自営業や子育て世代は特に注意したい「働けないリスク」への備え方

平均寿命の伸びとともに定年延長の議論が進められており、これからは長い期間働く時代がやってきそうです。そこで懸念されるのが、想定外の病気やケガです。もしも仕事を長期間休むことになれば、今の生活を続けられなくなる可能性があります。

安定した生活のためには「働けないリスク」への備えが大切です。万一のときにも困らないように、役立つ公的保障制度の存在や、自分に合った就業不能保険の選び方などを知っておきましょう。


自分が利用できる「公的保障制度」は?

病気やケガで働けないときに頼りになる公的保障の代表として、「障害年金」や「傷病手当金」が挙げられます。しかし、自営業者と会社員とでは受けられる公的保障が大きく異なるので、自分の場合はどうなのかを把握しておくことが大切です。

(1)自営業や専業主婦の場合
自営業者や専業主婦、学生等は、障害等級1級や2級に該当した場合に障害基礎年金が受け取れます。

(2)会社員や公務員の場合
会社員や公務員も、一定の障がい状態になると障害年金が受け取れます。障害基礎年金に障害厚生年金が上乗せされるため、自営業者などよりも支給額が多くなります。また、障害等級3級でも対象となるなど、保障される範囲が広いです。

加えて、勤務先で健康保険に加入している会社員やパートは、連続して会社を休んで4日目から最長1年6カ月まで、給料のおよそ3分の2の金額にあたる傷病手当金を受け取ることができます。

そのほかにも、有給制度や会社独自の福利厚生制度が使えることや、労災保険から休業補償給付や障害補償給付などが出ることがあります。もしも会社を退職したとしても、再就職活動中は雇用保険から失業手当を受けることもできます。

休業時の収支をイメージしてみよう

下記の休業時の収入イメージを表した図を参考に、公的保障だけで生活が続けられそうか想像してみてください。収入の減り方が抑えやすい会社員なら、扶養してくれる家族がいる場合や、すぐに生活費を減らすことができる場合には、なんとか乗り切れるかもしれません。

しかし、収入の減り方が大きい自営業者は公的保障だけでは不安が残りますね。また、住宅ローンの支払いや教育費の支払い、配偶者を扶養しているなどの理由があって支出を減らしにくい子育て世代も注意が必要です。

<図 休業時の収入のイメージ>

資料:執筆者作成

働けないリスクに備える「就業不能保険」

公的保障で足りない分をカバーする方法としては、民間の保険会社が販売する「就業不能保険(または所得補償保険)」があります。日本では比較的新しい保険なので知らない人も多いでしょうが、アメリカやドイツでは広く普及している保険です。名称が似ていますが、死亡や高度障害時に保険金が受け取れる「収入保障保険」とは違うものです。

就業不能保険の保障内容は保険会社によって異なりますが、保険会社が指定する就業不能状態になったとき、契約時に指定した年齢までお給料のように毎月一定の給付金額を受け取れるものが一般的です。

就業不能保険は長期間の就業不能に備える保険であるため、基本的には「支払対象外期間」があります。60日や1年6カ月と設定されている商品もあれば、4日などの短期間に設定されている商品もあります。

保険料を抑えながら就業不能保険を選ぶためのポイント

就業不能保険は自分の状況に合ったものを選ぶことが大切です。保障が手厚いほど保険料も高くなりやすいので、家計とのバランスも見ながら複数の商品を比較して選びましょう。

(1)給付金の支払い条件は自分の希望と合ったものを
商品によって給付金の支給条件が異なるため、給付金の支払い条件が自分の希望と合っているかをよく確認することが大切です。主な基準は、「医師の診断(就業不能状態が終わると給付金の支払いも終わる)」「身体障害者手帳の交付」「障害年金の認定」「要介護の認定」「特定の疾病を発症」などです。また、精神疾患は保障対象外となる商品も多いので、よく確認しておきましょう。

(2)保険期間は退職するまでがキホン
保険期間は60歳~70歳満了に設定し、働く期間すべてをカバーするのがおすすめです。ただし、収入が減少しても家族内でやりくりできそうな共働き夫婦などは、住宅ローンの支払いや子育てが終わる時期に合わせて50歳~60歳満了にしても良いでしょう。

(3)保障金額は必要最低限の不足額にしよう
保障金額は、現在の収入金額と自分が受け取れる公的保障の差額が目安となります。働けなくなったときに減らせる支出(家賃やレジャー費など)や増やせる収入(配偶者が働くなど)があれば、それらを考慮して保障金額を決めると保険料が抑えやすいです。

(4)健康体なら死亡保障の特約で備えるのも有効
就業不能保障は、収入保障保険などの死亡保険の特約で備えることもできます。収入保障保険は非喫煙者や健康体の人は割引価格となる商品が多いので、合わせて加入することで保険料が抑えやすくなります。

「貯金」や「副業」も立派なリスク対策になる

就業不能保険は保障条件が限られるうえに免責期間もあるので、決して万能とはいえません。そのため、ちょっとした病気やケガには「貯金で備える」という意識を持つことも大切です。貯金は災害や失業などのあらゆる万一に役立つので、必ず備えておきたいものです。

また、「副業」を持つこともリスク対策になります。副業があれば収入の減り方が抑えやすいですし、転職や再就職のときに役立つこともあります。

公的保障や民間保険、貯金や副業などをうまく組み合わせて、働けないリスクに備えておきましょう。

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