ホンダN-WGNで東京~名古屋を往復、軽乗用車で高速ロングドライブは可能?

ダイハツのムーヴやスズキのワゴンRという強烈なブランドが占有していたハイトワゴンの中で、後発ながら頑張ってきたホンダのN-WGN。昨年8月に5年ぶりのフルモデルチェンジで全面改良されましたが、電動パーキングブレーキの製造上の不具合で生産停止……。ようやくここに来て生産が再開し、我々ジャーナリストも徹底テストすることができました。


N-WGNをロングドライブで使って見ました

数日前までランボルギーニだ、ポルシェだと、スーパースポーツカーを乗り継いでいたのですが、今週から我が家のガレージに収まったのはホンダのN-WGNでした。価格でいえばポルシェやランボルギーニの消費税よりもお安いのですから、どんな世界が待っているのでしょうか?

実はなぜかホッとしているんです。これで気軽に朝早くからエンジン始動できるし、狭めのガレージに気を遣うことなく家から乗り出せるし、スーパーにもコンビニにも食べ放題の焼き肉屋にも行けるんだと思うと、もの凄く肩の荷が下りた心地です。

そして、これからしばらくテストするN-WGNですが、ご存じの通り昨年8月に発売され、その直後に電動パーキングブレーキの製造上の不具合が発見されて生産停止となりました。短い試乗テストは体験しましたが、実際に借り出してのテストもしばらく停止。ようやく今年1月20日から生産再開となり、改めて生産モデルをメーカーから借り受けることができました。

もちろんホンダは部品メーカーとともに製造工程および品質保証体制を徹底して見直したということで、我々のテストも可能となりました。昨年の試乗会の段階でも「軽自動車としてというより、クルマとして魅力的だなぁ」と感じていただけにテスト再開は実に嬉しく、さっそくロングドライブに持ち出すことにしました。

目指すポイントは名古屋です。東京から片道350kmを走りきり、現地取材の足としても使用するというプランです。さっそくN-WGNのエンジンスタートボタンを押し、軽やかに静かにエンジンは始動したところで、問題の電動パーキングブレーキを解除して走り出したのです。

軽自動車には贅沢とも言われた電動パーキングブレーキ。特別に問題は感じなかったし、便利

我が家の周辺は住宅地ということもあり、4メートル道路やもっと狭めの路地などが入り組んでいます。もちろんアイポイントが高く、しかしスーパーハイトワゴンほど背高でもない、ちょうどいいサイズ感のN-WGNにとってみれば本領発揮です。

ACCを上手く使えば高速も楽々

余計な張り出しのないスクエアなデザインが特徴だが、同時に見切りがよくボディ感覚も掴みやすい

実はこの運転のしやすさはボンネットやボディサイドのデザインがスクエアなだけに、見切りがとてもいいのです。ボディ周りのデザインで目障りというか、デザイン優先のキャラクターラインなどもなく、実にシンプルでクリーンな印象のデザインが運転感覚にも生きているのかもしれません。

またAピラーを旧型よりも6ミリ細くしたということなのですが、「たった6ミリ」というなかれ。結果として視界が良好になり、ボディ感覚の掴みやすさも向上しています。これこそ旧型の時から感じていた利点でしたが、今回も狭めの路地でも少ないストレスで走れました。

操作性のいい計器類と視認性のいい室内

そんな住宅街を抜け、今度は環状道路の流れになります。今回はノンターボのノーマルモデルを選択したのですが、それでも山手通りや環七といった環状線で交通の流れに乗れずに苦労するということはほとんどありません。正直、信号待ちからスタートするときは、少しばかりエンジン音は高くなりますが、いかにも苦しげな状況にはなりません。時には流れを少しばかりリードできるほどスムーズに走ることができます。CVTのパワーバンドを上手く使った設定も悪くないし、加速感にじれったさがない。

パワフルなターボエンジンもあるが、こちらのノンターボでも十分な走り

さて、いよいよ首都高速です。軽自動車にとってけっこう緊張するのが走行車線へ合流ですが、ここでもしっかりと流れに乗ることができました。もし64馬力のターボモデルならもう少しスムーズというか、恐怖を感じることも少ないのでしょうが、58馬力のノンターボでも今回も恐怖を感じることなく、合流可能でした。

ここからホンダ自慢の渋滞追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)であるHonda SENSINGを作動させます。メインスイッチはステアリングホイールのスポーク部分にありますから、慣れてしまえば目視なしでも「MAIN」スイッチを押せます。あとは上限速度と車間距離を設定するだけという簡単なもの。

前車追従ですから少し混雑すればブレーキが作動し、前車が加速すればそれに追従して加速していきます。もちろん同時にでもLKAS(レーンキープアシスト)のスイッチも押して作動させます。これがあれば、クルマが車線を読み取ってハンドル操作を適切にサポートしてくれるので、私はほとんどの場合ACCのスイッチを押したらLKAのスイッチも押します。

350キロ走っても疲労感は少ない

首都高速から東名へ。いよいよ快適な高速クルージングです。実はこのN-WGNのシート、なかなかの出来具合です。体への当たり具合が均等で柔らかに感じるのですが、決してふわふわということではありません。体をしっかりサポートしながらも、どこか気になるような角を感じるような座り心地ではなく、快適なのです。

当たりソフトだがしっかりと体を支えてくれる座り心地のいいシート

またフロントシートの上下調整幅を30mm増やしたことによってドライビングポジションが決めやすくなったこともあり、この乗り心地と座り心地を生み出しているのだと思います。ペダルの配置も見直され、運転ポジションが適正に取れ、シートの出来がいいというだけで、ロングドライブの疲労感は軽減されます。果たして350キロ先ではどんな状態でしょう。

快適に高速ドライブが続きます。途中、横風が強い場面が何度かありましたが、こう言う時にレーンキープアシストが適正に車線中央を走るようにサポートしてくれるので助かります。軽自動車のように横風に弱いクルマにはACC以上に、この車線維持の機能は有用だと感じます。

ただし、ACCやLKAはあくまでも運転支援の装置であり、自動運転ではありませんから、「常にしっかりと前方、左右、そして後続車を確認しながらドライブしてください」などと言ってますが、なんともこの楽ちんな機能のお陰でチョット眠くなる頻度も多くなりました。軽自動車であっても時速80キロでの巡航は本当に快適に走れますし、制限速度が100キロになっても、その快適さはあまり変わりません。

視認性のいいシンプルなメーターや計器類

唯一変わるのは燃費と騒音です。やはり時速80キロで巡航しているときは平均燃費が25km/Lを越えるペースで走れるのですが、時速100キロが連続すると確実に25km/Lを割り、20km/Lを少し超える程度となります。さらに前車に追従しようとする際の加速が多くなってしまい、エンジン音がどうして高めになります。もしACCを使って快適でECOな走りをするのであれば、時速80キロぐらいに設定して走ることをお薦めです。

そんなテストを繰り返しながら、ゆったりと5時間。名古屋に到着しました。混雑気味の名古屋市街地でもACCは上手に利用します。N-WGNはノロノロとした流れにもピタリと合わせながら一定に車間距離を保ちながら走行できます。もちろん、完全停止までサポートしてくれますから、前走車に追従して停止できます。前車が動き出したら、復帰ボタンのRES(レジューム)を押せばまた追従を始めてくれます。渋滞時にもこれは便利です。そしてこの最新のホンダセンシングが1,298,000円から購入できるという点も嬉しいところです。

こうして目的のロケ現場に無事到着。軽自動車で名古屋往復というと、怪訝そうな顔をする人もいます。そんな人たちにこそ「一度やってみなさい、けっこう快適だから」とお薦めしています。名古屋ロケの取材中、愛くるしい丸型ヘッドライトを備えたフロントデザインで佇むN-WGNの可愛らしいスタイルが、どことなくたくましく見えました。

さて取材が終わったら、とんぼ返りで東京に戻ります。あまり苦に感じないのはなぜでしょう。

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