膵炎治療薬に新型コロナウイルス感染阻止の可能性、東京大学が効果を確認

東京大学の井上純一郎教授らの研究グループは、急性膵炎などの治療薬「ナファモスタット」(商品名フサン)が、新型コロナウイルス感染の最初の段階であるウイルス外膜と、感染する細胞の細胞膜との融合を抑制し、ウイルスの侵入過程を効率的に阻止する可能性を明らかにした。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症は中国武漢に始まり、2ヶ月余りで世界152カ国に拡散。世界保健機構(WHO)はパンデミックを宣言した。日本では無症候性キャリアや軽症者が多いが、重症化や高齢者・基礎疾患がある人の場合は死亡もあり得る。現時点で治療薬はないが、感染拡大の現状から、安全性が確認された既存薬から治療薬を探すことは極めて有効とされる。

SARS-CoV-2などのコロナウイルスが人体に感染するには、まず外膜表面のスパイク(S)タンパク質がヒト細胞の細胞膜の受容体(ACE2受容体)に結合。その後、タンパク質分解酵素で切断され、Sタンパク質が活性化されることがウイルス外膜と細胞膜との融合に重要である。

3月初めにドイツのグループが慢性膵炎などの治療薬「カモスタット」(商品名フォイパン)のSARS-CoV-2に対する有効性を発表。今回、研究グループはナファモスタットが膜融合を効率よく抑制するとの以前の研究成果を基に、カモスタットとともにその作用を調べた結果、ナファモスタットはカモスタットの10分の1以下という低濃度で顕著にウイルス侵入過程を阻止した。これにより、ナファモスタットはSARS-CoV-2感染の阻害に高い効果があると期待される。

ナファモスタットとカモスタットは日本で開発され、長年の処方実績がある。安全性については十分な臨床データが蓄積されており、速やかに臨床治験を行えるとしている。

参考:

【東京大学医科学研究所】新型コロナウイルスの感染阻止が期待される国内既存薬剤の同定(PDF)

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