呼吸器の重度障害児、地元小への通学を認めず 横浜地裁判決「裁量権の範囲」

会見で判決を批判する原告側の弁護団と支援者=18日午後、横浜市中区

 重度障害を理由に希望する地元の川崎市立小学校への通学を認めず、県立特別支援学校を就学先に指定したのは差別に当たり違法だとして、人工呼吸器を付けて暮らす光菅和希君(8)と両親が市と県に小学校への就学を認めるよう求めた訴訟の判決が18日、横浜地裁であった。河村浩裁判長は「就学通知は適法で、裁量権の逸脱や濫用(らんよう)があるとはいえない」として、原告側の請求を棄却した。

 訴えによると、2018年度から小学生になる和希君の就学先を巡り、両親は市や県の教育委員会と複数回協議を重ねた。その際、地元の小学校への通学希望を伝えたが、市教委は「特別支援学校の方が専門家が多い」などと説明。18年3月末に県立特別支援学校への就学が決定された。両親側は、両教委が特別支援学校ありきで就学相談を進め、小学校で学べるよう「合理的配慮」の検討すらしなかったと主張していた。

 河村裁判長は判決理由で、学校教育法施行令で定める期限をすぎて両親に就学通知を行った県教委の対応について、「合意形成のために時間を要し期限を守れなかったにすぎず、手続き的な瑕疵(かし)とはならない」と指摘。両親側が「本人や保護者の意見を尊重すべきだ」としていた点には、「施行令では保護者の意見だけでなく、専門家の意見の聴取も求めている」と述べ、専門家の意見を聴取した上で最終判断した両教委の姿勢を容認した。

 両親側は、和希君の主治医の診断書や通っていた幼稚園への聴取を待たずに就学先を決定したことが不適切な手続きに当たるとも訴えていた。河村裁判長は「市が把握していた和希君の障害の状況に重要な事実誤認はなく、障害者に対する合理的な配慮が欠けているとは評価できない」とし、この主張も退けた。

 両教委とも「今後詳細は確認するが、主張が認められたと受け止めている」とコメントした。

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