「陰に隠すのはもうやめよう」 生理への“意識革命”を目指して 2020国際女性デー

布ナプキンを縫う大原さん。「漏れが心配な人は紙ナプキンを下に敷いて、布ナプキンを使っても良い」と話す

 3月8日は国連が定める国際女性デー。女性の地位向上や差別撤廃について考える日です。それが実現する先には、性別にとらわれず誰もが自分らしく生きられる社会があるはずです。一方で、多くの女性には毎月の月経(生理)があり、否が応でも「女性」である自分と向き合うことになります。現代の女性たちにとって、月経はどんな存在なのでしょうか。恥ずかしいもの? 邪魔なもの? ジェンダーフリーの壁でしかないの? そんな疑問を込めて、県内の布ナプキン専門店を営む女性やアスリート、働く女性たち、そして、彼女たちの月経の悩みに寄り添う産婦人科医に話を聞きました。

◎「布なぷきん・布おむつ専門店 りぼん」代表 大原万里亜さん/神秘的で すてきなこと

 長崎市の繁華街の一角に、「布なぷきん・布おむつ専門店」を掲げる店「りぼん」がある。同店代表の大原万里亜さん(49)が、生理への“意識革命”を目指して7年前に開いた。「生理を陰に隠すのはもうやめよう」と発信している。

◆締め付けられた姿
 同店の生理用布ナプキンは、草木染の材料となるビワの葉などの収穫から大原さんらがかかわり、手作りしている。毎月500枚以上生産し、ネット販売もしている。店内にはカフェスペースもあり、ひっきりなしに訪れる客は、買い物のほか、布ナプキンを自分で縫うこともできる。最近は学校や企業で生理をテーマに講演する機会も増えた。

草木染で洗濯がしやすい布ナプキンが並ぶ店内=長崎市万屋町、りぼん

 現在の活動を始めた原点は、16年勤めた特別支援学校の教員時代。担任になった重度障害で寝たきりの少女が、布おむつを12枚もあてられ、さらに骨盤をさらしで締め付けられた姿に衝撃を受けた。
 「せっかくマンツーマンの環境なのだから」。大原さんは学校にいる間だけでもと、布パンツをはかせ、微妙な表情を読み取って、トイレで排せつできるように練習。周囲の医師らも驚くほど上達し、母親も泣いて喜んでくれた。「意思疎通はできない子だったけれど、意識を向けることで通じ合えた。体にとっての排せつの大切さも感じた」
 この体験がきっかけで、自分の体や感覚に意識を向けるようになる。夫の転勤で退職後、2年間移住した広島県尾道市で布おむつの使い方を伝える活動をするうちに、自分でも体感しようと布ナプキンを作って使い始めた。「びっくりするくらい経血量が減って、体の変化を感じた」

◆自分と向き合って
 長崎に戻ると自宅で布ナプキンのワークショップを開くようになり、集まる女性らとアイデアを出し合って2013年にりぼんを開店した。「女の人が毎月体験している生理を見えないことにするのは不自然。神秘的ですてきなことだと伝えたい」。ネットだけでなく、客と直接ふれ合える店頭販売にこだわったのには理由がある。
 りぼんには、生理痛や経血量、紙ナプキンによる肌のかぶれなど、さまざまな悩みを抱えた女性客がやってくる。大原さんが肌触りが良く温かい布ナプキンのストレス軽減効果や生理の仕組みをあらためて伝えると、なかには「次の生理が楽しみ」と言って帰る人もいる。
 「ネガティブなイメージの生理を、赤ちゃんのための準備と考えると、ごく自然に前向きに捉えられるようになる。生理は自分の女性性と向き合うツール。アロマをたいたり、紅茶を飲んだり、どうしたら自分がごきげんになるかを考えて、体をゆるめる時間にしてほしい」
 開店から7年目。女性だけでなく、男女のカップルや娘を持つ父親が来店することも増えた。「以前は店に入らずに外で待っていた男性が、恋人のために買っていったり、彼女の生理痛について相談したり。当初に比べると、男の人の意識の変化も感じる」
 近年は、ピルの服用で生理を自然のままではなく、調整して付き合う人が多くなった。「どっちが正しいというのはない。そういう時代だからこそ、この店が必要かなと思う。ここに来れば生理の話ができる、そういう場で在り続けたい」


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