夢舞台「行きたかった」 創成館ナイン 見えない敵に涙

選手に選抜高校野球大会の中止決定を知らせる稙田監督(右端)=諫早市、創成館高野球場

 球児たちの夢舞台は幻と消えた。11日の臨時運営委員会で初の中止が決まった選抜高校野球大会。「残念やけど、中止や。誰が悪いわけではない。長い人生の中で、こういうこともあるということ。ほんとつらいけどな」。2年ぶりに出場予定だった創成館高(長崎県諫早市)の稙田龍生監督(56)は選手たちにこう伝えた。
 喜びの“春の便り”から一転、新型コロナウイルスという見えない敵と戦い続けた。学校生活や他の部活動はストップ。他競技の大会も軒並み中止となったが、日本高野連は4日に「無観客での開催へ準備」という方針を示した。これを受けてチームは練習を継続。この日も報道陣を前に汗を流して協議の結果を待った。
 稙田監督から報告を受けた選手たちは涙ぐみ、唇をかんだ。「これが最後じゃない。気持ちを切り替えるのは難しいけど、夏に行くしかない」。指揮官の呼び掛けに、いつもよりも小さな「はい」が静かなグラウンドに響いた。
 「高校野球だけ特別か」という世間の声もある中、選手は決定を大人に委ね、不安と戦い、目の前の一球に集中してきた。上原祐士主将(17)は「目標だった場所だから悔しいし、行きたかった。夏に全てを懸けたい」。言葉を詰まらせながら、気丈に前を向いた。
 チームは12日から活動を休止。今後も他競技とともに「いつ再開できるのか」という懸念は残る。稙田監督は「正直、今は何も考えられない。日にちがたたないとどうしようもない」。県高野連の黒江英樹理事長(57)は「現状を考えれば仕方がない。どういう形でも甲子園で、という何かしら励みになるような救済措置があればうれしい」と話した。

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