子連れも安心の海上釣り堀 社長の女性、随所に気配り

J’sフィッシングを運営する株式会社「城ケ島」の小村匠子社長

 神奈川県三浦市・城ケ島の海上いけす釣り堀「J’sフィッシング」が人気を集めている。城ケ島区が所有し、株式会社「城ケ島」が運営して、今夏でオープン5年。子ども連れや初心者でも安心して過ごせる工夫が随所に凝らされ好評だが、社長の小村匠子さん(31)は「まだまだ」と、地域活性化へ歩みを止めない。

 その釣り堀はゆらゆら揺れ、船の上にいるようだ。常時5~7種の魚がそろい、現在はマダイやシマアジ、カンパチなどが泳ぐ。30メートル四方に60席が並ぶが、土日になると満席になるほどで、家族連れのほか、若い女性たちも多く訪れる。利用者が地元で食事を楽しむ姿も見られ、地域経済の振興にもつながっている。

 小村さんは三浦市三崎地区出身で、高校を卒業し20歳ごろから城ケ島のマリーナで勤務。島民と交流する中で「高齢化していく中で若い人のために何かを残したい。観光客をもっと呼び、活性化できないか」という地域の声も耳に入るようになった。

 県の「新たな観光の核づくり構想」で選ばれ、城ケ島に釣り堀がオープンすることになったのが2015年のこと。周囲から誘われ、「とりあえず挑戦してみよう」と思い切って社長を引き受け、ほとんど未知だった釣りの世界に飛び込んだ。

 「釣り堀というと『怖いおじさんがいる』というイメージがあり、初めての人にとってはハードルが高い」。経営者として、女性グループや家族連れでも入りやすい、和やかな雰囲気になるよう気を配ってきた。小村さん以外のスタッフ4人は20代。初心者にも丁寧に、釣り方をレクチャーし、魚がいる場所や効果的なえさの付け方を助言する。

 「危ないから女の人はやらなくていいよ」─。かつては仕事を任せてもらえず、悔しさを覚えたこともあったが、今では「楽しんで帰ってもらえるよう気配りだけは誰にも負けない」と自負。子どもが飽きても一緒に休憩できるようベンチ付きのスペースを設置するなど、自分ならではの工夫に手応えも感じる。

 「これまで失敗もあったけど、(社長を)やってよかった。まだ成功じゃない。できることを提案し、まだまだ成長していきたい」。今後も地元とさらに協力して、釣り教室や婚活イベント開催など夢は広がっていく。

© 株式会社神奈川新聞社