テレワーク「職場と同じ」 新型コロナで注目 家庭と仕事両立可能

子どもの世話をしながら自宅でテレワーク業務をする岩永さん=大村市内の自宅

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ITを活用して自宅などで勤務するテレワークが注目されている。既に導入している長崎県内の事業所は「職場と同じように仕事ができ、効率的」と効果を強調。柔軟な働き方にもつながっている。一方、業種によっては導入が難しく、県内企業への浸透には課題も少なくない。
 3月上旬のある日。税理士法人ネクスト・プラス(諫早市)に勤める岩永陽子さん(41)は大村市の自宅で、同僚の依頼を受け請求書を作成していた。自宅にいても、職場にいるのと同じように依頼や報告が入る。岩永さんは週に1~2回、自宅で業務し「自宅でできない仕事はない。仕事もはかどる」と話す。
 ネクスト・プラスがテレワークを導入したのは2017年。移動時間などを短縮し、効率性を高めるためだった。実施に向けてタブレット端末などを社員に支給。紙の資料は電子文書化し、インターネット上で共有。資料を持ち帰らなくても仕事ができるようにした。同僚とはネット上でメッセージを交換。業務開始時間や業務内容、業務終了予定時刻も報告している。
 ネクスト・プラスが運営する「みらいの保育園」(諫早市)もテレワークを導入済み。子どもの個別指導計画などを作成する保育士らは月に8時間、自宅で勤務する日を確保している。新型コロナウイルスの感染が広がり、石丸恵施設長は「先行的に在宅できる体制を整えていてよかった。万一の時もスムーズに対応できるはず」と語る。現在はパートを含めすべての保育士が状況に応じて自宅で仕事し、感染を予防。職員会議はビデオ会議ソフトを利用し、自宅にいても参加できるようにしている。
 同保育園で病児保育を担当する保健師の川口優子さん(41)は在宅勤務で働き方が変わった一人。かつて病院で勤務していた時は、自宅で書類作成し、サービス残業が当たり前。「子どもに負い目を感じながら働いていた」。だが今は自宅での業務が認められ、家庭と仕事を両立できているという。
 一方、導入が難しい業種もある。小売業の担当者は「来店客が相手なので導入を考えたこともない」と消極的。製造業の担当者は「情報を持ち出せば漏えいの恐れがある。セキュリティーや設備投資の問題が残っている」とし、課題が少なくない。
 新型コロナウイルスの感染により注目度が高まっているテレワーク。みずほ総合研究所の酒井才介主任エコノミストは「感染を予防し、業務継続計画の観点からも有効。テレワークに向かないと思われがちな職種でも業務を細かく見直すと可能な仕事があるはず。企業が意識を変えていく必要がある」と指摘した。

テレワーク業務中のスタッフとビデオソフトを使って会議する川口さん(左)=諫早市小野町

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