県内でサイクリングコースの整備が相次ぐなど、自転車が注目されている。ゆっくりペースで走り、立ち寄りスポットを紹介する。(鹿本成人)
人吉球磨地域で開催中の観光キャンペーン「人吉球磨は、ひなまつり」。うららかな球磨路を走りながら、ひな人形が飾られ華やぐ会場を巡った。
キャンペーンでは同地域の飲食店や観光施設など100カ所以上に人形が飾られているが、1日では回りきれない。そこで人吉市から湯前町まで延びる「球磨川サイクリングロード」沿いに見学することにした。
JR人吉駅(人吉市)の駐車場でマイカーから自転車を降ろして出発。まず、同市鍛冶屋町の「世界一小さな美術館チョビット」で、人吉東小の児童が作った人形を見物。どれも笑顔で、記者の頬も緩む。ちょうど見に来ていた同小2年の渡邉凛音さんは「作るのは楽しかった。友だちの人形も上手にできていました」。
近くの茶販売業、立山商店では、代々伝わる人形を展示。同店の立山まき子さん(63)は「県外からも多くのお客さんが来てくれます」と目を細める。
市街地を抜けて、見晴らしの良いサイクリングロードへ。平たんな道は走りやすい。空は青く、正面には市房山。風は冷たいが日差しは暖かく、ヒバリの声を聞きながら気持ち良くペダルを回す。
あさぎり町のポッポー館には、ひな祭りをモチーフにしたパッチワークなどが展示され、明るい雰囲気だ。人吉市から友人と訪れた平迫芳美さん(71)は、「毎年、見に来ます。作品ごとにいろいろな工夫があり、見ごたえがありますね」。
同町から国道219号を走り、多良木町の「交流館石倉」へ。飾り段が組まれ、見上げるように人形が並ぶさまは圧巻だ。町内の女性でつくる笑美寿[えびす]のびる会の弥永朝子さん(79)によると、同会が寄贈を受けた人形を飾っているという。
サイクリングロードの終点、くま川鉄道湯前駅(湯前町)近くのレールウイング展示体験販売施設では、天井からつり下げた「下げびな」や、干支[えと]をモチーフにした作品を楽しんだ。いずれも同町の女性グループ「ひなの会」の手作り。手仕事の温かさが伝わる。
ここまで走行距離は33キロ。おなかも減った。同施設の向かいにある「ユノカフェ」で、飲食キャンペーン「奥球磨どんぶりフェア」の「つみたていちごパフェ丼」を注文。ポン菓子にアイスクリームやイチゴがトッピングされていた。「米の上に具が乗っている。なるほど、丼だ」と納得しながら食べ、旅を締めくくった。
*「ひなまつり」、「どんぶりフェア」とも22日まで。一部施設は、新型肺炎の影響で休止中。
熊本日日新聞 2020年3月3日掲載