「クルマはぶつけて止める」イタリア人が車を大切にしない理由

フェラーリやアルファロメオなど、趣味性の高い車を数多く排出しているイタリア。しかし、こと普段使いの車に関して言えば、イタリア人はあまり車を大切にしません。日本ではあまり想像できない、イタリアのクルマ事情を現地で調べてみました。


「車をぶつけて止める」は本当です

さっそく結論から言うと、少なくともイタリアでは「車をぶつけて止める」のは本当の話です。もちろん全員が必ずぶつけるわけではありませんが、縦列駐車の際に後ろの車にコツンと当てても気にせず、そのまま車を止めてしまいます。

イタリアでは基本的に、車は路上に縦列駐車します。マンションによっては敷地内にガレージがあったり、近くに公共の駐車スペースがあることもありますが、スペースの限られた街中では路上駐車が一般的。日本のように車庫証明も必要なく、道路にも縦列駐車のためのラインが引かれています。

青のラインは有料、白のラインは無料で誰でも止められる

前後の空間に余裕があれば縦列駐車も楽ですが、そんな理想的なスペースにいつでも出会えるわけではありません。特にみんなが一斉に帰宅する夕方は駐車スペース争いも熾烈になります。

一台ずつ区切りのラインが引かれていないため、5台分のスペースにゆったりと4台が止まっていたり、逆にすでに5台止まっているけどなんとかもう一台置けそうだったりと状況はまちまち。結果として最後の一台はタイトな場所になんとか止めることになり、前後の車にコツンとぶつける事故(?)が頻発してしまうのです。

初心者にはヒヤリとする光景

ちなみに、縦列駐車の際に後ろの車をグイグイと押してスペースを作るなんて話も聞きますが、個人的にはあまり経験がないのが正直なところ。サイドブレーキを引いて止めている車は、多少押したくらいでは動きません。車をぶつけて止めるのは、単純にスペースが狭いからというのが実際のところだと思います。

イタリア人があまり車を大切にしない理由

イタリアでは、日本ほど車を大切にしないというのもよく聞く話です。それっていったい、どういうことなのでしょうか。

路上駐車が基本のイタリアは、実は盗難が非常に多いことでも有名です。車の中にカバンを残して離れると、ガラスを割って盗まれるというのはよく聞く話。車を離れる場合は、たとえ貴重品でなくても必ず荷物はすべて持っていくか、そうでなければトランクなど外から見えない場所にしまいます。

犯人は中に残されている荷物が貴重品かどうか判断できません。カバンが残されていれば、とりあえずガラスを割って盗むという発想になるため、それを抑止するためにも荷物は車内に残さないのが鉄則なのです。

また、時にはカーナビやステレオ、車そのものがターゲットになることもあります。車ごと盗まれるのは高級車だけと考える人もいるかもしれませんが、パーツ取りを目的とした盗難も多いため、大衆車でも人気の高い車は注意が必要です。

イタリア人のキズに対する感覚はかなりルーズ、中にはこんな状態で走っている車も

こうした事情があることを考えると、車を大切にする意識はだんだんと希薄になっていきます。路上駐車しているからいつ誰にぶつけられるかわからないし、車そのものが盗まれたり、ガラスを割られる可能性もあります。そうなると、常に車をピカピカにしてもなあ……と考えるのが正直なところです。

そもそも外で使うものだから多少のキズは当たり前で、コツンとぶつけられても気にしないし、わざわざ修理もしない。日本とは大きく違う感覚に最初は戸惑いますが、車の管理という意味では気楽さがあるのもまた事実です。

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