石原さとみさん 原爆ホームでの出会いが原点 テレビ番組機に交流

石原さんとの再会について「うれしかった」と語る本多さん=長崎市、恵の丘長崎原爆ホーム

 女優の石原さとみさん(33)が東京五輪の聖火リレーで長崎を走りたいと希望したのは、長崎で被爆した本多シズ子さん(86)との出会いがきっかけだった。平和と核兵器廃絶を願いながら被爆地を走ろうと決意する石原さんに、本多さんは「頑張って」とエールを送る。
 石原さんは2008年、テレビのドキュメンタリー番組の撮影で長崎市三ツ山町の恵の丘長崎原爆ホームを訪問し、本多さんと出会った。
 本多さんは11歳の時、爆心地から1.8キロの本原町2丁目(現石神町)の養育院で被爆。負傷した足は不自由になり、後遺症で髪が抜け落ちた。学校では同級生のいじめに遭った。
 本多さんのつらい被爆体験を聞いた石原さんは、何もできない自分に無力感を抱いたという。15年には私的に原爆ホームを訪問し、本多さんと再会した。
 喜んだ本多さんは涙ながらに「(石原さんが)生きていてよかった」と声を掛けた。石原さんは心を打たれ「誰かの心を明るく励ますことができる人になりたい」という大きな目標が芽生えたという。
 東京五輪聖火リレーの公式アンバサダーに就任した石原さんは、希望通りに長崎を走ることが決まった。2月下旬にはテレビのドキュメンタリー番組撮影のため長崎市を訪れ、本多さんと三たび対面した。86歳になった本多さんは物忘れが増え、耳も遠くなっているが、石原さんに車いすを押してもらうと、安らかな表情を見せたという。
 石原さんとの再会について「うれしかった」と語る本多さん。原爆ホームの自室には、石原さんと一緒に撮影した写真やサイン入り色紙などを大切に飾っている。石原さんは5月8日に長崎を走る予定。「楽しみ」「頑張って」。本多さんは、石原さんが「平和のランナー」となる日が来るのを待ちわびている。

 


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