第二十三回 戦国時代の掟から学ぶサバイブ術

THE BACK HORN 岡峰光舟の 歴史のふし穴

どうもこんにちは。3月ということで春感満載かと思いきや、まさかのコロナ旋風。目に見えないものはなんでも恐ろしく人間の無力さを感じますが、早く収束して欲しいものです…。

さて今回はそういうのとは全く関係なく、戦国時代の分国法や大名の家訓的なやつを拾ってみましょう。当時、日本各地に点在していた戦国大名。統一した法律的なものは無いに等しく、各々の「国」や「家」で法律や家訓を作って国や家の秩序を保とうとしました。その中には今の時代でも役に立ちそうな教えや、当時ならではなもの、全くとんちんかんなものまであるのでいろいろ探ってみましょう。

まず、武田信玄の『甲州法度之次第』より。

“よく知ってる人とでもみだりに雑談するな。「3回思って1回言葉にし、9回思って1回行動に表せ」と論語に書いてある。”

うん。これは論語がすごいですね。なんかためになる気がする。ペラペラ話して思いつきで行動する私は少し気をつけたほうが良いでしょう。

“合戦で死にたくないという気持ちのヤツはかえって討たれるもんだ。合戦では死ぬ気で挑め!”

はいはい。これもなんとなくわかるような。腰が引けてるヤツほどスポーツでケガするみたいなもんでしょうか。いや、違うか。

信玄の家臣で猛将でお馴染み、馬場信春も合戦においていくつか戦陣訓があったみたいで…。

(1)“味方の動きに合わせて立ち回れ。味方が優勢の時はそれに合わせて、逆に不利な時に一人で戦っても犬死にするし、下手したら味方から抜け駆けと見られる。”

たしかに。流れを見極めるのは大事ですね。周りを見る余裕もないと無理なことです。

(2)“味方の強いヤツと親しくなってそれを手本にしろ。戦いの時はその人に負けないように頑張れるから。”

自分よりできる人を参考にすることはいろんな仕事で活かせますね。ミュージシャンでも身近にライバルや尊敬できる人がいると、プレイも考え方もニュアンスに違いが出てきます。

(3)“敵の誰が重要人物か見極めろ。その敵と戦え。足軽とやり合っても手柄にはならんから。”

これもわかりますねぇ。中学の時に自分の学校で一番強いヤツがあっさり他校のヤツにやられたら、我々雑魚は即戦意喪失しましたもん。

(4)“敵の勢いが強い時は受け身で耐えて、弱ってきたら一気に叩け。”

これは普通ですね。そりゃそうだろ的な。

まぁ以上のようなことを肝に銘じて合戦に出れば不覚をとることはなかったようです。で、歴戦の猛者だった信春さんですが、長篠の合戦の時、武田軍の殿(しんがり)を務めて織田、徳川連合軍の猛攻をよく防ぎ、武田勝頼を逃して最期討死にしたそうな。

戦国の分国法として有名なのが『朝倉孝景十七箇条』です。応仁の乱以降の乱世をサバイブした孝景さんの教えを書いたバイブルです。「実力主義」「合理主義」「情報収集、管理の徹底」と非常に役立つ内容です。

“高価な名刀より普通の槍100本のほうがいい。”

“合戦に吉日、方角等迷信を気にするな。チャンスを逃すな。”

“有能で正直な部下に年3回領内を視察させ、百姓の訴えも聞き、改善すべきは改善しろ。たまに身なりや身分を変えてでも視察しろ。”

“近隣諸国の政治、技術、経済、地理交通を調べとけ。あと他所から来た浪人を書記役などに登用するな。こっちの情報がバレる。”

等々、非常に現実的でいつの時代に当てはめても通用しそうな家訓であります。

今川家の『仮名目録』も有名です。

“喧嘩をしたらどちらが正しい、間違い関係なく両方死罪。すなわち喧嘩両成敗。”

有名ですね。喧嘩両成敗。でもどのレベルからケンカなんでしょうね。ちょっとした小競り合い、夫婦喧嘩、兄弟喧嘩でも死罪だとしたら私などは1000回は死罪です。

吉川元春の『吉川家法度』は家庭の話にも食い込んできます。

“マジメに夫に尽くしたのに夫の不貞や勝手で離婚する場合、妻が持参した金はもちろん、夫の財産も納得するだけ持ち出せ。逆の場合は妻の持参金は夫のもの。”

なんとなく現代の夫婦間にもあり得そうな感じですね。逆に滋賀県六角さんの『六角氏式目』では、

“不倫した妻は相手ごと打ち果たせ。”

これは現代の日本では死者が多数にのぼりますね。

最後に家訓というかなんというか。松永久秀さんは夜の営みについてイラスト入りで指南書を書いてます。これは彼の経験と研鑽を積んだ成果と思われますが、面白いのがいくつかあります。

こんな営みは病気になるぞ! のコーナーから。

“老人になってちゃんと機能しないのに、無理して若いネエちゃんとやって射精すると、必ず目を悪くし、最後は失明するぞ!”

やべぇすね。失明は怖い!

こんな女と営むな! のコーナー。

“髪が黄ばみ、顔が黒ずんだ女”

まず髪が黄ばんだ、て状況がわかりません。顔が黒ずんだ女か〜。内臓やられてるのかな。あ、髪が黄ばんで顔黒いってコギャルじゃん!

“気が荒く、男のような声を出す女”

たしかに。これは負け戦な気がしますね。でも遠巻きに見てみたい気も…。

てな感じで戦国時代の掟的なやつ。イカがだったでしょうか。それではまた来月!

あ、次回で連載最終回です(照)。

挿絵:西 のぼる 協力:新潮社

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