社員が新型コロナウィルスに。そのとき会社はどのように対応すればいい 社員が新型コロナウィルスに感染した際の会社の対応方法について

By 島田直行

連日報道されている新型コロナウィルス。早期の収束を願うばかりですが目途はたっていません。もしも社員が新型コロナウィルスに感染したら企業としてはどのように対応するべきでしょうか。想定できる事項について整理してみたので参考にしてください。

感染が発覚した場合に就業はどうなるのか

まず社員が新型コロナウィルスに感染した場合に就業がどうなるかについてから検討していきます。新型コロナウィルス感染症は,2月1日付で指定感染症として定められました。指定感染症とは,感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で「まん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの」として政令で指定されたものです。

これにより都道府県知事は,就業制限や入院の勧告などのまん延の防止に向けた措置を取ることができるようになります。社員に対しても都道府県知事から就業制限がなされることになります。企業としては,自社の判断で就業を禁止するというよりも感染法による就業制限に基づき休業という扱いになるでしょう。

なお休業と休職は似たような言葉ですが意味が違います。

休業というのは,会社と社員の労働契約が継続している状態で休暇を連続してとることです。会社側の都合によって休業することもあれば社員側の都合で休業することもあります。

休職とは,会社として特定の社員を業務にあたらせることが不適切あるいは困難と判断した場合に業務を一定期間停止させることです。休暇の連続というものではありません。

感染した場合に社員の賃金はどうなるのか

社員が私生活のなかで感染したとしましょう。この場合には会社の責任によって感染したわけではありません。そのため会社としては,あくまで私病として扱うことになるため就業規則などに特別の定めがない限り休業手当を支払う必要はありません。社員が有給の利用を求めてきた場合には,これを認めてしかるべき金額を支払うことになります。もっとも会社が社員の意向に関係なく一方的に有給扱いにすることはできません。

社員が感染したか未確定であり自主的に休業した場合も基本的に同じ扱いになります。ただし会社が一定の症状があるというだけで一方的に休ませた場合には,会社の責任で休業させたことになるため休業手当を支払う必要がでてきます。実際の企業運営では「可能性がある」と企業が判断すれば休業手当を支払ってでも社員に検査をしてもらい確定的な判断をもらっておくべきでしょう。

次の社員が業務において新型コロナウィルスに感染した蓋然性があるとしましょう。この場合には労災認定がされる可能性があります。もっとも感染ルートは目に見えるものではありません。実際に業務によって感染したということを明らかにすることは容易ではないです。労災申請をしたものの労災認定されないことも多いのではないかと個人的に考えています。

社員の家族が感染したとき休業させることはできるか

家族が新型コロナウィルスに感染したとして社員から仕事を休みたいという相談も当然想定されます。この場合にはあくまで社員の自発的な判断で休むわけなので会社として休業手当を支払う必要はありません。社員としては有給休暇の活用などを検討していくことになります。

これに対して会社から「しばらく自宅で待機してください」ということであれば,会社の判断で社員に休んでもらうことになるため休業手当を支払う必要があります。

こういった家族が罹患したことによる社員の休業はインフルエンザなどの場合にもあてはまります。

なにかあれば事務所までご相談ください。

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