自然エネルギーで稼働!海に浮かぶ酪農場「Floating Farm」を現地ルポ【オランダ】

オランダに暮らしていると、国民の発想力に驚くことが多々あります。農業分野でも、その発想力はいかんなく発揮されています。国土は日本の九州ほどしかない小国ですが、いち早く農業にも独自の発想力とテクノロジーを導入し、非常に効率よく農作物を生産しているのです。そのおかげで農作物の輸出量は、アメリカに次いで世界第二位を誇っているのだとか。そんなオランダのクリエイティビティが、酪農ジャンルに適用されたらどなるでしょう? 世界でも類を見ないオランダの「牧場」が話題になっているのでご紹介させてください。

海に浮かぶ酪農場

その牧場は、オランダ南部の港町、ロッテルダムに存在します。こちらが、海に浮かぶ「フローティング・ファーム」(Floating Farm)です。

現在このファームでは、32頭の乳牛が暮らしています。「動物福祉、循環性、持続可能性を重視し、消費者に近い都市で健康食品を生産すること」を目指して作られたのだそう。確かに都市に近いところで食物を生産出来たら、輸送にかかるエネルギー(ガソリンや輸送中の保冷に必要な電力)を削減できるので良いことばかりですよね。オランダの、こういう発想力は素晴らしいです。

ちなみに、牛たちはずっと水上に閉じ込められている訳ではありません。定期的に、目の前の野原に放牧してもらえています。さすが「動物福祉を重視する」と宣言しているだけあり、乳牛たちの生活の質にも配慮があるようです。自由があって良かったですね。

自然エネルギーで稼働するファーム

ファームのすぐ横には、このファームの電力をまかなうソーラーパネルが浮かんでいます。ここで、搾乳機や排泄物処理、1階の事務所で必要な電力を賄っているのです。環境にも配慮していることが伺えます。

乳牛たちがいるフロアの下には、スタッフたちの事務所が。

ここに、フローティング・ファームにまつわる様々な情報が公開されています。

誕生ストーリーとしては、発起人がアメリカで発生した深刻な洪水をニュースで見て、この海上の牧場のアイディアを思いついたのだそう。そのアメリカの洪水は物流の混乱をもたらし、市内のスーパーマーケットの棚は2日で空になりました。それが多くの人に大きなパニックを引き起こしたのだとか。食べ物ではなくマスクやトイレットペーパーでしたが、最近はコロナウィルスが引き起こす買い物パニックで、日本でも似たような光景が目撃されましたね。

けれど海上に農場を作れば、都市の近くでの生産を可能にすると考えたのだそう。

ちなみにこの事務所を訪れるだけなら無料で入れますが、上の乳牛たちのスペースを見学する場合はここで入場料を支払います。入場券代わりのリストバンドも可愛いです。

新鮮で美味しいミルクの販売

ファームの事務所では、乳牛たちのミルクとヨーグルトも販売されています。どれも濃厚で美味しいんです! 特にミルクの甘さに、きっと驚きますよ。ちなみに1本750mlで1.50ユーロ(2020年3月現在、約178円)です。試飲や試食も、気軽にお願いできます。このミルクは、ロッテルダム市内のスーパーにも卸しているのだとか。

敷地内には、ミルクサーバーの設置も。近所に住んでいたら、定期的にここのミルクを購入できるんですね。羨ましいです!

この海上ファームの成功次第では、同じく海上養鶏場や海上農園などの計画も控えているのだとか。流石、オランダはチャレンジングです! これからも、この海上プロジェクトの発展を楽しみに見守りたいと思います。

Floating Farm

住所:Gustoweg 10, 3029 AS, Rotterdam

公式ホームページ: https://floatingfarm.nl/

見学は金曜日と土曜日の11時~16時のみ

[All photos by Naoko Kurata]

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