巣立ちの日、思い交錯 横浜市立中で卒業式

例年より間隔を空けて並べられた椅子に座る卒業生=横浜市立南戸塚中学校

 横浜市立中学校148校のうち145校で11日、卒業式が行われた。新型コロナウイルスの感染拡大で、保護者や在校生の出席は見送られ、時間も短縮。喜び、寂しさ、無念、悔しさ…。さまざまな思いが交錯する巣立ちの日となった。

 市立南戸塚中学校(同市戸塚区)では、3年生176人が卒業を迎えた。式典会場の体育館には感染防止策として、間隔を前後1メートル、左右30センチ以上空けて椅子が並べられ、マスクを着用した卒業生が着席した。

 石黒裕校長が一人一人に卒業証書を授与。来賓のあいさつは省略し、卒業生の歌も曲数を減らした。

 石黒校長は祝辞で、中学校生活の最後を臨時休校に奪われ、式も規模を縮小せざるを得なくなった事態に「卒業とはどういうことか考える大切な時間を与えられなかったこと、あなた方の姿を保護者や在校生に見てもらえなかったことを申し訳なく思っている」と陳謝。9年前の同じ日に起きた東日本大震災に言及し、「生き続けようと思ってもかなわなかった人がいた。命を大切に、今後の人生を歩んでください」とエールを送った。

 卒業生を代表して登壇した内田夏輝さん(15)は休校を告げられた時の心境を「心臓をぎゅっと握られたように苦しくなった」と回顧。演劇などを披露する学年集会も中止になったことに無念さをにじませつつ、涙ぐみながら、共に巣立つ同級生に「またいつか笑顔で同じ扉を開く日を待っています」と呼び掛けた。

 式終了後、馬場愛梨さん(15)は「式ができたのは、先生方が頑張ってくれたおかげ。本当に幸せ」と笑顔を見せた。一方、平野幹人さん(15)は「晴れ姿を親に見せられず、残念」と語った。

 式には出席できなかったが、多くの保護者が校庭に集まり、成長したわが子と記念撮影をした。ある母親(48)は「出席できない寂しさが日に日に募り、今は悲しいし、悔しい」と打ち明けた。

 市教育委員会によると、148校の卒業生は計約2万5900人。残りの3校は20日と24日にそれぞれ卒業式を行う。

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