生活苦から再婚したけれど…自力で二人の子どもを育てる37歳女性の決意

母子世帯の平均年収は、2016年の厚生労働省の発表によれば243万円。一方、父子世帯は420万円。これだけでも母子世帯の生活がどれほど大変かがよくわかります。賃金格差がある以上、早く再婚して子どもたちに不自由をさせたくないと願う母親が多いはず。ところが再婚させすればうまくいくとは限りません。


離婚して一気に生活が苦しくなった

コズエさん(37歳)は、28歳で結婚、30歳で娘をもうけましたが妊娠期間中に夫が不倫していたことがわかり、悩んだ末に離婚を選びました。出産後も夫の不倫はやまず、ストレスから育児を放棄しそうになった自分が怖かったと言います。

「離婚にあたって養育費も取り決めなかったのは、とにかく夫と早く別れたかったから。でもそれは失敗だったと思っています。もっときちんと慰謝料や養育費を決めるべきでした。ただ、あのときはそんなことさえ考えられなかった。自分の精神状態をよくすること、娘をきちんと育てるためにも夫から早く逃げたかったんです」

一時期、娘を連れて実家にいましたが、実家はすでに兄一家が同居しており、いづらい環境でした。そこで娘が2歳になるころ、子連れで入れるシェアハウスに。

「居心地はいいし、いつも誰かがいるので娘にとってもよかったと思います」保育園に預けて仕事をしていましたが、非正規で年収も低く、貯金もあまりできません。どうしたら収入がアップできるのかもわかりませんでした。

「そんなとき、仕事先で知り合ったのがバツイチ子どもなしの3歳年上の男性でした」

再婚はしたけれど…

つきあっていくうちに、正社員である彼と結婚し、自分も他でパートなどすれば普通の暮らしができる。コズエさんはそう思うようになりました。34歳のとき再婚、35歳で男の子を産みます。

「夫は娘のこともかわいがってくれていたんです。だけど自分の子ができると、娘と弟をあからさまに差別するようになりました」

最初は下の子が小さいから、彼にとっては赤ちゃんは初めてだからと自分自身に言い訳をしていた彼女ですが、ある日、決定的な場面を見てしまいます。

「娘がなにげなく弟に触れようとしたら、夫が『汚い、おまえはあっちに行ってろ』と娘の手をはねのけたんです。娘は明らかに夫に対して怯えていました。私は飛び出していって、夫を突き飛ばしてしまいました。娘を汚いと言った夫を許せなかった。夫は『子どもの手はきれいじゃないだろ。この子にばい菌をうつしたらどうするんだ』と言い訳していましたが、そんな感じの言い方ではなかった。明らかに娘自身を汚がっていた」

コズエさんは、そのとき夫と決別すると決めたのだそうです。あのままだったら、いつ娘が暴力にさらされるかわからなかったから。たとえ収入が少なくても、娘とふたりきりでがんばるべきだったと後悔もしました。

子どもふたりをひきとって離婚

結局、彼女は子どもふたりをひきとって離婚します。下の子は夫が引き取ると言ったのですが、彼女は手放すことができませんでした。

「私が育てると言ったら、夫は案外簡単に納得しました。もともと子どもにはあまり興味がなかったのかもしれません。私が生活のために再婚を急ぎすぎて、どういう人間かをきちんと見なかったのがいけなかった」

7歳になる娘と2歳になる息子を抱え、コズエさんは別のシェアハウスに入居しました。夫からは毎月、少しですが養育費が入ってきますが、彼女の収入は相変わらず低いまま。

「周りの人たちの応援を得て、今は週に2回、スナックでアルバイトもしています。ママがいい人なので、私の心のよりどころですね。お客さんも、ときどき『パチンコでとったんだけど』とお菓子をもってきてくれたりして。私の負担にならないようにしながら気にかけてくれているのがわかってありがたい」

前を向いて

下の子がもう少し大きくなったら、彼女は公的な職業訓練校に通うつもりでいます。そこで手に職をつけて転職を考えているのだそう。

「2度の離婚を経て、結婚すれば何もかもうまくいくわけではないと痛感しました。2度も離婚しなければわからなかったのは私のミスですが、代わりに宝物を2人も得られた。これからは自分の道は自分で切り開いていくつもり。もちろんめげそうになることもありますが、ラッキーなことに周りにたくさん味方がいる。人の助けを借りながらがんばっていきます」

最後はさわやかな笑みを浮かべたコズエさん。以前に比べると、表情が明るくなったと言われるそうです。男女の賃金格差がなくなり、母子家庭の母親がもっと収入を得られる方法があればコズエさんももう少しラクになれるのにと思わざるを得ません。

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