津波の備え日頃から 有志が避難地図作成 逗子

地図を手にする東海さん(右)、佐藤さん=逗子市新宿

 神奈川県の逗子海岸に近い逗子市新宿地区の自治会と住民有志が、市の協力を得て津波避難マップを作成した。避難路や注意すべき場所などを記載し、非常時の持ち出し品リストや避難時の行動の流れなどもまとめられ、住民たちは「海沿いのまちだからこそ、津波への備えに日頃から向き合うことが大切」とマップの活用を呼び掛けている。

 A3判のマップは昨年2~8月に5回のワークショップを開いて作成。新宿自治会が呼び掛け、同地区のマンション管理組合役員や私立学校教諭、介護施設スタッフら延べ約150人が作成に参加した。

 歩いて確認した避難路や、町内の標高などを地図上に掲載。車椅子では避難が難しい高台への道や危険とみられるブロック塀の位置など、注意が必要な点も書き加えた。裏面には避難時のポイントなども。自治会が費用を負担して2500部発行し、1200部以上を配り、各地の掲示板にも掲示している。

 きっかけは3年ほど前、自治会防災部員の東海邦彦さん(76)が、横浜国大が発行した報告書で、逗子市は津波浸水被害を受ける可能性が県内でも非常に高いと知ったことだった。自治会として市に「沿岸部の津波対策に注力してほしい」と要望すると、市側から避難マップ作りを提案されたという。

 東海さんはマップ作成の過程を「実際にまちを歩いて向き合うことで、津波避難を自分たちの問題として捉え、住民同士の横のつながりもできた」と回顧。参加者からは、「新宿地区には津波避難ビルが少ない」「ブロック塀撤去などに取り組んでほしい」といった課題が指摘され、自治会が集約した意見を市に要望書として提出した。

 防災イベントや、大学と連携して津波避難用シェルターの試乗会なども積極的に開催しており、自治会防災部長の佐藤義男さん(69)は「このマップが、災害にどう備えるかを一人一人が考える取っ掛かりになれば」と話している。

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