「餃子の王将」道場で包丁の研ぎ方伝授、ギョーザは工場成形へ転換… 好業績の秘密は?

本社内に設置した王将調理道場で、包丁の磨き方を学ぶ「餃子の王将」の副店長ら(京都市山科区・王将フードサービス)

 「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの業績が好調だ。2020年3月期の連結売上高は849億円を予想し、3年連続で過去最高を更新する見込み。原材料、人件費の高騰や少子高齢化に伴う市場縮小など逆風が続く外食産業の中で、好業績を維持する秘密を探った。

 「包丁は料理の原点や。自分の右手だと思って刃を研ぎなさい」。京都市山科区の本社内にある研修施設「王将調理道場」で、道場長の大藪一郎さん(51)が全国の王将の副店長ら10人に中華包丁の研ぎ方を教えた。一昨年に設けた道場には店長ら各店の幹部が集まり、中華料理のコツを伝授している。

 王将といえば、チェーンでありながら店舗側に調理法やメニューの裁量が一定認められており、根強いファンをつくる要因になっていた。だが、それは味やサービスのばらつきにもつながる。道場開設は「食べ物屋は味が一番」と語る渡辺直人社長が進めた“統一化”の肝いり施策だった。大藪さんは「料理への意識は着実に向上し、リピーターの増加として表れている」と自信をみせる。

 18年に同時に立ち上げたのが、社内研修機関の「王将大学」だ。従業員の勤務シフトの組み立て方といった管理ノウハウを指導。慢性的な人手不足の中でも、効率的な店舗運営ができるようにした。

 人材育成に注力するようになったのは、看板メニューの焼き餃子の作り方を大きく変えてからだ。従来は、店舗ごとの厨房(ちゅうぼう)で従業員がギョーザの餡(あん)を皮に包んでいたが、16年の東松山工場(埼玉県)の完成を機に、工場での一括生産への切り替えを全国で本格化している。

 王将店舗では、1日おおむね1千~2千人分のギョーザを焼く。調理担当の従業員はこれまで営業時間中はギョーザを包む作業に追われ、料理の腕前の上達に時間を割きづらかった。ギョーザを工場成形にした結果、店内の調理時間が大幅に短縮しただけでなく、肝心の味も安定化した。

 脂っこいギョーザを敬遠していた女性客にアプローチし、新たな固定客として取り込んだことも大きい。

 14年に踏み切ったギョーザの主要具材の国産化は、健康志向の女性や家族連れの来店増につながった。16年には女性をターゲットにした新業態店「GYOZA OHSHO」を京都市中京区・烏丸御池に開店。カフェやバルのような雰囲気で「女子会」にも使えるようにし、滞在時間や客単価が増加した。

 メニューでも分量を減らした「ジャストサイズ」のほか、臭いを嫌う人向けの「にんにくゼロ生姜(しょうが)餃子」を全国で売り出す。渡辺社長は「王将全体のQSC(品質・サービス・清潔さ)の水準はここ数年で良くなった。ギョーザも改善の余地は残っており、まだまだ挑戦する」と意気込む。

 

王将フードサービスの売上高と店舗数の推移

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