味方の援護に恵まれたのは誰? リリーバー“救援勝利”の価値を紐解く

日本ハム・宮西尚生【画像:(C)PLM】

最優秀中継ぎ投手はホールドと救援勝利数を足したホールドポイントで選出される

 先発投手と異なり、リリーフ投手にとっての「勝ち数」は、ネガティブなイメージを持たれてしまうことも少なくない。リードを守ることに失敗した直後に味方が逆転した場合も勝利投手の権利が得られることが、その主な理由だろう。

 しかし、同点時に無失点に抑えた直後に味方が勝ち越したケースのように、中継ぎとして勝利に貢献した結果として白星がつく場面もまた、確実に存在する。実際、最優秀中継ぎ投手を決める基準となる「ホールドポイント」も、ホールドに加えて救援勝利の数を合算して求められた数字となっている。

 とはいえ、勝ち星を手にするためには味方打線による援護点が不可欠であるという点は、先発投手であっても、リリーフ投手であっても変わりはない。そうなると、先発と同様、リリーフ投手の中にも打線の援護に恵まれていた投手が存在する可能性はあるだろう。

 そこで、今回はパ・リーグ各球団のリリーフ投手たちの「ホールドポイント」と「ホールド」の差、すなわち救援勝利の数を紹介。リリーフとして多くの白星を挙げた投手たちを確認するとともに、その数字が持つ意味について考えていきたい。

 まず、昨季のパ・リーグにおけるホールドポイントのランキングを紹介していきたい。その結果は以下の通りだ。(以下、所属は昨季終了時点のもの)

1位:44ホールドポイント
宮西尚生投手(日本ハム)
2位:41ホールドポイント
平井克典投手(西武)
3位:37ホールドポイント
モイネロ投手(ソフトバンク)
4位:33ホールドポイント
森原康平投手(楽天)
5位:32ホールドポイント
ブセニッツ投手(楽天)
6位:28ホールドポイント
甲斐野央投手(ソフトバンク)
7位タイ:27ホールドポイント
宋家豪投手(楽天)
松永昂大投手(ロッテ)
9位タイ:26ホールドポイント
ハーマン投手(楽天)
近藤大亮投手(オリックス)

ホールドポイント、ホールド共にパ・リーグ1位は日本ハム宮西

 続けて、純粋なホールド数のランキングも見ていこう。その結果は以下の通りとなっている。

1位:43ホールド
宮西尚生投手(日本ハム)
2位:36ホールド
平井克典投手(西武)
3位:34ホールド
モイネロ投手(ソフトバンク)
4位:29ホールド
森原康平投手(楽天)
5位:28ホールド
ブセニッツ投手(楽天)
6位:26ホールド
甲斐野央投手(ソフトバンク)
7位:25ホールド
松永昂大投手(ロッテ)
8位:24ホールド
宋家豪投手(楽天)
9位タイ:22ホールド
海田智行投手(オリックス)
近藤大亮投手(オリックス)

 NPBにおける通算最多ホールド記録を更新し続けている鉄腕・宮西が、ホールドポイントとホールドの双方でトップに立っている。パ・リーグのシーズン登板記録を更新する大車輪の活躍を見せた西武の平井がそれに続く2位となっており、上位の顔ぶれはどちらのランキングでもほぼ同じ順位となっていることがわかる。

 続けて、今回の議題である救援勝利の数について見ていきたい。2019年にホールドポイントのトップ10に入った投手たちの、ホールドポイントからホールドを引いた値は次の通りだ。

1位:宮西尚生投手(日本ハム)
44HP・43H=1
2位:平井克典投手(西武)
41HP・36H=5
3位:モイネロ投手(ソフトバンク)
37HP・34H=3
4位:森原康平投手(楽天)
33HP・29H=4
5位:ブセニッツ投手(楽天)
32HP・28H=4
6位:甲斐野央投手(ソフトバンク)
28HP・26H=2
7位タイ:宋家豪投手(楽天)
27HP・24H=3
7位タイ:松永昂大投手(ロッテ)
27HP・25H=2
9位タイ:ハーマン投手(楽天)
26HP・21H=5
9位タイ:近藤大亮投手(オリックス)
26HP・22H=4

 ホールドポイントとホールドの双方でリーグ1位を記録した宮西は、2つの数字の差がわずか1個と、目に見えて少なくなっていた。同じ左腕ではロッテの松永も差が2個と少なく、左打者を確実に抑えることが大きな役割となる左のリリーフであるが故に、対戦する打者数が少なくなりがちなところが白星の数にも現れているだろうか。

 そして、このランキングに入っていない投手たちを含めても、ホールドポイントとホールドに6個以上の差が生じた投手はパ・リーグには存在しなかった。すなわち、5個の差がリーグ最多の数字ということだ。そこで、各球団において、ホールドポイントとホールドの差が4、あるいは5個だった投手を、以下に列記していきたい。

ロングリリーフとして登板が多い投手ほど援護が多い?

5個:6名
平井克典投手(西武)
ハーマン投手(楽天)
ロドリゲス投手(日本ハム)
酒居知史投手(ロッテ)
唐川侑己投手(ロッテ)
椎野新投手(ソフトバンク)

4個:9名
堀瑞輝投手(日本ハム)
森原康平投手(楽天)
ブセニッツ投手(楽天)
増田達至投手(西武)
小川龍也投手(西武)
近藤大亮投手(オリックス)
エップラー投手(オリックス)
益田直也投手(ロッテ)
田中靖洋投手(ロッテ)

 以上のように、5個の差がついた投手は6名。この中ではハーマン投手と酒居投手が2020年から新たなチームでプレーすることが決まっており、両投手がそれぞれ新天地で見せる投球内容と、前年同様の援護を受けられるかどうかにも注目だ。

 いわゆる「オープナー戦術」を積極的に採用していた日本ハムでは、ロドリゲス投手と堀投手の2人がランクインしている。先発登板して4回までにマウンドを降りた試合で白星がつくことはないが、両投手はもちろんリリーフとして複数イニングを投じるケースもあった。また、チームは違えど椎野もロングリリーフ起用が多かった投手であり、やはり投げるイニングが長い投手のほうが、援護が得られる可能性は高いようだ。

 4個以上の差がついた投手をリーグ最多の4人輩出したのはロッテで、楽天と西武が3人でそれに続いている。これらの3チームはチームの年間得点数のトップ3でもあり(西武が1位、ロッテが2位、楽天が3位)、やはり試合終盤に打線がより多くの援護をもたらしていたようだ。

 ロッテはシーズン序盤に勝ちパターンを担った酒居と唐川、比較的ビハインドでの登板が多かった田中、守護神の益田と、さまざまな役割の投手が多くの救援勝利を挙げていた。それに対し、西武は小川、平井、増田、楽天はハーマン、ブセニッツ、森原と、それぞれチームの勝ちパターンを担った投手が白星を積み重ねていた。

過去にはリリーフだけで最高勝率のタイトルを獲得した投手も…

 勝ちパターンの投手に多くの勝ち星がつくのは、首脳陣からの信頼性の大きさ故に僅差での登板が多くなっていたことに加えて、それぞれ相手のセットアッパーから得点を挙げられる優秀な打線を擁していたからこそでもあるだろう。ロッテの場合は、シーズン序盤と中盤以降で異なる投手が勝利の方程式を構成していたことが、多くの白星を稼いだリリーフ投手たちの役割が多少ばらけていた要因の一つだろうか。

 2019年におけるホールドポイントとホールドの差は多くて5個だったが、過去にはリリーフとしての登板だけで2桁を超える勝ち星を記録した投手も存在した。中日で活躍した浅尾拓也(現2軍投手コーチ)は、2010年に先発登板なしで12勝を積み上げている。47個のホールドを含めて実に59ホールドポイントという驚異的な数字を記録。翌2011年には中継ぎ投手として史上初のシーズンMVPも受賞しており、チームの勝利に対する貢献度は特大だった。

 近年のパ・リーグにおいても、2010年に日本ハムの榊原諒が同じくリリーフ登板だけで10勝を挙げ、同年の新人王にも選ばれている。また、ホールドが公式記録として制定される前の数字ではあるが、1999年にダイエーの篠原貴行がリリーフとしての登板だけで14勝を記録し、敗戦はわずかに1つ。最高勝率の基準となる13勝をクリアして勝率.933という数字を残し、中継ぎ投手ながらパ・リーグの最高勝率となったケースもある。

 リリーフ投手の成績は、往々にして「○勝○敗○ホールド」のような表記がなされる場合が多い。役割的にもどうしてもホールドの数字に注目が集まりがちではあるが、白星とホールドが同じ試合で1人の投手に記録されることはない。ホールドポイントに含まれる救援勝利の数は、僅差で試合を繋ぎとめ、チームに貢献した証とも言えるのではないだろうか。

 2019年にパ・リーグの規定投球回に到達した投手はわずかに6名。投手分業が進みつつある現代野球において、リリーフ投手が登板しない試合はほんの一握りとなりつつある。そして、試合に勝利したチームからは、ルール上必ず勝利投手が1人選定される。先発だけでなく、リリーフ投手が記録した白星についても、チームの勝利への貢献度という意味においても、今一度注目されるだけの価値はあるのではないだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

© 株式会社Creative2