五島列島沖にマッコウクジラ 寿命70年、巨大な頭

ドローンで撮ったタグ蔵(左)とロガ蔵=五島列島沖(長崎大学海棲哺乳類研究室提供)

 頭が大きくて四角いクジラと言えば、マッコウクジラ。実は長崎県五島列島沖の深い場所に、1年間の一定期間すんでいることが近年の研究で分かってきました。国内でも珍しいマッコウクジラの専門家、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科博士課程の小林駿(こばやし・はやお)さん(28)に、どんな生態なのか、どんな研究をしているのか聞いてきました。

“マッコウクジラ博士” 小林駿(こばやし・はやお)さん

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 クジラは歯を持つハクジラと、持たないヒゲクジラに大きく分けることができます。マッコウクジラはハクジラの中で一番大きく、歯を持っている動物の中でも世界最大。大人のオスは体長約18メートル、重さ約45トン、メスはオスより一回り小さく体長約12メートル、重さ約15トンになります。
 歯の内部に年輪のような成長層が刻まれていて、それで年齢を知ることができます。寿命は約70年と言われています。

【写真】マッコウクジラの歯

 巨大な頭は体の約3分の1。頭の内部の大部分は「脳油(のうゆ)器官」などと呼ばれる油が占めていて、音を出す時に調整する道具のような役割を果たしています。音を出したときの跳ね返りで周りの生物との距離を測ったり、仲間とのコミュニケーションをとったりするという説があります。
 その音は、パソコンのマウスをクリックしているような「カチカチッ」という音に似ています。最大で数十キロ先まで届く強い音だそうです。
 メスと子どもは暖かい海域で一緒に暮らしています。一方、オスは家族から離れていきます。マッコウクジラは世界的に分布しており、日本では和歌山県沖や東京都の小笠原諸島などで確認されています。
 マッコウクジラは水深400メートル以上潜ります。約40分間潜り、息つぎのために7、8分間海面に浮上します。この行動を1日繰り返し、眠る時は縦向きになって寝るそうです。餌は主に深海にすむイカや魚。体長6~10メートルと言われるダイオウイカもペロリと食べてしまうそうです。


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