「コロナで中止」が商機に? 参加者ゼロのイベント配信サービスが続々登場

新型コロナウイルスの影響で、アーティストのライブや各種のイベントがことごとく中止に追い込まれています。

企業への影響も甚大です。春に向けて重要なこの時期、新製品の記者発表を控えていた企業も少なくありません。新卒採用でも3月1日から採用情報公開・エントリー受付が始まるタイミングでしたから、会社説明会を開催できなくなるなどの影響が出ています。

こうした中で、中止もしくは延期になったイベントを、参加者ゼロでネット配信するサービスもいくつか登場しています。


グノシーとYouTubeでライブ配信

情報キュレーションアプリ開発のグノシーとPR会社のサニーサイドアップが昨年秋に合弁で設立したGrill。グノシーのアプリユーザーを対象としたアンケート調査を実施する事業からスタートし、「グッテレ」という動画ニュース配信サービスも手掛けています。

このサービスは、企業がPRしたい情報を、Grillの記者がカメラマンを連れて企業に駆けつけ、取材をして編集し、ニュース動画にしてグノシーの利用者などに配信するもの。クライアントから対価をもらうので、報道ではなく広告の一種です。

そんな同社が3月4日、イベントのライブ配信の新サービス「グッテレLive」を始めました。メディアの記者や観客などのイベント来場者がいなくても、オンライン動画で記者発表会や会社説明会などの情報を届けられるサービスです。もともと構想があって開発を進めていたそうですが、急遽、当初計画より前倒しでサービス開始を決めたといいます。

動画はグノシーとYouTubeでの配信が基本。企業側が、記者発表会に呼ぶつもりでいた記者のリストをGrillに提供すれば、特定の記者にだけ配信することも可能です。このほか、就活生向けの会社説明会や、卒業式、入学式、オープンキャンパスなどの用途を想定しています。

料金は1動画コンテンツ当たり15万再生保証付き、10分程度のものの場合70万円程度。編集が必要なのかどうかなど、制作の仕方によっても変わってくるとのこと。まだ3月4日に受け付けを開始したばかりですので、これから構成を考え、撮影となると、実際に配信が始まるのは3月下旬以降になるそうです。

アーティストのライブも対象ではありますが、料金体系がハードルになるかもしれません。ただでさえ主催者はチケットの払い戻しによって重い経済的負担を抱えるはずですから、Grillのサービスは企業の会見代替用途のほうが馴染むのではないでしょうか。

3月いっぱいは無料で提供するサービスも

本来は初期費用14万円、月額3万円のサービスを、3月いっぱいは無料で提供するという会社も現れました。「イベントス」というサービスを提供している、イベントアプリ開発のbravesoftという会社です。

このサービスは、企業の展示会などのイベントをサポートするアプリ。会場内のフロアガイドや、人気ブースの待ち時間を知らせる機能、イベント後のアンケートの実施・分析機能などを搭載しています。

企業の展示会は定期的に実施され、次の展示会が開催されるまでの間は、会社のホームページ上で直近に開催済みの展示会のコンテンツを公開していたりします。こうした点が月額料金制に馴染むようです。

今回はライブ配信機能も付加したうえで、ひとまず3月いっぱいは無償で提供するといいます。この会社にとっては、サービスの採算よりもイベントそのものがなくなってしまうことのほうが重大な問題。無償提供することで使ってもらえて、サービスの有用性に気付き、有料に戻った時に利用してもらえるユーザーが現れることも期待しているそうです。

イベントの多様なあり方を模索するきっかけに?

ほかにも、投げ銭機能のついたライブ配信者向けツールを無料で提供することを宣言したZEROUMがメディアでも取り上げられて有名になりました。このように、記者発表をしたい企業にとって使い勝手がよさそうなサービスが相次いで登場しています。

リアルイベントは、製品をその目で見て実際にさわったり、新サービスを体験してもらうところに有効性が発揮されます。今回、企業は不本意な形でイベントの中止を余儀なくされているわけですが、動画配信サービスによってバーチャルならではの効果の発見につながる可能性もあります。

新型コロナウイルスの感染拡大は、社会全体が発表会や展示会の多様なあり方を模索するきっかけになるかもしれません。

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