ができる、つみたてNISA制度を使ってはいかがでしょうか。
つみたてNISAを2人で使えば年間80万円積み立てられますから、10年なら累計800万円です。将来のリターンはわかりませんが、仮に、平均1%で運用できたとすると10年後には約841万円、2%なら約885万円の資金になります。10年後完済のために必要な残りの資金は、ボーナスの半分を貯めると、目標達成できますよ。
これからの収支を見据えてメリハリ家計の実践を
ここまで目標金額と貯め方をお伝えしてきましたが、育休を終えた奥様が職場復帰するときの収入アップも心強い味方です。しかしながら、世帯収入が高い世帯では、保育料も高くなるのが一般的。保育料は、お住まいの市区町村によって異なりますが、子ども2人分の保育料や幼保無償化後の給食費等を考えると、復帰で増える7万円は、子どもの教育関連費に消えると思って家計管理を行いましょう。
お子さんの成長と共に洋服やおもちゃなど、様々なものが必要になる中、年間170万円の貯蓄は立派です。今後は、繰り上げ返済に加えて、教育費の準備や電化製品などの買い替え費用、老後資金なども必要になりますから、メリハリ家計を作りたいところです。
現在、交際費2万円、レジャー費5万円、お小遣い10万円と使っています。これらを大きな視点で区切ると、「楽しみ費」というグループに分けることができます。すると、1ヵ月の「楽しみ費」は17万円、1年間では204万円です。実際は、年末年始や夏休み、記念日などの支出を入れると、もっと多いことでしょう。
お子さんが小さいときしかできない家族の楽しみもありますが、10年後にローン完済という目標があるなら、ちょっとだけ引き締めてみませんか? 例えば、「交際費はお小遣いの中に含める」「外食はレジャー費に含める」などの支出の項目と金額の上限を見直すことで、節約感を減らしながら貯蓄を増やすことができます。
掛けたいところにお金を掛けつつ、引き締めるところを引き締めて、メリハリ家計を実践しましょう。10年後の完済が近づきますよ。