【3.11東日本大震災9年】新型コロナで追悼行事中止 風化危惧 誓う継続開催

一昨年の「追悼の夕べ」でキャンドルをともした参加者たち=2018年3月10日、横浜市中区の大通り公園

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、象の鼻パーク(横浜市中区)で10日に予定されていた東日本大震災の追悼行事が中止を余儀なくされた。2014年から毎年開いてきた「かながわ追悼の夕べ」。震災から9年となり、風化が進む中、主催者は「参加者は高齢の方も多いためやむを得ない。ただ、少しでも記憶にとどめたかった」と取りやめを悔やみ、今後の継続開催を誓う。

 実行委員会の主催。震災や東京電力福島第1原発事故の影響で県内に避難している被災者とともに犠牲者を悼もうと、6年前に始まった。毎年3月10日の夜に横浜公園、大通り公園(いずれも同区)などで開き、県民らも集って数百人規模でキャンドル点灯や黙とうを行い、避難者が体験を語る場を設けてきた。

 時の経過とともに、高齢のため県内避難後に亡くなった被災者を悼む意味合いも。参加者は他愛もない話に始まり、発生時の忘れられない光景、避難生活の苦悩などを共有してきた。

 「何年たっても変わらずに震災当時のことを振り返ることができる。たくさんの被災者と県民がこのイベントでつながってきた」。実行委の黒澤知弘さんは意義を強調する。

 中止決定後、実行委には避難者から「開催してほしかった」「このご時世だから仕方ない」といった声が寄せられたという。

 普段は被災者が原告となった裁判の弁護も担当する黒澤さん。「被害に遭った人たちの時計の針は震災発生時から止まったまま。当時と過ぎゆく日常とのギャップを埋める機会はこれからも必要」と話し、来年以降に向けて「絶え間なく開き続けることで、少しでも風化に歯止めをかけたい」と思いを新たにした。

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