新型コロナウイルスの感染が世界規模で広がり始めています。その動揺は株式市場にも押し寄せ、日米の株式相場も連日、大きく乱高下しています。
こうしたタイミングでは、個人投資家はなかなか株取引に手を出しづらいのは事実。一方で、混乱収束の先を見据えて、次の投資戦略を練るチャンスでもあります。
たとえば最近、インターネットや新聞などのメディアで「ブロックチェーン」という言葉を目にする機会が増えていることもあって、株式市場でもブロックチェーンに注目する投資家が増えています。そこで今回は、「インターネット以来の発明」とされるブロックチェーン関連の注目銘柄について、考えてみたいと思います。
そもそもブロックチェーンとは何?
ブロックチェーンとは、インターネットでつながった複数のコンピュータによって取引情報などのデータを記録・認証する仕組みのことで、簡単に言えば「データの改ざん(不正な書き換え)がほぼ不可能で、従来よりも低コストで安全性に優れた情報データの管理技術」のことです。
大型コンピュータによって取引データを集中管理している従来の仕組みと異なって、複数のコンピュータでデータを共有管理しています。そのため、ブロックチェーンでは
(1)データの改ざんが極めて困難になる
(2)取引のサービスが停止しにくくなる
(3)従来よりも低いコストで取引管理システムを構築できるなどの特徴があります。
一定期間の取引データをまとめて、1つのかたまり(ブロック)として記録し、これを鎖(チェーン)のようにつなげる形で管理していることから、「ブロックチェーン」と呼ばれています。
ブロックチェーンは国や企業に何をもたらすか
ブロックチェーンは、もともとは暗号資産(仮想通貨)「ビットコイン」の取引を支える技術として開発されたものです。ブロックチェーンに注目する理由は、ブロックチェーンの技術がさまざまな分野に応用が可能で、その活用が進むことにより、これまでの世界を変えるような新しい仕組みやサービスを生むインターネット社会の新たなインフラになるとともに、国や企業の生産性を高める大きな可能性を秘めているためです。
この仕組みを用いることでデータの改ざんが難しくなり、取引などの重要情報をインターネット上でどこでも誰でも安全にデータの記録や正しい情報を照会することが可能になります。
たとえば、市役所などで戸籍謄本などの書類を入手しようとすると、現在は戸籍謄本などのデータを管理している地方自治体に問い合わせなければなりません。しかし、ブロックチェーンの仕組みを使って戸籍謄本のデータを記録しておけば、地方自治体の管理者を経由することなく、書類にハンコを押す必要もなく、安全に正しく認証されたデータを取り出せるようになります。
ニューヨーク証券取引所では証券取引の決済にブロックチェーン技術を使い、改ざんのできない取引と記録が可能になり、多くの業務を自動化できたという実験の成功例もあります。
【ブロックチェーンの主な応用分野】
(出所)各種資料を基に岩井コスモ証券作成
金融分野での決済や送金、仮想通貨の取引などのほか、不動産などの資産管理や証明、医療情報の管理、商品の原材料から製造過程・流通・販売までの情報管理を行うサプライチェーン管理、ネットワークでつながる機器間での情報伝達を行うIoT製品など、応用範囲は広いです。加えて、スマートコントラクトという、ブロックチェーン上で自動的に契約の履行や解除を行う仕組みが生産性をさらに高めることになるでしょう。
ブロックチェーン関連の有望国内企業
経済産業省が2016年に発表した資料では、ブロックチェーン技術の活用による社会変革の可能性や産業構造へ影響を与える可能性を指摘しています。ブロックチェーン技術の活用によって、各企業における契約や取引の執行、決済、意思決定フローなどのバックオフィス業務の大半の効率化や全自動化が可能になるとしています。
同省では、サプライチェーンなどブロックチェーン技術の展開が有望な市場の潜在的な規模は67兆円規模と試算しています。日本経済の生産性を高める可能性を秘めるブロックチェーンに注目です。
【ブロックチェーン技術の展開が有望な事例とその市場規模】
(出所)経済産業省「平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備」を基に岩井コスモ証券作成
ブロックチェーンで注目する企業としては、ブロックチェーン技術を導入するためのソフトウェア製品を扱う日本オラクル(証券コード:4716)、貿易取引などへの適用を探っているNTTデータ(9613)、株式市場におけるブロックチェーン技術の適用実験を行っている野村総合研究所(4307)や富士通(6702)などが挙げられます。
電子契約サービスを展開する弁護士ドットコム(6027)、ブロックチェーン技術を使うゲームを開発するGameWith(6552)やモバイルファクトリー(3912)、ブロックチェーン技術を使う電子マネー開発を進めるGMO TECH(6026)なども注目したいところです。
<文:投資調査部 川崎朝映>