自民党が割れる 仁義なき戦い!? 熾烈な選挙区をピックアップ 【選挙ドットコムちゃんねるダイジェスト】

今回の選挙ドットコムちゃんねるは、原則1人しか当選者が出ない衆議院小選挙区に自民党系の立候補予定者が複数いるという、なんとも不穏な事態に注目。

党内で票を奪い合えば、当然、不利になるのはわかっているはずなのに、あえて調整しようとしないのはいったいなぜ?
そもそも自民党内の選挙や候補者の公認については誰が取り仕切っているの?

さっそくダイジェストでお伝えしていきましょう。

自民党内で熾烈な候補者争いが繰り広げられている選挙区とは?

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乙武 「今回は『自民党が割れる 仁義なき戦い!熾烈な選挙区をピックアップ』という映画のタイトルみたいなテーマですが」

千葉 「今年秋にも行われるといわれている衆院選挙ですが、野党などでは党を越えた候補者調整が水面下で行われている選挙区もある一方で、自民党の内部では激しい候補者争いが繰り広げられている選挙区がいくつかあります。

今回は、そんな注目の選挙区を見ていきましょう。まずはこちら。静岡5区ですね」

乙武 「おおっ『本気でやれよー』って言ってますね、二階さん!」(笑)

松田 「面白いところでキャプチャ取りましたね」

乙武 「どういうことですか? これ」

松田 「静岡5区は、もともと細野豪志さんが6回連続小選挙区で当選されている、細野さんの地盤が非常に強いところです。細野さんといえば、前は民主党の大臣や幹事長まで務められた若手のホープということで、非常に知名度がある方なんですけども、今は無所属。

そういう中で、自民党の二階幹事長のサポートの元、自民党に籍を置いてですね、今後自民党の公認で選挙に出るか!? となっている中で、二階幹事長ご自身は『当然、静岡5区には細野さんに自民党で出てもらわなきゃ困る』というような応援をされているわけです。

しかし静岡5区には、ずーっと細野さんと戦ってきた自民党の選挙区支部長として立候補し続けてきた岸田派に所属されている吉川赳さんがいて。細野さんに負けても、比例のほうで当選されて現職にはなっているんですけど。

党としては吉川さんをずっと応援してきてますから、静岡県の自民党連合会からすると、二階さんの細野氏擁立的な発言は『ちょっと待ってくれ』と」

乙武 「そうなりますよね。『これまで何年、俺たちは吉川さんでやってきたと思ってんだ』って」

松田 「この部分で、自民党内で割れているというのが今の状況なんです。小選挙区制になってからは、ひとつの選挙区では基本的に1人しか通らないんですよ、比例復活はありますけど。

選挙区では1人しか通らない中で、その小選挙区の支部長が党の公認候補となるのが通例ですが、複数自民党候補者が立った場合にどっちが公認を受けるのかというところで、熾烈な争いがこれまでもあちこちで行われてきたんですが、今回、静岡5区がいったいどうなるのかというのは、自民党関係者だけでなく、多くの選挙関係者が注視しています」

乙武 「これ、落としどころとしてはどちらにも公認を出さず、選挙をして勝った方をあとから支部長に指名するという感じになるんですか?」

松田 「中選挙区時代からこれまでの自民党としては、伝統的にはそういうやり方ですね。2017年の衆院選のとき、岡山3区とか山梨2区で実際にそういった形で、どちらも無所属となって、もともと支部長だった方は無所属に自民党推薦をつけて、もう一方には推薦を付けない状態で、自民党系2人で戦って、勝ったほうが次の支部長になるというようなことが起こっています。

今回もこの形になるのか、もう少し別の感じで調整をするのか。まだ現段階ではコロナウイルスの影響なんかもあって今すぐ解散というのが考えられない状況になっていますから、話が進んで急に何かが動くとは思えないんですよ。

ただ、乙武さんがおっしゃったような実際の選挙で白黒つけるような解決策は、最終的な考え方としてはあるんですけど、その前に秋あたりをにらんで党内でもいろいろ調整がされるんじゃないかと見てますけどね」

乙武 「二階さんは吉川さんがいるのをわかってて、なんで細野さんゴリ押しみたいなことしてるんですか?」

松田 「ひとつは、やはり小選挙区の支部長は、当選してなんぼだろう、当然、当選してもらわないと、という考え方が二階さんにおありなんだと思います。党全体の議席数を考えたとき、比例で取った議席分を小選挙区で出た人が落選して復活用に消費されると、全体の議席が増えないわけですよ。

小選挙区で出た人がみんな勝ってくれたら、それ以外の比例の候補が当選して議席を獲得できるわけですから。この小選挙区の支部長は、小選挙区できっちり勝つべきだという考え方というのは党内部にも多くて、2017年の衆院選のあたりに、自民党内でも議論になったんですよ。

連続して比例復活している議員に関しては、次の選挙(3回目)には比例と小選挙区での重複立候補を許さないという形にしたらどうかという議論がね。結局、これはうやむやになっちゃったんですが、やはり『小選挙区で確実に勝ち上がってこい』というのが、前提としてあるわけです」

*編集部注:2017年11月自民党は『連続2回以上、小選挙区で敗れて、比例復活で当選した議員は、次回は比例代表への重複立候補を認めない原則』を議論。日本維新の会は『小選挙区で2回連続落選した場合、原則として比例復活で当選しても、次の衆院選で公認しない』という考えを示した。

松田 「だから、小選挙区で勝てる強い人間(細野氏)が党内にいるんだったら、それを自民党公認にすればいいじゃないかというのが二階さんの考え方です」

乙武 「でもそれに対して、県連とかがめっちゃ反発しているわけじゃないですか、岸田派を含めて。そういうのって根回しとかしないもんなんですか?」

松田 「多少は根回し的なことをされている部分はあると思います。逆に、二階さんのお立場で、あえてそういった根回しをせずに選挙で戦って決着するやり方もありだろうと思っておられるかもしれないですね。

最終的に、どういう形で決着をつけるのか二階さんのお考えはわかりませんが、政治には丁寧に根回しをしたうえで円満に進めるやり方と、バーンって問題を提起しておいてそこから本格的な交渉に入るやり方というのがあるので、いろいろ考えも策もあるのではないかなと思いますね」

揉める選挙区には必ず二階派の影あり

乙武 「この静岡5区以外にも、自民党内で候補者が複数出そうなモメてる選挙区ってあるのかな?」

千葉 「ありまーす!続きましては、新潟2区、そして東京15区ですね」

乙武 「おわ、また二階派だ。松田さん、どうなってんですか?」

松田 「二階さんはですね、いろんな方が二階派に所属されていて、まぁスキャンダルで問題起こされてる方なんかもいるわけですが、広く門戸を開いていて。自分の派閥の拡大という思惑もあると思うんですが、新潟二区の鷲尾さんも細野さん同様、異次元で選挙に強い方なんです。

その方が『野党にはもう期待できないから、今度は自民党から出たい』と。自民党からとなると、まずは門戸が開かれている二階派が入りやすいわけです。

二階さんは幹事長という党のナンバー2の立場で、大きな権力を持っていますから、その傘下に入って今後、いろいろ交渉することになるんでしょうね」

乙武 「新潟2区も、もともとは細田さんが自民党の支部長を務められてきた方で議席も持っている状態だけど、鷲尾さんが外から入ってきて二階さんもそれを後ろからサポートして押し込んだっていう構図なわけですよね」

松田 「以前から、鷲尾さんと細田さんで選挙を戦っていましてね、2014年には細田さんが小選挙区で当選されているんです。なので、鷲尾さんがずっと勝ち続けているというわけではないんですよ。それが今後、どうなるかというところですね。

実際、こうした公認争いというのは、自民党一強といわれる自民党だけが非常に強い今の現状でね、小選挙区の支部長の数というのはどうしても限られているので、その中での権力闘争が激化してしまうという背景があるわけです」

乙武 「衆院選挙の話じゃないんだけど、去年の参院選では広島ももともと自民は候補者は1人のはずが、2人立てて溝手顕正さんは落ちてしまいましたよね。その溝手さんも、岸田派で、代わりに受かった河井安里さんは何派でしたっけ?」

松田 「忘れたふりして言わせようとしてますね、二階派です!広島の場合は、衆院選と少し事情が違って『選挙で油断するな』ってところもあると思います。

必ず勝てる見込みのある2人区(広島区は参院選では2人が当選)で、自民党候補者が1人なら絶対、勝ちますと。でもせっかく2枠あるんだから、そこを両方狙いに行くことで、当選拡大しようという観点としては、2人立てるのは正当性がある戦略だ、という風に二階さんはおっしゃってるわけです。

ただまぁ、普通に考えて2人区に2人はムリ、って話になるんですけども。ただこういう攻める選挙活動をすることで、結果的に広島県内での自民党の議席や票が増えるという票の掘り起こし効果が期待できるとも言われるんですよ。

まぁ要するに、自民党は党内で候補者同士を競わせるだけの余裕があるということですね。野党は小さな野党がそれぞれで張り合っていて、小さな力を結集する(統一候補を立てる、野党同士が合流する)という取り組みも、なかなか進まない状況ですからね」

党内バトルを仕掛ける二階氏は、党勢よりも自派閥の拡大が狙い?

乙武 「内戦がおこってる選挙区のほとんどに、二階派が絡んでますけど、これは自民党の党勢拡大に役立っているのか、二階派の派閥の拡大につながってるだけなのか、どっちなんですか?」

松田 「まぁそこは両面、あると思いますけどね。やはり二階幹事長は、もう御年81歳ですが、あれだけ権勢を誇れるというのは派閥に一定数の人数がいるということもあります。

それに幹事長というのは党のナンバー2で、総裁に次ぐ役職なわけです。総理総裁という形で、安倍さんは総理大臣として内閣を取り仕切っていますから、党内部に関しては実質、二階さんがナンバー1として動かしているわけです。

そうした中で、いろいろな選挙もずっと勝ち続けていますし、他党との窓口も二階幹事長が担っています。連立を組んでいる公明党の信頼関係では、今、二階さんに並ぶ方がいらっしゃらないというところも大きいでしょうね」

乙武 「昔は、幹事長っていうと、選挙の仕切りの最高責任者っているイメージが、僕にはあったんですよ。
だけど今、自民党には選挙対策委員長がいますよね、今は下村博文さんがやられているわけですが、これはどういう棲み分けをしてるんでしょうか」

松田 「もともと自民党の党本部の組織として、自民党総裁がトップで幹事長はナンバー2という位置づけですよね。前は党三役といったんですが、総務会長と政調会長という役職がそれぞれまたあって、幹事長と総務会長、政調会長で党三役として、党の運営を取り仕切っていました。

でも選挙対策が非常に重要だということで、選挙対策委員長というポストを新設して、今は党4役というようになってきました。

もちろん党4役の中でも幹事長は、金と選挙を仕切れるということでこの中でも非常に強い権限があるんです。
派閥争いが非常に激しかった時代は、どの派閥の人に幹事長を渡すかっていうのは、大臣ポスト2人分に相当するぐらい、ものすごく重要なポストと言われたりもしたほどです。

でも、新たに選挙対策委員長という選挙の実務を担当する役職ができましたから、選挙については昔のように幹事長ひとりの意向で、なんでも好きなようにできる環境ではなくなってきたわけです。

選挙前には一応、選挙対策本部というのを自民党内に作るんです。その本部長が総裁で、本部長代理、つまりナンバー2が幹事長で、選挙対策委員長はその下のナンバー3という位置づけなんですが。

それでも誰を公認するとか推薦するとかいうものは、昔のように幹事長の一存で決めるのではなく、選挙対策委員を含む党4役で話し合う必要が出てきた」

乙武 「幹事長が意思決定権としては上の立場だけど、昔みたいにフリーハンドで好きなようにはできないよ、って感じ?」

松田 「そうですね。フリーハンドじゃないので、細野さんの件にしても幹事長の言う通りにはスパッと決まってないわけです。党内でいろいろ合議制で決めていこうというね、大きな組織ですからそうなってきているんですよね」

乙武 「なるほどねー。では今回はここまでとなります。チャンネル登録と高評価をよろしくお願いしますね!」

 

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