「エサをくれる観光客激減で猿が暴れている」はデマだった! 異国の出来事を良いことに「いいね」欲しさの妄想ツイに注意せよ!!

この画像はイメージ写真です

タイでは観光地の猿も新型コロナウイルスの影響を受けたとのニュースが3月13日に日本でも報じられました。

猿が観光名物となっているタイ中部のロッブリーで、新型コロナウイルスの影響で観光客が減少し、普段は観光客が与えるエサを食べていたサルが飢えて1本のバナナをめぐり数百匹が争奪戦を道路上で繰り広げ住民を驚かせたというものです。

このニュースはもちろん現地でも報じられました。しかし経緯の説明がいささか違うのです。

まず全ての報道のきっかけは3月11日にロッブリー在住の男性Sasaluk Rattanachaiさんがフェイスブックに投稿した2本の動画と3枚の写真です。

投稿には「ロッブリーの猿が大喧嘩を始めました。猿の群れはさながら犬の群れのよう。撮影しながら足がゾクッとした」というコメントも添えられていました。

この投稿が1万1千回シェアされ大きな話題に。その日のうちに大手新聞社やテレビ局がSasalukさんに取材を申し込み、現地住民に事情を聞いたうえで報道しました。

明らかになった事実はこうです。

猿の大喧嘩が起きた現場には3つの猿の群れがあります。交差点と国鉄の線路を挟んで東にある廟に千匹、北西のクメール遺跡に2千匹、南西の商店街・市場に2千匹です。住民は毎日それぞれの群れのエサ場にエサを置いています。

しかしこの日の朝8時、ある住民がリアカーに積んだ飲むヨーグルトと果物を廟には置いたものの、クメール遺跡のエサ場には置きませんでした。その様子を目の当たりにしたことから不満に思った遺跡の群れが廟のエサ場へ向かいますが、すぐに追い返されてしまいました。

ところが3時間後、態勢を整え直した遺跡の群れが廟の群れに反撃。そこに商店街の群れも加わり道路の交通を止めるほどの大乱闘が約5分間続いたというのが事実でした。

確かにこのような大喧嘩は滅多に起きませんが、エサのほとんどは住民が与えるもので、観光客数には影響されていません。5千匹のエサを観光客が与える食べ物だけで賄えるはずもありません。

この日は気温が40℃にもなり、猿の気が立っていたのも原因だろうとの話もあります。

新型コロナウイルスの影響による観光客減で飢えたことで1本のバナナの奪い合いをしたからと断定した報道は、少なくともしっかり取材をした現地の大手では目にしません。

日本のメディアの記事は、おそらく動画を目にした海外メディアが憶測で書いた英語記事を鵜呑みにして報じたものだと思われます。(取材・文◎赤熊賢)

© TABLO