明治生まれの桃開花 往年の名産地横浜・綱島 暖冬で最速

咲き始めた日月桃の花=横浜市港北区

 明治時代に誕生した桃「日月桃(じつげつとう)」を横浜・綱島で唯一栽培しているという桃農家「池谷(いけのや)桃園」で、濃いピンクの花びらが開き始めた。第16代当主の池谷道義さんは「開花後に雪が降るなど気温が下がったので、今年は花持ちが良いはず」と顔をほころばせ、「見ごろは今週末。桜や菜の花と共に楽しんで」と話している。

 暖冬の影響で“最速”の11日に開花した桃の花は、池谷さんの曽祖父・道太郎さんが開発を重ね、1907年に生み出した日月桃と呼ばれる品種。実は6月中旬ごろに収穫・出荷される極早世で、香りが高く、甘酸っぱい味覚が特徴。誕生当時は、東京・日本橋の千疋屋総本店などの高級店でも好まれた。

 日月桃は道太郎さんが全国に苗木を配布したことで一気に普及。「東の神奈川、西の岡山」とうたわれ、二大産地の一つとして知られた。しかし、38年に発生した鶴見川の氾濫による畑の壊滅的被害や、戦争などの影響で衰退。現在では池谷桃園のみが、その歴史を守っている。

 2千平方メートルの敷地では、日月桃のほか白鳳など60本を栽培。毎年、開花を楽しみにしている人も多いといい、公道から撮影したり、写生している人の姿もみられる。

 詳細は池谷桃園公式サイト(http://peachgorf.life.coocan.jp/)。

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