「いつかの家の買い替え」に備えて今から始めておくべき“たった1つの習慣”

ひと昔前まで、家は「一生に一度の買い物」でした。しかし、現在ではライフステージの変化に合わせ、その都度、最適な住まいに買い替えていくケースも珍しくありません。

買い替えにおいて大事なポイントの1つが、現在の住まいをどうやって売却するか。前回の記事では、比較的早期に家を売りたい時に押さえておくべき点をご紹介しました。

今回は、まだ具体的に買い替えなどは決まっていないケースや、「いつか売るかもしれない」と、ぼんやり考えている段階の人たちに向けてお話したいと思います。


都市部では価格予測サービスを活用

家を買い替えるにあたっては、まず用意できる自己資金の額を正確に把握し、その上で新しく買う物件を決める流れが望ましいです。しかし、実際には「現在の家の価値」をあまりわかっていない人が多いようです。

そのため、買い替える物件を決めてから売却に出し、そこで初めて売却価格とローンの残債を相殺した「本当の自己資金」が判明するケースもあります。その結果、資金不足に陥ってしまうこともちらほら……。

そうした事態を避けるためには、具体的に買い替える予定がない段階から、「現時点での自宅の価値」を正確に知っておくことをオススメしたいところです。不動産も金融資産の1つとしてとらえ、貯蓄と同じように常に価格をチェックする意識を持つといいでしょう。

都市部のマンションであれば、比較的容易に価格をチェックする方法もあります。不動産会社や不動産系のIT企業が提供している価格予測サービスです。ウェブサイトなどで現時点での売却価格を無料診断してくれますので、まずは利用してみるといいでしょう。

今は売る気がなくても、まずは相談に

こうしたサービスは、不動産会社や不動産系のIT企業が将来のお客さんになる可能性がある人を集める手段の1つです。とはいえ、診断を受けたからといって、必ずしもその会社で売らなければいけないということではありません。

売る気持ちが固まっていないのに、査定だけしてもらうのは気が引けるかもしれませんが、企業もそれをわかったうえでサービス化していますから、問題ありません。もし、うしろめたいのでしたら「まだ真剣に売ることを決めているわけでないが、今の家の価値を知るために利用したい」と来店時やメールのやり取りで正直に伝えておけばいいと思います。

なお、実際に売却を決めてからの動きについては、前回の記事を参照してください。

地方に住む人はどうすればいい?

一方、悩ましいのは地方部のマンションや戸建のケースです。こちらは都市部のマンションと違い、一括で価格を予測してくれるサービスがあまりありません。少なくとも、精度が高いものは、私が知るところ見当たりません。

そのため、地方や戸建の場合は一定の取引実績がありそうな不動産会社に直接コンタクトをとり、相談に行くのがいいと思います。それこそ「気が引ける」かもしれませんが、「今の家がいくらなのかを知って、金額次第で買い替えるかどうかを決めたい」というのは決して非常識ではないと思います。

不動産会社も、将来のお客さんになるかもしれない相談者に対しては、相応の対応をしてくれるはずです。その際に怪訝な顔をする会社であれば、付き合わなければいいだけです。

逆にそこで親身になってくれる会社や担当者は、きっとあなたと相性がいいはず。将来、実際に売却する際にも心強いパートナーになってくれるでしょう。

「貸す」という選択肢も視野に

買い替えの際には、もう1つ視野に入れておきたい選択肢があります。それは、現在の家を売るのではなく「貸す」という方法。エリアによっては、売却よりも賃貸物件として貸したほうが、安定的に収益を得ることができます。

たとえば、売却査定価格800万円の家を売らず、月6万円で貸したとすると、年間の家賃収入は72万円です。10年ちょっと貸せば800万円の売却益とほぼ同じ収益が得られますし、その後で売るという選択肢もとれるわけです。もちろん築年数が経過すれば800万円よりは価格が目減りするでしょうが、それでも二束三文ということはないはずです。

欧米において、ローンを完済した不動産は「金の成る木」としてとらえられます。毎月の家賃という利息を生んでくれる資産と考え、売却よりも賃貸に回すケースが多いです。

ただし、残念ながら今の日本の不動産業界では「売却する際の価格」と「貸す場合の利回り」を一括で提案してくれる会社はそう多くありません。そのため、複数の会社に相談することになるかもしれません。

面倒かもしれませんが、それもすべて大切な資産をより有効に活用するためです。売り一辺倒ではなく、「貸す」も視野に入れながら検討してみることをオススメします。

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