新型コロナウイルスの影響で海外旅行をキャンセル、既に買った航空券は返金される?

新型コロナウイルスの感染拡大が連日、世界的な大ニュースになっています。感染拡大の中心地は中国でしたが、現在は全世界に広がり、南極を除く全大陸で感染者が確認されています。仕事や旅行など、この状況下での海外渡航をどう考えればよいでしょうか?


イスラエルなどが日本からの入国を制限

2月の後半以降はイタリア、韓国、イランでの感染拡大も深刻化しており、各国が封じ込めに動き出しました。米国のトランプ大統領と保健当局は2月29日、イタリア、韓国、イランから米国に入国する旅行者に対する制限措置を発表しています。

CNNテレビなど米メディアは、前日28日に入国制限の対象国に日本も含まれる可能性があると報じていましたが、3月1日時点では米国の入国制限対象に日本は含まれていません。ただ、この先日本国内で感染拡大が深刻化すれば、制限の対象になる可能性は否定できません。すでにイスラエルやモンゴルなど18カ国(3月1日時点)が日本からの入国を制限しています(下表)。

今後も日本からの入国に制限を設ける国が増える可能性もあるため、海外に行く予定のある方は、外務省のホームページなどで最新情報を確認することが重要です。新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間とされているため、直近14日以内に感染国に滞在していた人が入国制限の対象になることがほとんどですが、最終的な入国の可否は当該国の検疫官や入国管理官が判断します。

そのため、本来なら入国できるはずなのに、いざ到着したら入国拒否されるという可能性がないわけではありません。

世界一周旅行中の人にメールで連絡を取ってみたところ、「いまのところ、コロナの影響はこれといってありません。でも、この先どうなるかが心配です。私の場合、日本を出発してから2週間以上経っているので、ルール通りならセーフになるはずなんですが、一律に日本のパスポートを持っている人が撥ねられるようなことになったら困ります」と直近の滞在歴ではなく、国籍で判断されて入国できなくなることを危惧していました。

日系2社の対応

新型コロナウイルスの大流行が世界規模になり、海外旅行や出張を取りやめたり、日程を変更したりした方もいるのではないでしょうか。感染拡大がいつまで続くかわからないため、海外旅行の予定がある方やゴールデンウィークなどに旅行を計画している方も、気をもんでいることと思います。

渡航予定先がコロナウイルスの感染拡大を理由に日本からの入国を拒否する措置を取った場合、予約していた航空券やツアーの代金はどうなるのでしょうか?

JALとANAにそれぞれ問い合わせたところ、両社とも各国の出入国制限に伴うキャンセルや変更は運賃規則にかかわらず手数料なしで受け付けていると回答しました。また、両社とも入国制限の対象となった場合はツアーの取消料も免除としているため、ダイナミックパッケージなどを利用して航空券とホテルをセットで予約している場合、ホテルのキャンセル料も心配する必要はありません。ただ、旅行会社を通して予約を入れている場合は、扱いが異なる場合があるので、予約元の旅行会社への確認が必要です。

では、渡航予定先が特に日本からの入国を制限していない状況で、空港や機内での感染リスクを考えてキャンセルする場合はどうなるのでしょうか?

JALとANAは現在、特別対応を行っており、3月19日までのすべての日本発着便(2月28日までの発券分)の払い戻し手数料を無料としています(香港を含む中国発着便は別対応)。

通常、航空券の払い戻しや変更の手続きは、搭乗予定便の出発前までに済ませなければなりませんが、問い合わせ窓口への電話がつながりにくい状況が続いているため、両社とも当該便の出発後に払い戻しの手続きをすることが可能、としています。

渡航後の予定変更は可能か?

日系2社のような特別対応を行っていない航空会社を利用する人や、すでに海外に出発している人が帰国を早めたいというような場合はどうなるのでしょうか?

損保ジャパン日本興亜など海外旅行保険を取り扱っている保険会社は、渡航先に退避勧告などが出た場合には、帰国を早めるための航空券代など旅行変更費用が保証されるとアナウンスしています。

渡航先に退避勧告が出ているかが海外旅行保険の基準になっていることを考えると、日系2社の措置は極めて異例だといえます。対象航空券のキャンセルだけでなく、1回に限り日付の変更も無料で受け付けているので、日系2社を使って海外旅行中の方は旅行を切り上げて帰国することも可能です。

ただし、今回のJALとANAの対応はあくまで特別措置です。事態がいつ収束するか先が見えない状況で、先の海外旅行の予約を入れることには慎重になった方がいいと考えます。海外の航空会社やLCCが必ずしも同様の対応をしてくれる保証はありません。事態が長期化すれば、航空会社の経営にも大きなダメージが出ます。コロナ以前に、デモの影響を受けていた香港航空など経営危機がささやかれている航空会社もあり、そうなればキャンセル料以前の問題になってしまいます。

早めに予約が安く旅行するための鉄則ではありますが、新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかわからない今、どうしても海外に行く必要がある場合はある程度見通しが立った状況で航空券やホテルを抑え、柔軟な旅程を組む必要がありそうです。

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