研究:生物多様性は保護区域によって十分に守られていない

どこに国立公園や鳥獣保護区などの保護区域を作るか選別する際は、一般的に異なる種の動物たちが高密度で存在するスポットを探すことになる。しかし、新たな 国際的な研究によると、このアプローチは哺乳類の生物多様性の保護に不十分である。

その研究は、どれだけ多くの種が特定の区域に生息しているかを超えて、進化の歴史の多様性と、動物がどのような方法で生態系を運営しているかを考慮するという、生物多様性のより広い視点の必要性を強調する相次ぐ証拠の一部だ。それぞれ「系統学的」、「機能的」多様性として知られるこれらの生物多様性の「次元」は、種の多さとともに、効果的な保全計画において考慮されるべきだ、とブラジルのゴイアス連邦大学とリオグランデ・ド・スル連邦大学の生物学者であるFernanda Brumは言った。

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種、系統学、機能的な生物多様性において重要なエリアの間の重なり(茶色)、現在の保護区域ネットワークのエリア(緑)、そしてすでに保護されているエリアとの重なり(オレンジ)。画像とキャプションはBrumら2017による。

「我々が種の豊富さに基づいてエリアを選択するとき、我々はそれら他の多様性についてとらえていると仮定することはできません。」、と米国科学アカデミー紀要で公開されたその研究の主著者であるBrumは言った。

「現在の保護区域ネットワークは、それらの異なる次元をとらえた最適な場所には設置されていません」、と彼女は付け加えた。

Brumと彼女の同僚たちは、人類が系統学的、機能的多様性に影響を与える経路を考察してきた。そのことは、国立公園や他の保全区域の既存の配置が生物多様性のスペクトラム全体の砦として機能したのかどうか彼女たちを不思議に思わせた。

その疑問に答えるために、彼女たちはこれらの異なる生物多様性の様相の位置を地図に落とし込んだ。彼女たちは4,500種以上の哺乳類の生息地を示し、14の明確な哺乳類の特性の位置を探した。それらの特性とは、生態系での機能的役割を決定する助けとなる食べ物、寿命、そして生息密度などの哺乳類の生態的側面のことだ。

進化的なコンポーネントのために、彼女たちは系統樹を用い哺乳類の関連性に基づいてスコアリングした。

他の動物たちから最も遠い枝に位置する動物たちは、最も固有な進化的歴史を表している。

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ボルネオのオランウータン(Pongo pygmaeus)。写真:John C. Cannon

そして、彼女たちは最も生物多様性の各次元が最も集中しているそれぞれ上位17%の場所を比較した。2011年に日本の愛知での生物多様性条約第10回締約国会議は2020年までに地球上の17%が保護されることを目標として設定している。

アマゾンやパプアニューギニアのようないくつかの地域は予想通り三つの生物多様性のタイプ全てにおいて高いレベルであった。しかし、研究チームは種、系統学的、機能的多様性において優先すべき区域は世界的にみると大きく異なっていることを発見した。

実際には三つすべての様相が重複するのは地表のわずか4.6%であった。

この研究に参加していないロンドン動物学会(Zoological Society of London)の生態学者であるOliver Wearn「これは私たちがまさに予期していた結果でした」、と語った。「種の豊富さ、系統学的な独自性、そして機能的な独自性における多様性は全て異なるものであるため、私たちは異なるパターンを予期していました。」

研究者たちがこれらの区域を現状の国際自然保護連合国連環境計画計画との保護区域と比較すると、数字はさらに低かった。現在、わずか1%の陸域の保護区が3つの多様性の様相を含んでいるだけであった。

「この結果は保全計画への課題を示しています」、とBrumは語った。「もしできるだけ多くの多様性の様相をとらえたい場合、我々はどのようにするでしょうか?」

これらの新たに確認された保護区域のカバレッジのギャップは一つの出発点だ、と彼女は語った。世界の陸域の約14%が現在保護されており、保護されていない3.6%の追加は、地表の17%を保護するという愛知目標達成に向けた長い道のりになるかもしれない。

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タンザニアで撮られたアフリカゾウ(Loxodonta africana)。写真:John C. Cannon

「彼女たちは、あなたが例えば同じ種や、同じ機能をもつ場所を二度も保全したくないという事実を説明しました。」、とWearnは語った。「私はこれら全てが一度になされたことがあるとは思いません。」

今、課題はその他の重要な検討に持ち込まれている、と彼は語った。

東南アジアやマダガスカルの森林のような、最も緊急の保護が必要なスポットを明確にすることが重要であったことにつけ加えて、「保護区域を設立する機会費用を組み込むことが次の主要なステップになるだろう」、とWearnは語った。

この研究はどこを保全するかを決定するための一つの側面を反映しているものだ、とBrumは語った。

「保護区域の設立は生物学的な意志決定よりもむしろ政治的な意思決定です」、と彼女は言った。「あなたは社会経済的な課題を抱えており、経済活動での対立を抱えており、その場所を保護するために政治的な意思を必要としています。そのため、これは単に生物学的な情報を組み込むよりも難しいことなのです。」

「これは、単にこれらの場所を見て、そこで何が起きているのか、なぜこれが重要なのか、そしてこれらの場所でどのような対立が起こりうるのかを知るための最初の地図なのです。」

引用元

  • Brum, F. T., Graham, C. H., Costa, G. C., Hedges, S. B., Penone, C., Radeloff, V. C., … & Davidson, A. D. (2017). Global priorities for conservation across multiple dimensions of mammalian diversity. Proceedings of the National Academy of Sciences, 201706461.

バナー画像はJohn C. Cannonによるタンザニアのチーター。

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