2017年には世界の温室効果ガス排出量2%増と新調査が推定

11月17日に閉幕したドイツのボンで行われた国連気候変動会議(COP23)の代表団は、地球規模の気候変動の抑制に向けて前進したいと語った。しかし、たとえ世界の国々が(少なくとも有名なある一国を除いて)世界気温を2度かそれ以下に留めるというパリ協定の目標達成に着手したとしても、世界の炭素排出量引き下げという点ではいまだ危機を脱していない、ということがこの週に出た調査結果で分かっている。

2000年代を通して、産業活動や化石燃料燃焼による世界の二酸化炭素排出総量は年平均3パーセント以上増加した。しかし、2010年代になってその増加は減速し始めた。全体的な上昇傾向に反し温室効果ガス排出量は2014年から2016年にかけて過去3年間横ばいし、やっと気候に配慮した軌道を取り始めたという慎重なる楽観論の原因を作った。しかし、グローバルカーボンプロジェクトおよびイースト・アングリア大学からの新しい調査報告では2017年末までには温室効果ガスの排出量は2%上昇してしまっているだろうと推定している。

ノルウェーにあるオスロ国際気候環境研究センターCICEROの上級研究員であり、報告書の共同筆者であるロビー・アンドリュー氏は、2017年の温室効果ガス排出量増加を見れば、近年の排出量の減少が実際にはどれほどわずかであったかが分かる―そしてより一層積極的に行動しなければ、パリ協定の目標はいとも簡単に手の届かないものとなってしまうだろう、と述べた。

「2014年から2016年にかけて、温室効果ガス排出量の減少は絶えず微妙な均衡を保ってきた。そして2017年の2%増加見込みによりはっきり分かるのは、近年のスローダウンを当然と考えてはならないということである。」とアンドリューは声明の中で述べた。

報告書によると、化石燃料や産業活動による世界のCO2排出量は2017年にはおよそ370億トンに達し、新記録となる。化石燃料使用、産業活動、土地使用の変化を含むあらゆる人間活動による排出量は、2015年の記録に近い410億トンにのぼると推定されている。

2017年の全世界の温室効果ガス排出量増加は主に中国その他の開発途上国の排出量増加に責任がある、と報告書は述べている。

推定では、今年、中国の温室効果ガス排出量が3.5%増加するのに対し、インドの排出量は2%増加。アメリカやヨーロッパ諸国の排出量は今年それぞれ0.4%と0.2%で、下がると予想されているが、欧米諸国の過去10年間の平均年間減少量よりも減少率が更に遅い。世界の排出量の40%を占めているその他の国々の炭素排出量は2.3%上昇すると予想されている。

2017年が単なる一度きりの例外の年となるのか、世界が実際全体的に上昇トレンドに戻りつつある年となるのかはわからない。しかし、この報告を出した研究機関であるCICEROの調査ディレクター、グレン・ピータース氏は、一つはっきりしているのは、地球温暖化を摂氏2度に抑えなくてはならないのなら、各国がそれぞれの気象目標にもっと野心的にならなくてはならない、と述べた。

「温室効果ガスの排出量を減少させるため2015年にパリで行われた協議に対し、未だ行動が伴われていない状況だ。」ピータースは陳述した。「もう危機は過ぎ去り、ゼロ排出へと動き始めたというにはあまりにも時期尚早だ」

ケリー・レビン氏とランピン・ソン氏は世界資源研究所(WRI)のグローバルカーボンプロジェクト報告書の元となる研究には携わっていないが、 ブログ投稿中で以下のように述べた― 調査によると、費用効果の高い方法で摂氏2℃制限を守れるようにするには、2020年より以前に地球規模の温室効果ガス排出量が頂点に達しなくてはならない。WRIが独自で行った調査によると、たとえ49か国が頂点になんとか達し、そして全体的に下降軌道に乗り始めたとしても、世界はいまだに十分な集団行動ができていない状態にあり、パリ協定の目標達成し地球温暖化の最悪の影響を回避するまでには至っていない。

現在、パリ協定のもとでたとえ各国が気候に関する義務を果たしたとしても、世界の温室ガス排出量は2030年以降まで頂点に達する予想はなされていない。レビン氏とソン氏は「パリ協定により、国々は2020年までに国家の気象計画を更新すべきである。これからグローバルカーボンプロジェクトが今までとは異なるトップニュースを出し、最も危険な気象影響を避けるとすれば、各国が出来るだけ早く頂点を迎え、排出レベルが着実に下降するようにしなくてはならない。

COP23に参加したMongabay通信員ジャスティン・カタノソの報告によると、協議には「気候変動に歯止めをかける一大ニュースも重要な進歩もほとんど無かった」が、重大な成果が少なくとも一つあったという。カナダやUK主導の19か国が2030年までに石炭の使用を段階的に止める計画を発表したことである。

カタノソによると、石炭使用廃止が引き起こした興奮にもかかわらず、協議の参加者たちの多くは気候会議の結果に失望していたという。

一般に、先進国はCOP23で更に積極的な排出削減目標の義務づけに至らなかった。気象科学者たちのほぼ一致した見解によると、パリ協定の目標を達成するには、石炭火力発電のほとんどを2050年までに段階的になくしていかなければならない。しかし、オーストラリア、ドイツ、インド、そしてアメリカなどの主な石炭産出国は新しい『石炭発電の全廃を目指す国家連合』には加入していない。

「石炭を段階的に廃止するという発表のおかげでCOP23は好調のうちに終わりを迎えた。」カタノソは述べた。「しかし、期待されていたパリ協定の炭素削減目標を先進国が達成するという確約は実現しなかった。同じく、気候変動に対処するため脆弱な開発途上国に必要な何十億もの資金を先進国が調達する明確な経路を見つけようとする試みは ―主にアメリカによって― 来年まで阻まれた。」

5400メガワットのポーランドのBetchatow発電所―世界最大の石炭発電所の一つ。

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