三鷹、立川、国分寺… 「住みたい街」ランキングで中央線の人気駅が総崩れの理由

毎年恒例のリクルート住まいカンパニーがまとめた「SUUMO住みたい街ランキング」。今年は3月3日に、2020関東版の結果が発表されました。

3年連続で横浜が1位になったことや、昨年4位に躍進した埼玉県の大宮が、今年も順位をキープしたことが、メディアで多く取り上げられています。しかしその一方、昨年大幅に順位を上げた三鷹が今年はランクダウンするなど、JR中央線の駅で苦戦するエリアが散見されます。

人々が街に求めるものは、どのように変化しているのでしょうか。最新の住みたい街ランキングから読み解きます。


タワマン林立で物件価格が高騰

2018年の38位から昨年は16位へと躍進していた三鷹。今年は一転して33位にまで順位を下げています。立川も昨年の18位から今年は23位へとランクダウン。国分寺についても、今年は106位と昨年の82位から大幅に転落しました。

JR中央線沿線の三鷹から立川にかけては、小金井公園などの大型公園が整備されており、都市と緑がほどよく配置されているエリア。国立の有名校も立地しており、子育てに適した環境というブランドイメージが定着していました。

にもかかわらず、今回のランキングで順位を下げた背景に何があるのでしょうか。SUUMOの池本洋一編集長は、原因の1つに「マンション価格の異常高騰」があると説明します。

三鷹、国分寺、立川の駅前に高価格帯のタワーマンションが建設され、実際に売れたことが物件価格を引き上げているといいます。その結果として「住むのは現実的に厳しいかもしれない」という認識が生まれ、ファミリー層からのポイント低下につながったというわけです。

オフィス再開発が東京駅エリアに集中

「住みたい街」の前提となる、職場までのアクセスの利便性も影響しています。ここ数年はオフィスビルの再開発により、勤務先の場所のウエートが東側に移り、東京駅界隈に通勤する人が増加しました。

ランキング4位の大宮や、さいたま新都心、浦和など人気が急上昇しているエリアは、「上野東京ライン」と「湘南新宿ライン」で東京方面、新宿方面のどちらも直通でアクセスが可能。加えて、物件価格や家賃も手頃な点が支持されているといいます。

それに対して、三鷹以西の中央線の駅は、東京駅まで足を伸ばすにはやや遠い印象がある一方、物件価格や家賃は相応の金額がかかります。特にターミナル駅でもなく、沿線を代表する大都市でもない三鷹は、アクセスとコストのバランスの面で中途半端な立ち位置になってしまった可能性がありそうです。

また、住みたい街ランキングは、メディアでの取り上げられ方が順位に影響しやすい側面があります。特に三鷹に関しては、2018年にタワーマンションが2棟誕生し、三鷹の街の露出機会が増えたことなどが、昨年の順位の急上昇につながったようです。

中央線沿線人気に陰り

さらに、池本編集長は「大きな傾向として、中央線沿線の人気に若干の陰りがある」と語ります。特に若い世代で人気が低下しており、今年のランキングを年代別で見ると、20代だけ大宮が吉祥寺を抜いて3位に。「高円寺や阿佐ヶ谷に対して、今の20代があまり魅力的と思っていない。中央線カルチャーへの共感がなくなっているのではないか」(同)

池本編集長によると、他の世代と比べて若い世代で大きい比率を占めるのが、「ショッピングモール消費型」と「共感投資型」の2属性だといいます。

パッケージ化された中でコストパフォーマンスが高いものを追求するショッピングモール消費型の人々は、土地のブランドよりも、暮らしていくのに便利な場所を好むといいます。大宮や北千住、赤羽など、人気が近年上昇しているエリアは、この属性に支持されているといえそうです。

一方の共感投資型の人々は、SNSを通じたイベントやボランティア活動などに熱心に参加する「意識の高い」タイプ。この属性は、イベントの多く開催される都心部へのアクセスを重視するので、築古物件をリノベーションしたり、狭小の賃貸物件に住んだりと、都心に住むことにこだわります。

つまり、そこそこの利便性がありながら住宅費は割安で済む「郊外のターミナル駅」か、住宅費はかかるものの交通や商業の面で利便性の高い「都心の便利な駅」の2つに人気が集中。一方で、そうした特性を持っていない駅の人気が低下するという、新たな二極化が首都圏で起きているとみられます。

20〜40代を対象に調査している住みたい街ランキング。中央線沿線のように、土地のブランド力がありながらも、このどちらの属性からも選ばれない、「やや郊外」エリアに位置する街は、今後ランキングの順位を落としていく可能性があるそうです。

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