『幼い依頼人』 継母による虐待事件を映画化し、韓国社会に波紋

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 日本でも痛ましい事件が続いている児童虐待は、隣国の韓国でも大きな問題になっています。7歳の弟を殺したと自白した少女が抱える真実を明かすため、奔走する弁護士の姿を描いた本作は、韓国で実際に起きた、継母が夫の連れ子を虐待死させた悲しい事件の映画化。正義感溢れる弁護士を熱演するのは、映画『エクストリーム・ジョブ』で生真面目な刑事を演じた個性派俳優のイ・ドンフィ。子供を守ろうと必死に行動しながらも、立ちはだかる司法の壁に苦悩する姿をリアルに描きます。

 実際に起きたのは、継母が7歳の娘を撲殺し、12歳の姉に罪を着せるという耳を疑うような事件でしたが、裁判では殺人罪ではなく傷害致死罪で10年の懲役が言い渡されたことが国民の大きな反発を生みました。親が加害者というだけで、殺人罪に問うことが難しい、児童虐待事件が抱える問題は韓国でも深刻なのです。

 11年の『トガニ 幼き瞳の告発』は、聴覚障害者学校で起きた子供たちへの性的虐待事件を映画化し、社会に問いかけた結果、子供への性暴力の罰則を強化する法案が「トガニ法」として国会を通過しました。韓国では映画が社会問題を提起する力はとても大きく、この作品もまた韓国社会に大きな波紋を呼んでいます。子供たちを守りたい気持ちは世界共通。私たち大人がどんな正義を持って行動するか、今一度考えさせられます。★★★★★(森田真帆)

監督:チャン・ギュソン

出演:イ・ドンフィ、ユソン、チェ・ミョンビン

3月27日(金)から東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋で公開

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