原爆展に横やり

 またも政府にとって不都合な事実を隠そうとしているのだろうか。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、米ニューヨークの国連本部で4月下旬から開く予定だった「原爆展」を巡る外務省の対応のことだ▲原爆展は、5年ごとに開かれる核拡散防止条約(NPT)の再検討会議に合わせ、2005年から開催。今回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期の見通しとなったが、被爆の実相などを伝えるパネル約50枚の展示を予定している▲そのうち東京電力福島第1原発事故とチェルノブイリ原発事故に触れた2枚について、後援申請を受けた外務省が内容の変更を求めてきたのだ。「NPTは原子力の平和利用を認めている」ことが理由らしい▲原発事故の実相を知らせることがNPTに反するかのような言い分だが、根本的に抱える核リスクから目をそらしていては原発の安全性など望めないだろう▲外務省は過去3回とも原爆展を後援してきたが、方針を変えたのか。国内の原発再稼働の妨げになると考えたのか、それとも「原子力の再興と拡大」を掲げるトランプ米政権に忖度(そんたく)したのか▲いずれにしても、安全対策を怠ったことで引き起こされた福島の事故の反省は感じられない。果たして今の日本政府に原子力を扱う資格があるのか、はなはだ疑問だ。(久)

 


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