ティーボールが導く野球普及 簡単ルールで子供も大人も楽しさを知るきっかけに

ティーボールは簡単なルールで子供も大人も楽しめる【写真:広尾晃】

既に小学校では「ベースボール型授業」が必修になっている

 ティーボールは、投手と捕手をなくして、ホームベース付近に置いたティーに載せたボールを打つベースボール型競技だ。当初は野球の普及や練習のために開発されたが、1988年に旧IBAF(国際野球連盟)と旧ISF(国際ソフトボール連盟)によってルールがまとめられ、正式競技となった。

 日本では1990年に国際ルールを一部改訂する形で、国内ルールが整備された。今では高齢者から子供までが楽しむスポーツとして広く楽しまれている。また、野球やソフトボールの入門スポーツとしても広く活用されている。

 2011年からは小学校教育で「ベースボール型授業」が必修となったが、ティーボールは簡便に行える「ベースボール型競技」として学校の授業でも行われている。

 野球のグラウンドだけでなく、校庭や体育館でも行うことができるのもいい。選手数は10人で、守備のポジションは9人。一塁、二塁、三塁、本塁を踏むと、それぞれ1点が入る。ホームランは4点だ。攻撃側の全員が打ち終わると攻守交替する。バットはプラスチックバット、ボールも柔らかいものを使用する。守備側は素手の場合もグラブをつける場合もある。

 また、幼児向けのティーボールはより簡単なルール。ベースを1つだけとし、往復すれば点が入るルールにすることもある。4つのベースを使う際も、守備側全員が打球付近にあつまってしゃがむことでアウトになる「ならびっこベースボール」というルールで行うこともある。子供だけでなく保護者も競技に参加することで、大いに盛り上がる。

 NPBは小中学校の教員を対象に「やさしいベースボール型授業」の研究会を全国で行っているが、ここでもティーボールが行われている。現在の20代、30代の教員の中には、野球に全く触れてこなかった教員も多い。「ルールや動き方がなかなか理解できなかったが、ティーボールを体験したことで、野球がどういうスポーツかがよくわかった」と話す教員もいる。

幼児のレベルでは「飛んでいるボールにバットを当てる」のは非常に難しい

 日本高野連は一昨年「高校野球200年構想」を発表し、高校野球部が小学校以下の子供に野球の普及活動を行うことができるようになった。小学校低学年や未就学児童に対する「野球教室」でもティーボールは非常に効果的だ。

 幼児のレベルでは「飛んでいるボールにバットを当てる」のは非常に難しい。トスバッティングでもバットにボールが当たらない子供がいる。そこで、ティーにボールを載せて、プラスチックバットで打てば「バットで打つ」ことを体験することができる。バットにボールが当たるようになれば、ティーボールを体験させるという流れになる。

 ティーボールをする上で注意すべきは、「振った後のバットの処理」だ。ゲームに夢中になってバットを投げてしまう子供も多い。危険防止のために、打席の横にサークルを描いたり、ボックスを置いたりして「打った後にここにバットを置いたら1点」というルールを導入することで危険防止につなげることができる。

 ルールがわかってくると、子供たちは思い思いにバットを振り始める。これも危険なので、指導者は「バットを振るときは気を付けて」と注意を喚起する必要がある。

 ティーは、カラーコーンを使ったり、野球用のティーを使用するのが一般的だが、勢い余ってコーン、ティーを倒してしまうことも多い。最近は、ボールをゴムの筒状の部分で柔らかく支えることができる「タナーティー」を使う場合も増えている。

 プレイヤーの数も自由に変えたり、ルールを臨機応変に対応することも可能だ。昔の「野球あそび」の感覚で野球の楽しさを体験できる、野球普及には極めて有効なゲームだと言えるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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