阪神退団からロッテ移籍― 同じ道を歩む鳥谷と今岡2軍監督 「野球を楽しんでほしい」

巨人2軍との練習試合に「3番・遊撃」で出場したロッテ・鳥谷敬【写真:荒川祐史】

最大の理解者「タイガース時代に背負っていた物を1回外して」

 今月10日にロッテ入りが決まった前阪神の鳥谷敬内野手が、17日に巨人2軍との練習試合(浦和)に「3番・遊撃」でスタメン出場し“実戦デビュー”を果たした。打っては3打数1安打、3度の守備機会もゴールデングラブ賞5度の名手らしく華麗に捌いた。そんな鳥谷のそばに、頼れる理解者がいる。

 当面、鳥谷を預かる、今岡真訪(まこと)2軍監督。1軍の井口監督とは同い年で、ともに大学時代の1996年にアトランタ五輪日本代表として銀メダル獲得に貢献した頃から盟友として知られるが、鳥谷とも阪神で二遊間、もしくは三遊間コンビを組んだ。

 今岡2軍監督と鳥谷の野球人生は共通項が多い。今岡2軍監督は1996年に逆指名、鳥谷は2003年に自由獲得枠で、阪神にドラフト1位入団。今岡2軍監督は04~05年、鳥谷は10~11年に選手会長を務めている。今岡2軍監督も05年に打点王に輝くなどスター選手として活躍したが、09年限りで戦力外通告された。翌10年には春季キャンプでテストを受けてロッテに入団し、3年間現役を続けた。鳥谷は現在の1軍最低保障額で昨季年俸4億円の25分の1にあたる、今季年俸1600万円でロッテと契約したが、今岡2軍監督も阪神からロッテに移籍した際、年俸は1億5000万円から10分の1の1500万円に激減した。

ロッテ・井口資仁監督(左)と今岡真訪2軍監督(12日撮影)【写真:宮脇広久】

移籍後、初実戦を終えた鳥谷「しっかり自分の課題と向き合える時間は多いのかな」

 その今岡2軍監督は「トリ(鳥谷)には、阪神時代に背負っていた物を1回外して、純粋に野球少年のように、野球を楽しんでほしい」と実感を込めて言う。

 阪神は巨人と並び、注目度が他球団とは桁違いで、特有の重圧、ストレスがある。今岡2軍監督は「トリはこっちに合流した時から、いい意味で阪神時代と違うオーラがある。タイガースでは、背負う物が大きかったと思う。阪神にいたら、野球を楽しめ言うてもね、『楽しめるかぁ!』というハナシですよね」と笑わせた。

「僕なんかとは、背負ってきた物が違う。僕は(阪神での)最後の何年間かはずっと補欠でしたが、彼はずっと1軍にいて、僕にはわからない世界を経験してきている」とも話すが、現在の鳥谷の心境を誰よりも理解し、寄り添える人だろう。

 実際、鳥谷は阪神時代との違いについて、「自分が来た最初(ロッテに合流した12日)は人(報道陣)がたくさんいましたが、一昨日は誰もいなかった。誰も見ていない所で練習することは嫌いじゃない。“楽”という表現がいいのかどうかわかりませんが、しっかり自分の課題と向き合える時間は多いのかな、と思います」と穏やかな表情で言った。

 鳥谷は少なくとも22日までは今岡2軍監督のもとで試合に出場し、1軍昇格をうかがう予定。“虎の重圧”から解き放たれた男は、今後どんな表情を見せ、どんな成績を残すのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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