国産スパイクの雄「YASUDA」復活から2年!今だからこそ語るYASUDAの思い

1932年に創業しながら、2002年4月にワールドカップを前に倒産した国産スパイクメーカー「YASUDA」。2018年にクラウドファンディングを実施して再動してから来月2周年になる。

今回は復活にかけた思いと、復活後駆け抜けた2年間を「YASUDA」代表取締役の佐藤和博さんに聞いた。

ーーサッカーと佐藤さんのふれあいを教えてください。

私は今40代で小学校4年から今も現役でサッカー少年団の指導をしながらずっとサッカーを続けています。ずっとサッカーしかやってきていないです(笑)。

ーー佐藤さんとYASUDAの縁を教えてください。

子供の頃は違うメーカーを履いていました。でも私は(幅広甲高で)しっくりこない。合わないけどこれが普通かなと思っていました。

それが中学校2年の時にフタバスポーツに行ったときにYASUDAに出会いました。店長さんと話をしていて「幅広な君の足にはYASUDAがおすすめ」と言われました。そのときにYASUDAって何ですか?と聞いたら「YASUDAを知らないならサッカーを辞めたほうが良い」と言われて(笑)。

(実際に佐藤氏が履いていたスパイク)

そこから履きやすくて愛用していました。

ーーYASUDA復活のきっかけはクラウドファンディングでした。詳しく教えていただけますでしょうか。

2017年に中学校の時からの同級生とフットサルをやっていた時に「YASUDAのスパイクでフットサル用があれば履きやすそうだから」という話をして、お店に買いに行ったのが始まりです。その時に初めて倒産していたことを知りました。

普通だったらそこで諦めるんですけど思い入れもあったし、自分の会社でたまたま健康とスポーツのクラウドファンディング事業(ルートエフ)を立ち上げたこともあり、自分がプロジェクトオーナーになろうということになりました。

(YASUDAのクラウドファンディングページ)

ーークラウドファンディングでよく集まりましたよね?

立ち上げまでは苦労しました。私は広告代理店業をやっていまして、スパイク業界の人間ではありません。金型も木型も知らない中、2017年10月に商標を持っている方を見つけました。その方からスパイクを作っていた工場をいくつか聞いたら、ある工場に15年間金型・木型が置かれていたのでスパイクが作れることになりました。

(クラウドファンディングでの特別モデル YASUDAスパイク YX-2018:ゴールド)

次はロット数です。工場は1000ロットぐらいからを希望したのですが、クラウドファンディングで予定していたのは300ロットです。最後には自分の使っていたYASUDAスパイクを持っていて「これを復刻したいんです」と思いを伝えてOKがでました。

そこからサンプルを作って2018年3月にクラウドファンディングをスタートしました。最初は胃が痛かった。

くしくもYASUDAが倒産した4月30日と同じ日にスポーツ新聞に掲載されたことで一気に額が伸び5月までに約850万円が集まりました。これでまずはクラウドファンディングで募ったスパイクが作れることになりました。その後、2018年5月に株式会社YASUDAを立ち上げました。

ーー一気に7か月、とても速いですね。

自分の好きなサッカーですし、YASUDA愛用者でもあったのでそこは楽しみながら7か月間一気にやりました。

ーークラウドファンディング中には愛用者の声がたくさんあったと聞いています。ヴェルスパ大分の阪本遼太主務・エキップメントとの出会いが大きかったと聞いています。

クラウドファンディングをしていて初めて声をかけてきたのが阪本さんでした。彼はまだ20代と若いのですがスパイクが大好きで「もしYASUDAが復刻することがあれば一緒にやりたいです」、と。

反応が圧倒的に多いのは35歳より上の層です。昔を知っている親父世代ですね。今はサッカーをやっていないけれどフットサルをやっているからフットサルシューズを出してほしい、YASUDAで上下揃えたいからウェアやスニーカーを出してくれといった要望がありました。現役のJリーガーからもメッセージをいただきましたし、海外からもレスポンスがありました。サウジアラビアの方なんかはメッセージだけでなく会社に来てくれました。

最初はクラウドファンディングでスパイクを復刻したら、次のクラウドファンディング事業に移る予定だったんです。

ーースパイクを作って終わり、と。

はい。ところがクラウドファンディング中にサッカー関係者から「YASUDAは日本唯一のサッカーブランドだからキャンペーンみたいに終わっちゃだめだ。このまま続けるんだよね?」と言われました。自分もサッカー好きだったので、それなら会社を作ろうとクラウドファンディングに合わせて起業を進めました。

ーー新商品のスパイクを見るとシャープな印象があります。


(イノベーター Pro)

クラウドファンディングではゴールドと黒白のスパイクを作りました。そこから新商品の開発を行い、2018年12月に予約受付を開始しました。

今年までに木型・金型がモデルチェンジしています。とはいっても、13本のスタッドと丸い形は変えないようにしています。スタッドの高さ、位置は日本の昔の足場の悪いグラウンドに合わせたものだったので前の位置だけ少し高さを変えています。それ以外は金型は変えていません。

木型はクラウドファンディング時に見つけた木型は「ザ・日本人」的な幅広甲高のものでした。しかし、何十年かの間に日本人の足も変わってきています。幅広甲高と言うところは維持しながら、全体的に細くなってきている今の日本人に合わせたものにしています。

現在作っている製造のトップの方が某メーカーの誰でも知っているスパイクの開発者なんです。その方が抱いていた「スパイクはこうした方が良いんじゃないか」という思いをYASUDAスパイクにぶつけて一緒に作りあげました。

ーー今のスパイクについて製造の方が抱いていたのはどんなところにあるのでしょうか?

ユーザー目線でないということです。スパイクのモデルチェンジが多すぎるので、気に入ったモデルがあっても次に買いに行ったらない、となってしまう。契約選手もあってもあわなくてもすぐに次のモデルを使わないといけない。

僕たちは逆に同じモデルをずっと履いてもらいたいというと選手にとっては「すごいありがたい」と言われます。

ーーYASUDAで採用しているカンガルーレザーの良さとはなんでしょうか?

カンガルーレザーは柔らかく自分の足にフィットする感があります。一週間もすれば自分の足に合ったものになるのがわかります。

(イノベーターPro-ex)

今、うちで出しているのはカンガルーレザータイプですけれど、12,000円(税別)と価格を抑えた後ろだけ人工皮革のコンビタイプも21日に先行受付開始です。人工皮革だとカンガルーレザーだと柔らかすぎるというお客さんにも向いています。カンガルーレザーも20,000円(税別)から18,000円(税別)へ値下げしています。

ーー2万円を切るんですね!驚きです。

小学校高学年から中高生に20,000円(税別)は高いけど、12,000円(税別)なら買ってもらえるかなと。それに金型・木型は同じです。

ーー今の販売経路を教えてください。

ECサイトを中心に強化をしていこうと考えています。メーカーが直接お客様とコミュニケーションを取ることこそ、YASUDAらしさというか、あるべき姿だと思うのです。テスト販売してみたところ中高生がスポーツ用品店でそう簡単にはまだYASUDAを見つけて買おうとまだなるまで時間がかかると。YASUDA世代にまずリーチしてそこから子供へと波及していくことを期待したいです。

ECの良さはいつ誰が何を買ってくれたかがわかります。だからか、YASUDAのメルマガは開封率が非常に高いです。「この開封率の高さは、やばい(すごい)ね」ってうちのメンバーも言うのですが、私はネット、EC業界に詳しくないので最初そのすごさがわかりませんでした(笑)。

ーー今後はスパイクの種類を増やすのでしょうか?

それよりは取り換え式スパイク、フットサル用、スニーカー、ウェアと展開を広げていきたいですね。

(YASUDAのグローブ、キャップなど)

私の中学の時のユニフォームがYASUDAでした。水色に白のストライプで。旧YASUDAからウェアはやっていたこともあり、実際、すでにウェアは作っているのですが他メーカーの真似をしてもしょうがないので、ヴェルスパ大分さんの選手や現場の声を取り入れて一緒に作っています。ヴェルスパ大分ではウェアを作る体制があるんです。

ーー現場の声ってどんなことがあるんでしょうか?

今のパンツは昔に比べて薄くて透けるぐらいなんですけどプレイヤーにとっては動きやすく軽いとか、プリント技術が昇華プリントメインだとかそうしたところですね。

また、ユニフォーム以外にも手袋などのギアも一緒に作っています。今はこういうのが主流というのがわかるので、とてもありがたいです。

ヴェルスパ大分のユニフォームは2020シーズンのエムブレムが立体的なのですが、これはJ2とかのチームでもあまりやっていない。結構高価なのですが、今シーズンはこういうものをつけてやりたい、と。

ーーDesigned in Japanとタグにかかれています。

ここはこだわっているところです。Made in Japanでやりたいけれど今は東南アジアや中国でも良いものができます。靴とかも2019年のスパイクは日本で作っていたのを今年の試作品は海外で作りました。もうぱっと見で海外製、日本製の区別はつきません。それでも、“Japan”というものは守っていきたいのですべてDesigned in Japanというものを全てに入れていきたいと思っています。

そんなYASUDAだが何とサブスクリプションリユースサービス「Excel feed(エクセルフィード)」というものを立ち上げるという情報がある。スパイクを“サブスク”するというそのサービスとはいったいどんなものなのか、次回の記事でお届けする。

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