ハンドリング性能を高めたA110S! ベース車に比べて95万円高の価値はあるのか?|アルピーヌA110S試乗

アルピーヌ A110S

軽量化・専用タイヤなどA110をさらに磨き上げた

アルピーヌ A110S
アルピーヌ A110S

「精度」をキーワードに造られたアルピーヌ A110Sが行った改良ポイントは多岐に渡る。一見しただけで理解できるのはカーボンルーフの採用。シートもSabelt製のモノコックバケットシートを奢ることで、1脚あたり13.1kgに抑えたという。それ以外にもタイヤサイズが前後共に10mmワイドになったことで安定感を増したルックスを手に入れていることが伝わってくる。

ちなみにタイヤ銘柄は変わらずミシュラン・パイロットスポーツ4。専用構造、専用コンパウンドを採用したとあるが、決してサーキットアタッカーを造ろうとしたわけではないようだ。

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40馬力アップ! 足まわりも専用チューン

アルピーヌ A110S

一方で見えない部分にもかなりの手が入っている。足まわりは前後共に引き締められ、ベースモデルと比較するとスプリングレートはフロント30→47N/mm、リア60→90N/mmに変更。アンチロールバーも10→15N/mmへと強化。車高も4mmダウンとしている。

エンジンは最大出力を40PSアップの292PS、トルクは320Nmと同様ながら、最大トルク発生領域を上に1500回転ほど広げているところがポイントだ。

エンジンの伸びが超気持ちいい!

アルピーヌ A110S

その進化を確認するために、まずはベースモデルをシッカリと乗り、感触を掴んだ上でA110Sを走らせる。すると、まず感心したのは伸び感を増したエンジンだった。

ベースモデルでは高回転へ行けば行くほど苦しいイメージがあるが、A110Sはレッドゾーンまでの爽快な吹け上がりが感じられるのだ。そして何より速い! 最高出力発生回転が420rpm高くなったこと、そして最大トルクが最高出力発生回転数である6420rpmと同様なことが効果を発揮しているのだろう。とにかく気持ちの良いエンジンに仕上がっている。

アルピーヌ A110S

シャシーは明らかに引き締められ、微操舵した状態からキビキビとした応答をみせ、安定のコーナーリングを展開してくれる。ドライバーがピッチやロールを細かく操らずしてイージーにドライブできることも興味深い。

乗り味は少々硬い傾向にあるが、これくらいなら一般道でも十分にこなせるレベルだろう。その安定感あるシャシーをハイパワーエンジンがやや追い越し、ドライバー次第でスライドを作れる環境を持っているところも絶妙だ。

楽しさではA110に軍配だが、サーキットなど極限領域ではA110Sだ

アルピーヌ A110

ただし、スポーツバージョンが誕生してベースモデルが霞むかと言えば答えはノーだ。「楽しさ」というキーワードが最も似合いそうなA110のドライビングの魅力も今回は改めて確認することができたからだ。

A110Sに比べればロールやピッチが大きいその動きは、ドライバーの操作次第でいかようにでも動かせるという面白さがある。しなやかな足でロールやピッチを頼りにワインディングロードを楽しむのも悪くない。要は最終的には好みの問題だろう。「精度」vs「楽しさ」。これがA110SとA110の違いといっていい。充実のラインアップで、ユーザーにはまた新たなる悩みが生まれそうだ。

【筆者:橋本 洋平/撮影:茂呂 幸正】

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