“新型コロナ感染者”と『デマ』拡散 始まりはツイッター... 被害者「噂は暴力のよう」 専門家「SNS発達と不安が要因」

今、感染不安であらぬ噂「デマ」が広がる傾向にあり、専門家が注意を呼びかけています。「新型コロナウイルスに感染した」とのデマを流された長野県松本市の会社社長がその恐ろしさを語りました。

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小林創建・小林稔政社長:

「事実無根のことなのに、噂って事だけでこれだけ広がるのが本当に怖い、恐ろしい」

松本市の建築会社・小林創建の小林稔政社長。デマに悩まされた一人です。始まりは、先月27日のツイッターへの書き込みでした。「長野県内のコロナウイルス感染者を特定した。松本市にある小林創建っていう会社の社長とそのご婦人だそうで」

先月25日、県内で初めて松本保健所管内に住む男性の感染が確認され、その翌日には妻の感染も確認されました。

小林創建・小林稔政社長:

「長野県で初の感染者が出たというニュースが流れた次の日から、その感染者が当社の人間じゃないか、そこから尾ひれがついて、私自身が感染者じゃないかという風評が流れ始めて」

27日の書き込みは事実無根。いわゆる「デマ」でした。感染した男性が60代で既婚者なのに対し、小林社長は46歳で独身。それでも地元の人までもが…。

近所の住民:

「(Q.そういう、噂流れてきました)流れてきました。(Q.誰から聞いた)個人個人(の間)で話していて、ちらっと聞いた」

会社名も記されていたため、やがて取引にも影響が出始めたと言います。

小林創建・小林稔政社長:

「このままいくと会社がつぶれてしまうんじゃないかという恐怖を覚えました」

小林社長は弁護士に相談し、会社のホームページに「事実と異なる」と記載。今月8日には自費で地元の新聞などに広告を出しました。

小林創建・小林稔政社長:

「広がった噂というのは自分の力ではなかなか、コントロールができない。ある意味、暴力みたいなことで恐ろしいことだなと」

感染拡大への不安から県内でもこれまでにデマが広がりました。今年1月、飯山で感染者が確認されたとの噂がインターネット上で広がりました。県や市が調べたところ「体調不良の外国人観光客が病院を受診し抗体検査を受けたところ陰性だった」というのが事実でした。

(記者リポート)

「開店からちょうど1時間たちましたが、棚にあったトイレットペーパー全てが売り切れてしまいました」

トイレットペーパーの品薄も「トイレットペーパーの原料は中国産でこれから不足する」というツイッターの書き込みから、買いだめする人が増えたのが始まり。業界団体が「十分に在庫はある」とデマを打ち消す事態になりました。

デマは、なぜ広まるのか?専門家は「SNSの発達と収束が見えない不安な状況が要因」と指摘しています。

信大地域防災減災センター・菊池聡センター長:

「言葉やSNSで発信したときに、デマでも(多くの人が)共有することで不安に形がつけられる。デマを流すことで不安が軽減される」

デマに惑わされないためには…。

信大地域防災減災センター・菊池聡センター長:

「一つは(情報の)出所は確かなのか、根拠はあるのか。情報の出所が公的な機関だったりするのかというところを確かめてみる。もう一つがその情報に矛盾はないか。常識を持って情報の中身を吟味して外にある情報源をチェックする。こういったことを心がけるとある程度、デマは見分けられると思う」

収束が見えない新型コロナウイルスの影響。感染予防の他にデマを見極める冷静さも求めれられています。

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