アグロフォレストリーがモロッコ山岳地帯の女性を活気づける

モロッコ・ウェザーン州 – Suisi Rheiaは、ユイルリー(huilerie)という共同体、またはオリーブオイルの圧搾機の前にある、彼女のオリーブの実をチェックしていた。その時はすでに2018年11月中旬だったが、果実はほとんど紫色に色づいているものの、一部はまだ青かった。長い干ばつを経て大雨が降ったため、これらは全て、明らかに多くの水分を含んでいて、収穫できる状態ではなかった。モロッコの最北の山であるリフでは、気候はこれまでになく不安定になっている。

85歳のRheiaは、まだ果実が熟していないのが信じられなかった。彼女は、「私は、これまでの人生で、このようなことは見たことがありません。それに、昨年の夏はイチジクの実を全く収穫できませんでした。」と言った。「通常だと、今ごろは既にオリーブの収穫を終えている頃です。」

オリーブの実の収穫時期は、預言者モハンメッドの誕生日と同じ11月20日には終わっている。Rheiaの家族は、特にタジン鍋(長時間調理をするために使われる陶器から名前を取った大衆料理)のために、搾ったばかりのオリーブオイルが食卓にあるはずであった。しかし、2018年の夏、気温は摂氏44度(カ氏111度)に達した。これはイチジクの花が爛れてしまうのに十分な温度である。それから、その秋に降った雨がとても激しく、オリーブはまだ熟していない。

85歳のSuisi Rheiaは、オリーブの実が熟しているか調べている。写真提供:Monica Pelliccia.

Rheiaと他の328人の女性は、国際連合工業開発機関(ONUDI)が監督している、地域の経済的利益団体(またはGEO)である ファム・デュ・リフに属している。これは、アグロフォレストリーを実践し、リフ山でオリーブオイルの生産を行っている、全て女性で構成された10組の協同組合を取りまとめるプロジェクトである。組合の多くは、イスラム教神秘主義の宗教的な慣習で知られるウェザーヌ市の周辺にある、人里離れた村に散在している。

オリーブと気候変動

ファム・デュ・リフのメンバーは、イチジク(Ficus carica)やイナゴ豆(Ceratonia siliqua)、そして、ひよこ豆、空豆、小麦、家畜飼料といった、ローテーションで植えられる一年生作物と一緒にオリーブ(Olea europaea)を育てている。このヤバラ(山)に住む人々は、この伝統的なアグロフォレストリーをずっと続けてきた。一年生作物は、これらの木々が育ち、干ばつに耐えることに密接に寄与しながら育つ。木々の樹齢も古い。Rheiaは、「ほとんどのオリーブの木は、私たちの先祖が散在するように植えたものです。」「これらは樹齢200歳を超えています。」と言う。

ヤバラの人々の経済生活は、古代からオリーブの木々と関連してきたが、不安定化した気候が、この伝統を阻んでいるように見える。アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)は、2050年までにモロッコの平均気温が摂氏1〜1.5度(カ氏1.8〜2.7度)上昇し、その結果、乾燥した年では、天水で育てる一年生作物の生産量が50〜75%も減少すると見積もっている。また、最近の世界気象機関の報告によると、2017年は大気中の温室効果ガスレベルが記録を更新し、長期的な気候変動や海面上昇、海洋酸性化、極端な気象現象の増加を促進しているという。

しかし、アグロフォレストリーでは、木々があることで、これに対する代替手段を提供することができる。この、オリーブのような木々を一年生作物と一緒に育てるという慣習は、土壌侵食や水分が域内から流出することを防いでいる。欧州連合が資金提供している4年間の研究プロジェクトであるAGFORWARDの研究結果によると、この慣習は、水資源の少ない耕作地であるモロッコのオアシスや山岳地帯でよく行われている

熟してきているオリーブの実。写真提供:Monica Pelliccia.

モロッコ政府は、オレンジやライム、プラムなどの気候の変化に弱い木々ではなく、気候変化に強い、オリーブやイチジクなどの木々を育てるアグロフォレストリーに対する支援を強化する方針を立てた。モロッコ緑化計画(PMV)は、ファム・デュ・リフ創設も援助した、政府のプロジェクトである。ウェザーヌ市の地方農務局長であるOtman El Mrabet氏は、Mongabayに対し、「オリーブやイチジクを植えることは、気候変動や砂漠化に対抗し、土壌の侵食を減らす、1つの方法です。」と話した。「私たちは、素晴らしい製品である、IGP(地理的表示保護)のオリーブオイルを生産するため、郊外に住む女性の仕事を支援します。ヤバラの人々は、古代からオリーブの生産者としての評判があります。」

山から市場へ

フランスの社会的企業であるピュール・プロジェクト(Pur Projet)もまた、2011年からファム・デュ・リフが行う植樹に資金提供している。ピュール・プロジェクトがアフリカで行っているアグロフォレストリーを基調としたプロジェクトの調整役であるAnaïs Gentit氏は、「オリーブは多年生植物で、様々な気候条件に耐えることができ、ファム・デュ・リフ経済的利益団体(GEO)とオリーブオイルを商品化することで、安定した収入が保証される。」と言う。また、彼女はこう付け加えた。「オリーブの木は、土壌中の栄養分を増加させる、一年生の豆類と同じ区画で育つ。イチジクやイナゴ豆、豆類もまた、余剰分をsouk(地方の市場)で売った農家に副収入をもたらす。」

56歳のRabia Hakouchは、野ウサギや猪、山ウズラがいる、Asjen村で最も肥沃な場所に住んでいる。彼女は、庭でトマトや甜菜、豆類、オレンジなどの果物、飼っているヤギや牛、鶏に与えるオート麦を栽培している。彼女は、リウマチや頭痛、皮膚や口の疾患に使用する精油を採るために、カモミールやタイム、ミント、バーベナのような薬草も育てている。

未亡人のHakouchは、モロッコの典型的な上着である、長くて黒いジャラバを着ている。彼女は、オリーブオイルや果物、野菜、豆類、精油を売ることで、なんとか7人の息子と娘の教育費を払うことができている。昔は、多くの子供達が、学校へ行く代わりに、畑に出て母親の手伝いをしなければならなかった。

しかし、今では協同組合の一員になることで得られた資金により、子供達の教育費を払うという、多くの女性たちにとっての大きな目標が実現しつつある。Hakouchは、誇らしげに、「私は娘を大学にやることができました。」「今や、彼女は私たちのコミュニティーの歯科医をしています。」と言う。

左から、Suisi Rheia、Hanane Lachehab (ファム・デュ・リフの会長)、Fatima Stitouと、ファム・デュ・リフのメンバー。ウェザーン州Aïm Beïdaにある、Stitouさんの土地の最上部で。写真提供:Monica Pelliccia

集団の力

ファム・デュ・リフのオリーブオイルにより、これらの収入が確保されてきた。IGPに指定されたことで、このオイルがこの地域でしか生産されないことが証明され、彼女たちは、一般的な市場価格である30ディルハム(3.20ドル)/1リットルではなく、最高値の43ディルハム(4.50ドル)/1リットルでオリーブオイルを売ることができている。IGPへの指定は、このオイルが、ホテルなど、買い手とは異なる客層に届く可能性があることを意味している。彼女たちは、村から街の市場へ一時間以上かけて車で移動する費用を浮かすことができる。

60歳のFatima Stitouは、最近家をリフォームすることができた。彼女はAïm Beïda村の、Rheiaの家の近所に住んでいる。ここでは他の多くの場合がそうであるように、彼女たちの畑は斜面の上にあって、オリーブやイナゴ豆、イチジクの木を育てている。頂上からは、ほとんど一面がオリーブの木で覆われた、谷とそれを取り囲む山の頂を展望することができる。地平線では、彼女の隣人が、埃を被らないよう顔を布で覆いながら、ロバの背中に乗って帰ってくるところだ。

村に帰ったら、その女性はStitouの家の中庭でミントティーを飲む。また、薪オーブンで焼いたホブズ(khobz)というよくある丸いパンを食べる。これは、ニンニクで味付けされていて、緑や黒のオリーブが添えられている。たくさんのオリーブオイルとクミン、パプリカで味付けされた、Bessaraという、ジャバラ人が好きな空豆の乾燥スープに使う基本的な材料も含めて、これら全てが彼女たちの畑で採れたものである。オリーブオイルは、地中海の広い地域でそうであるように、モロッコ料理にとっても大事な材料である。

ファム・デュ・リフの会長で、38歳のHanane Lachehabは、「それぞれの女性について、年間おおよそ6850ドルの収益を見積もっています。これらの収入は、彼女たちの家族やコミュニティーに、経済的な安定をもたらします。」と言う。彼女によると、この組合の中で最も離れた地域で、ウェザーン市から約60km(40マイル)あるにあるNefziという村までの道路など、このコミュニティーにおける多くのインフラを整備するための資金は、これらの収入から得られている。Lachehabによると、それによって、この村々は、「私たちが過去に経験した過疎化を免れることができ」、そして、「若い世代が、Fez や Tangierといった大きな街に出て行く代わりに、ここに残るという選択肢を与えています。」と言う。

オリーブの木陰にある野菜畑の中のFatima Stitou。写真提供:Monica Pelliccia

そしておそらく、最も重要なことは、組合のメンバーが経済的に安定することで、大麻を育てなくなるということだ。この作物は違法だが、FezやRifの山々に近いLarache州の、特にChefchaouen市の周辺で最もよく生息している。

モロッコ議会へ

Hanane Lachehabにとって、ファム・デュ・リフは、アグロフォレストリーやIGPのオリーブオイルを生産すること以上のものである。なぜなら、このために女性たちは家の外に出るようになるからであり、また、一般的には認知されていない、彼女たちの仕事についての相応しい認識を与えているからだ。また、彼女たちの社会的な権利にも変化があった。組合における彼女たちの役割は、文書に明記されており、また、地方自治体職員によって認証されている。これによって、彼女たちは、地方農業会議所の代表に関して、投票したり、彼女たち自身が投票されたりすることが可能となった。

Lachehabは、大学で経営学を学んだ後、村に帰ることに決め、そして、近所の人々の雇用機会を創出する方法を見つけた。現在、彼女はファム・デュ・リフでの活動が評価され、北方地域委員会の代議士を務めている(また、これによって2017年のTerres du Femmes賞を受賞した。)。彼女はまた、彼女の近所に住むFatima Habboussiさんの話を、誇らしげにMongabayに話してくれた。2015年、ファム・デュ・リフのそのメンバーは、地方農業会議所委員会に従事した後、モロッコ議会に選出された初の女性となった。

Fatima Stitouが、アグロフォレストリーで育てた他の産物、ビートとシトラスを見せてくれた。写真提供:Monica Pelliccia

「ジャバラ人の女性は、いつもオリーブの畑で働いています。」とLachehaは言う。「組合のおかげで、女性たちはより外の世界に出ていくようになりました。それは、彼女たちの村や家族の外という意味でもあります。彼女たちのほとんどは、モロッコや外国で開催される会合に出席するために、初めて村を離れます。」と、彼女が組合のオリーブオイルを宣伝するために最近スペインに行った話に付け加えた。

進む収穫の遅れ

しかし、Suisi Rheiaと同様、Lachehabも、現在彼女たちが経験しているオリーブの収穫時期の遅れは、18年のキャリアの中で、これまで経験したことがない。携帯電話で天気予報を確認したことで、彼女は次の週にはより多くの雨が降ることを知った。オリーブは、木の上で熟すのに、少なくとも一週間晴れの日が必要だ。

ファム・デュ・リフのメンバーには、まだ収穫の時期が十分に訪れていないが(そして、この記事を執筆している現在もまだ完全には訪れていないが)、組合や、オリーブオイルをもたらしてくれる持続可能なアグロフォレストリーの農業システムによってもたらされる十分な収入と経済的な回復力のおかげで、今、彼女たちには収穫を待つ喜びがある。

ファム・デュ・リフのメンバーが、オリーブやイチジク、ひよこ豆が育つ土地に囲まれたFatima Stitouの畑に立ち、明るい未来を見つめている。写真提供:Monica Pelliccia

この記事は、Mongabayが提供する世界のアグロフォレストリーに関する記事です。Monica Pellicciaは、個人のジャーナリストです。

彼女のツイッターは@monicapelliccia.

The post アグロフォレストリーがモロッコ山岳地帯の女性を活気づけるappeared first on 環境ニュース.

This article was originally published on

Mongabay

© Mongabay