再生可能エネルギー、139カ国に動力供給?科学者「不可能ではない」

クリーンかつ再生可能なエネルギーは、急速に進む地球温暖化を食い止められる限りない可能性を持っている。しかし石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の使用を大幅に止めない限り、それはただの「可能性」に過ぎない。

そして今回、学術誌「Joule」に発表された新論文は、139カ国において完全に再生利用エネルギー源へと移行させるための方針を考え出し、さらに気候変動の減速/防止、大気汚染の減少、雇用の増強、経済の活性化等も踏まえて世界的な構想を練っている。

「政策立案者は大抵、合理的に可能であると証明されている科学でもない限り何かすることへの約束をしたがらない。そのため、私たちは可能性を証明しようとしている」と、論文の筆頭著者で、スタンフォード大学・土木環境工学科の教授であるマーク・ジェイコブソン氏は声明でこう述べた。

ピュリナ工場の太陽光発電所。写真:ピュリナの従業員の提供によるもの/CC BY-SA 3.0, via ウィキメディア・コモンズ 表示‐継承3.0

私たちにとって欠かすことのできない輸送機関、電気、農業への動力供給がますます増加し続ける中、どのように太陽光、風力、水力発電によってそのエネルギーの渇望を満たすことができるのかを考え出すために、ジェイコブソン氏は研究本部へと向かった。

研究者らは2050年までに139カ国 (これらの国が世界の二酸化炭素排出量のほぼ全体を占めているため) において、クリーンエネルギー源へと100%移行させた場合の可能な限りの影響について考えた。また、研究チームは国ごとにクリーンエネルギー源の可能性について調べ、同様に風車 (風力タービン) や太陽光発電所などのインフラ開発の場所をどこに定めるべきかについても検討した。

彼らは水力発電 (水の流れを利用してエネルギーを生み出すことが問題視されることもしばしば) の技術が、2015年の時点から変わっていないと考えていた。

ところが、水力発電に関する研究のほとんどが気候変動の減速を目的とした、炭素を放出しないエネルギー源への移行に焦点を当てている。今回の研究は幅広い観点からクリーンエネルギーの移行について考えた。

「二酸化炭素排出量の削減、地球温暖化を摂氏1.5度未満に抑える、大気中から二酸化炭素を直接取り除くプロセスの開始などの問題は別として、クリーンエネルギーへの移行は大気汚染の死亡者数を年間400~700万人減らすことができ、さらにフルタイムの長期雇用を2400万件以上創出することができる」と、ジェイコブソン氏は述べた。

論文の著者は再生可能エネルギーによって節減できるコストが、インフラの設置に掛かる費用をはるかに上回ると予測する。写真:Dirk Ingo Franke氏 (自作)/ ウィキメディア・コモンズ 表示‐継承2.0

ジェイコブソン氏とその同僚は、再生可能エネルギーという急成長しつつある分野での雇用が、エネルギーを切り替えることで失われる雇用を補償すると予測している。彼らはまた、化石燃料を燃焼し続けることで発生する大気汚染にかかる費用が今世紀半ばには年間22兆8億ドルになると算定し、気候による影響にかかる費用はさらに28兆5億ドルが加算されると推定する。

「今回の研究結果は再生可能エネルギーの利点があまりにも多いことから、化石燃料システムを撤退させられる所があればどんどん撤退させ、できる限り速く風力、水力、太陽光への転換を促進するべきということを示唆している」と、カリフォルニア大学バークリー校の研究技師で、論文の著者でもあるマーク・デルッチ氏はこう述べた。

「基本的に追加費用をかけることなく、ゼロエミッション型エネルギーシステムによって莫大な社会的利益をあげることができるだろう」と、彼は声明に追記した。

再生可能エネルギーソリューションの制定は、一様に容易とは限らない。米国や中国など人口密度が低い国では、再生可能エネルギーの発電所に充てるための十分なスペースがあると著者は考える。土地に余裕がない国については創造力をより働かせなければいけないだろう。

評論家はこの計画に対して、再生可能エネルギーに100%置き換えればその過程で莫大な費用がかかり、多額の資金が必要となると主張していた。しかし論文の著者は、従来型のエネルギーにおいて必ず必要となる整備および交換費用を資金の一部に割り当てることができると反論する。さらに、この提案はただの始まりに過ぎないとジェイコブソン氏は述べた。

「他にも方法はある」と彼は述べた。「再生可能エネルギーへと移行させる方法が一つしかないとは言っていない。ただ、事例を挙げて人々に理解してもらいたかった」

コロラド州ボルダ―・ロッキーマウンテン研究所 (RMI) のマーク・ダイソン氏 (今回の研究には携わっていない) は、「この論文によって、科学界、政界、ビジネス界の間で脱炭素経済に向けた構想・計画についての話し合いを推し進めることができる」と、「Joule」の同紙面にこう書き記す。

「科学界が世界的に低炭素エネルギーへの移行の具体化を進めることは、エネルギー源の移行が可能であるという強い証拠を与え、さらに移行するにあたっての具体的なさまざまな手段に対する理解を高める」と、Dyson氏は追記した。

CITATION

Jacobson, M. Z., Delucchi, M. A., Bazouin, G., Bauer, Z. A., Heavey, C. C., Fisher, E., … & Yeskoo, T. W. (2015). 100% clean and renewable wind, water, and sunlight (WWS) all-sector energy roadmaps for the 50 United States. Energy & Environmental Science, 8(7), 2093-2117.

*このビデオは「セル・プレス」の提供によるものです。スタン・シブス氏による風力発電所のバナー画像。[ウィキメディア・コモンズ 表示\-継承3\.0](https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ATehachapi_wind_farm_3.jpg)[
(GFDL)](http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)*

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