【相模原殺傷】極刑で「一区切り」、でも戻らぬ命 遺族ら気持ち晴れず

判決の感想を述べる尾野剛志さん=16日午後3時すぎ、横浜市中区

 入所者ら45人が殺傷された津久井やまゆり園事件の裁判員裁判は16日、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(30)に極刑が宣告された。発生から3年7カ月余り。1月から17回、計50時間近くにわたった公判の終結に「一区切りついた」と遺族や尾野剛志さんら被害者家族は求刑通りの結論に安堵する一方、気持ちは晴れない。事件があぶり出した障害者差別、命に優劣をつける思想が、なおもこの社会に根深く潜在しているから。

 甲Eさん=当時(60)=と呼ばれる姉を亡くした男性(61)は、黒いネクタイを身に付けて法廷でそのときを待った。「想像通りの判決だった」

 全17回の公判はほぼ欠かさず傍聴した。法廷で読み上げられた供述調書で、姉の最期の様子を初めて知った。60年生きてきて命を突然奪われ、不憫との思いが募った。

 だが、植松聖被告を憎んでも姉は戻ってこない。極刑の判決を言い渡されたその横顔はどこか悲しげに見えた。「公判でも若い彼はむきになり、自分の主張を押し通した。その人生も終わる。やはりかわいそう」

 事件から3年7カ月余りがたち、風化が懸念される。「事件を機に、障害者が安心して暮らせる世の中になれば」。社会の変化に期待を寄せる。

 ほかの遺族からは談話が寄せられた。

 「当然の結果。悲しみは変わらないけれど、一つの大きな区切り」。娘の美帆さん=同(19)=を亡くし、悲嘆にくれた母親はそれでも前を向く。「19の命を無駄にしないよう、自分のできることをしながら生きていこうと思う」

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